【観戦記】福大大濠4-3西短大附(秋季大会パート決勝)




延長タイブレークに突入した熱戦は、福岡大大濠が2点差をひっくりかえして逆転サヨナラ勝ちをおさめ、県大会進出を決めた。

2点を追う福岡大大濠は10回、タイブレークの無死一、二塁から先村の投前バントは三封されたが、高田が中越え三塁打を放って同点に追い付くと、なおも一死三塁から永田がライト右へサヨナラ打を放って勝負を決めた。

10回裏 福大大濠 一死三塁 永田のサヨナラ打で高田が生還

7回までは西日本短大附・村上、福岡大大濠は永田から柴田に継投しての投手戦が続いた。押し気味に試合を進めた西日本短大附は5回無死満塁、6回一死満塁と好機を迎えながら得点できなかったが8回一死後、荒木が右越え本塁打を放ってようやく均衡を破った。しかし福岡大大濠は9回先頭の永田が中前打で出塁すると立川が送り、柴田がセンター左に同点打を放って追いついた。

10回表、西日本短大附はタイブレークの無死一、二塁から井上(蓮)がセンター右への安打を放ち、二者を迎え入れて再びリードを奪ったが、その裏、球数が150球を超えた村上が長短打を浴びて力尽き、昨秋に続く優勝はならかった。

第153回九州地区高校野球福岡大会 パート決勝
(2023年9月29日・金/小郡市野球場)
チー   二三四五六七八九十 計HE
西短大附 0000000102 311
福大大濠 0000000013x 491
(延長10回タイブレーク)

 西短大附 年 打安点  福大大濠 年 打安点
(遊)井上蓮➀ 512 (中)大 神② 520 
(中)藤 岡 500 (一)先 村➀ 400
(捕)荒 木② 521 (遊)高 田➁ 512

(三)高 峰➁ 420 (投右)永田➁ 531
(投)村 上➁ 410 (三)立 川➁ 300
(一)古 賀② 410(左投左)柴田➁ 321
(左)斉 藤➀ 420  走左 野口➁ 000
(右)安 田➀ 410 (二)豊 田➀ 310
(二) 奥 ➀ 410 (右左)中川➀ 300
ーーーーーーーーーーー  投 平 川➁ 100
ーーーーーーーーーーー (捕)法 村➁ 200

球犠振盗残       球犠振盗残
10209       429110
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投 手 回 安球振責 投 手 回  安球振責
村上   9.1 9492 永田  4.0 4110
ーーーーーーーーーー 柴田  3.1 5001
ーーーーーーーーーー 平川  2.2 2010
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▼試合時間/09:51~12:08
※公式記録ではありません/選手名の下線は左打者

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この数年間、九州国際大付とともに福岡の高校野球界をリードしている両校の激突は、期待に違わぬ熱戦となった。

福大大濠・永田

福岡大大濠の先発のマウンドを託されたのは永田。3回戦の福工大城東戦では好リリーフをみせ、勝利に貢献した左腕だ。130キロ超の直球に大きなカーブを武器とし、高い制球力を誇る。立ち上がりから直球が高めに抜けるシーンがたびたび見られたが、外角いっぱいの直球に大きなカーブで緩急をつけて、4回まで西日本短大附打線を1安打に抑える好投を見せた。

西短大附・村上

西日本短大附はエース村上が先発。今年の春の大会以降、登板機会が増えた長身右腕だ。上体だけを使って軽く投げ込んでいるように見え、直球の球速も130キロ超といったところだが、重そうな球質というでもいうべきか、打者は振り負けてしまうことが多い。この直球に鋭く縦に落ちるスライダーを交え、4回まで許した安打は1本だけ。直球で押し込み、詰まったフライでアウトを重ねていった。

淡々と進んでいた試合が動きを見せたのは5回。西日本短大附は先頭の斉藤が詰まりながらレフト前に落とし、安田は投手右へのバント。打球を捕った永田と前進守備から一塁に戻った先村との呼吸が合わず内野安打になると、続く奥の投手左へのセーフティ気味のバントも内野安打となって無死満塁。永田は打たれたわけではなかったが、福岡大大濠ベンチはここで永田をレフトにまわし、右腕の柴田をマウンドへ送る決断を下した。

福大大濠・柴田

柴田は130キロ後半の直球にカーブ、スライダーを交える右の本格派。迎えるは1番井上。柴田は初球直球でストライクを取ると、2球目にカーブを打たせて1-2-3の併殺に仕留めた。続く藤岡も左飛におさえて絶対絶命のピンチを無失点で切り抜けた。

すると直後の5回裏、今度は福岡大大濠が柴田の中前打などで二死一、二塁の好機をつかみ大神が一二塁間を破るヒット。二走の柴田は思い切って三塁を蹴ったが本塁で憤死。福岡大大濠も得点できない。

6回表、西日本短大附は一死から高峰、村上、古賀の3連打で再び満塁の先制機を迎えたが、柴田はここでも踏ん張る。斉藤を直球で追い込むと最後はカーブでまたしても投ゴロ、1-2-3の併殺に仕留めて得点を許さない。

0-0のまま延長戦も視野に入った8回表、西日本短大附は一死から荒木がカーブをうまくバットに乗せてそのまま振り切ると打球は右翼芝生席で弾み、ようやく均衡が破れた。

8回まで被安打4、与四死球3。村上の出来からして、このまま西日本短大附が逃げ切るかと思われたが、勝利の女神は福岡大大濠を見捨ててはいなかった。9回、永田が叩きつけた当たりはショート右へ。追いついたかと思われたが最後に大きく弾んでセンターに抜けていく。立川が送って5回以来の得点圏に走者を進めると、柴田が外角直球をショート頭上にはじき返して同点。外角低めの厳しい球だったが、見事にとらえた。さらに豊田が左前打で続き二死後、法村が四球を選び二死満塁。サヨナラのチャンスを広げ1番の好打者・大神を迎えたが、ここは村上の直球の力が上回り中飛に抑えて延長戦に突入した。

9回裏 福大大濠 一死二塁 柴田がセンター左に同点打を放つ

福岡大大濠の投手は8回途中から平川。130キロ台後半の直球を持つ右腕だ。8回荒木の本塁打のあと一死一塁の場面で柴田をリリーフ、ここを無失点で切り抜けると9回も三者凡退に抑え土壇場での同点劇を演出した。無死一、二塁で始まるタイブレーク、打席は1番井上。バントの構えを見せながらカウントはフルカウントに。ここでバスターに切り替えた井上の一打はセカンド頭上を破り二走の安田が生還、中継がやや乱れる間に一走の奥も本塁を突き、きわどいタイミングだったがセーフ。2点を勝ち越した。

福大大濠・平川

裏の守りのことを考えるとさらに追加点が欲しいところだったが、無死一塁から藤岡の送りバントは捕邪飛。荒木は3-1からバスターエンドラン、これがレフト前に落ちて一死一、二塁としたが、続く高峰の強打はセカンド左を襲うが好守豊田に阻まれ、この日3つめの併殺打となって追加点は奪えなかった。

2点を追う福岡大大濠はその裏、無死一、二塁から先村が初球を投手左へバント。すばやくマウンドを駆けおりた村上が三塁送球してアウト。西日本短大附が勝利に大きく近づいたと思われたが、このプレーで村上の右足がつってしまう。すでに投球数は150球近く。水分を補給して足を伸ばし再びマウンドに上がったが、高田に1-1から直球をセンター後方に運ばれて一気に同点。なおも一死三塁で4番永田。満塁策をとって6番野口(9回柴田の代走で出場、そのままレフトの守備へ)との勝負かと思われたが、そのまま永田との勝負に挑みライト右へのサヨナラ打を浴びた。送りバントを三塁で封殺して、わずか6球での逆転劇。タイブレークの恐さを改めて感じた攻撃だった。

10回裏 福大大濠 一死一、二塁 高田が中越えに同点三塁打を放つ

福岡大大濠の勝因は、西日本短大附の強力打線を1点に抑えた投手陣の粘り強い投球、そして土壇場での脅威の粘り。3回戦の福工大城東戦でも2点差を9回にひっくり返しての勝利だった。例年粘り強いチームをつくってくるが、今年はそれに輪をかけてここぞの場面で高い集中力を発揮する。

打線は前チームからの主力組である1番大神、3番高田が中心だが、この日4番に入りサヨナラ打を放った永田や同点打を放った柴田も、投手ながら打力がある。高田は10回裏に2点差を追いつく同点三塁打、大神も走者の本塁憤死で得点にはならなかったが、得点圏で安打を放った。絶対的なエースや4番はいないが、チーム一丸となって勝利をもぎとるしぶとさがある。

西日本短大附は打線が力投を続ける村上を援護できなかった。9回まで9安打を放ちながら本塁打による1点のみ。5回無死満塁、6回一死満塁、10回一死一、二塁とチャンスをいずれも併殺打でつぶしたのが痛かった。ここぞの場面の集中力・決定力で、わずかに福岡大大濠が上回った印象だった。

10回表 西短大附 無死一、二塁 井上の中前打で二走の安田に続いて一走の奥も生還

村上は直球とスライダーだけで9回1失点。本格的に投手として取り組み始めて半年、まだ粗削りな印象で、さらに大化けしそうな雰囲気がある。守備も奥、井上の1年生コンビによる二遊間は堅く、5回に二走の本塁突入を阻止したライト安田、的確なポジションニングでレフトファールフライを2つアウトにした斉藤の外野2人も1年生。今秋も九州大会で通用しそうな戦力を持ちながら早すぎる敗戦となってしまった西日本短大附だが、来春以降の巻き返しに注目したい。

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