【観戦記】西日本短大附3-1糸島(選手権大会3回戦)




【観戦記】西日本短大附3-1糸島(選手権大会3回戦)

再三の得点機に一本が出ず接戦を余儀なくされた西日本短大附だったが、エース江川の力投で糸島に競り勝った。

6回表西短大附一死二、三塁 山口(琉)が右中間に先制の二塁打を放つ

 

 

▼3回戦(10日・久留米)
西短大附 000 002 001=3
糸  島 000 001 000=1
【西】江川【糸】菅野

4回、5回と二死満塁の好機を逃した西日本短大附は6回、先頭の5番山口(雄)が中前に落として出塁すると、和田が送って一死二塁。轟木もセンターの前に落ちる安打で出ると二盗を決めて一死二、三塁とし、8番山口(琉)が右中間を破る二塁打を放って2点を先制した。7回一死満塁の絶好機も逃したが9回は一死後、3番今田が右前に落とし、多久のショート左を破るヒットで一、二塁。続く山口(雄)の左前打で今田が生還した。

5回まで西日本短大附の先発・江川の前に二塁を踏めなかった糸島は6回一死後、1番三坂が右翼線二塁打で出ると、森田三振、岩元四球で二死一、二塁。4番前田のショート左への内野安打で二死満塁とし、打者中園の時、江川の一塁牽制が乱れる間に三塁から三坂が生還して1点を返した。2点差で迎えた9回は3番岩元が四球を選び、前田一邪飛のあと、代打・小金丸(篤)、6番長尾と連続四球で一死満塁と詰め寄ったが、代打・和田がニゴロ併殺打に倒れて追いつけなかった。

———————————

初回一死二塁、2回無死一塁、4回二死満塁、5回二死満塁・・・再三チャンスを迎えながら前半を終わって得点を挙げられない西日本短大附。糸島の先発・菅野を打ちあぐみ、試合は接戦となった。

糸島・菅野

 

菅野は130キロ台(この日最速135キロ)の直球が、外角低めによくコントロールされていた。スライダー、そして時折投げる90キロ台のカーブを使いながらタイミングを外して内野ゴロや凡飛で打ち取っていった。死球を一つ与えたが四球は3つ(申告敬遠1つは除く)にとどめ、無駄な走者を出さなかったのも大きかった。

バックも菅野の好投に応えた。初回一死二塁で三遊間に飛んだ打球をサード森田が飛びついて好捕。二走は俊足の江口だっただけに、抜けていれば1点のケースだった。森田は三回にも三塁線の嫌なバウンドのゴロをさばいた。4回二死一、二塁では打者和田の時にワンバウンド投球を捕手の長尾がはじき、球の行方を見失った。二走が三塁を蹴って本塁突入の構えを見せるのを見た菅野が長尾に本塁カバーを指示、自らボール処理に向かったのも適切な判断だった。5回二死満塁ではファースト左に難しいバウンドのゴロが飛んだが、山本が身体を預けてうまくグラブに収めた。

こうしたプレーが続くと流れが糸島に傾きがちだが、西日本短大附・江川も流れを渡さない。140キロ前後(同143キロ)の直球に鋭く落ちるスライダーを使って、初回の先頭打者から5人連続で三振を奪う最高の立ち上がりを見せると、5回まで許した走者は内野安打と死球で出した二人だけ。右打者の内角低めに食い込む直球もスライダーの効果を演出し、10個の三振を奪って二塁を踏ませなかった。

西短大附・江川

西日本短大附がいつ先制するかに焦点が絞られる中で迎えた6回、山口(雄)の当たりは打ち取った凡飛だったが、セカンド後方に落ちるヒット。和田が送った後、轟木は完全に詰まった当たりだったが、これもセンター、ライト、セカンドの中間に落ちるポテンヒットとなり一、三塁。轟木が盗塁を決めた後、山口(琉)がフルカウントからの131キロの直球を右中間に運び、ようやく西日本短大附が先制した。菅野にとっては打ち取った当たりで出した走者2人がホームを踏む、不運な失点だった。

糸島はその裏、2本のヒットと四球で満塁と初めてチャンスを作ると、江川の一塁牽制がそれる間に三坂が本塁を陥れて1点を返し、逆転に望みをつなぐ。しかし西日本短大附も直後の7回表に2安打と四球で一死満塁の絶好機を迎えた。ここで菅野は声を上げながらの投球で和田に向かい、フルカウントまで粘られたが最後はスライダーで三振。轟木には最速タイの135キロを計測、最後はやはりスライダーで遊飛に抑え、簡単に土俵を割らない。

9回は今田にライト前に落とされ、多久の当たりはショートやや左の強いゴロ。一瞬併殺かと思われたが打球が速く逆シングルで差し出した三坂のグラブをはじいてレフト前へ。そして一、二塁から山口(雄)の合わせただけの打球が三遊間を抜けて、3点目。西日本短大附がしぶとい打撃で1点をもぎとり、さすがに勝負あったかに思われた。

善戦及ばず敗れ、試合終了後にベンチ前で相手校歌を聞く糸島の選手

ところが9回裏、江川が乱れる。岩元を四球で出すと、前田の一邪飛のあと代打・小金丸(篤)に粘られて歩かせ、さらに長尾にはストレートの四球。きわどいコースをとってもらえずに一死満塁。一打同点、長打が出れば逆転サヨナラの場面を迎える。続く代打・和田にも3-1とカウントを悪くしたが空振りを一つとると、最後は直球で押してニゴロ併殺打に打ち取り、何とか逃げ切った。初戦に続く苦しい試合となったが、こうした試合に耐えて勝ち上がって行くのが、逆転の連続で優勝した春以降の戦い方ともいえる。

糸島は内野を中心に、いま持っている技術を十二分に発揮して失点を最小限度にとどめ、競り合いに持ち込んだが、打線は3安打。江川を打ち崩すだけの打力を欠いた。この日の江川から得点するとすれば、敵失や四死球が絡まないと厳しいと思われたが、その通りの展開に持ち込んで1点を奪った。9回も一打同点の場面をつくったが、このピンチをしのいだ西日本短大附の力が一枚上だった。

菅野は春の大会では背番号11。4回戦の九産大九州戦では0-7の場面で登場し、1死しか取れずに3点を奪われ、サヨナラコールド負けを喫した。背番号1を背にマウンドに上がったこの日は、優勝候補を相手に堂々たる投球を見せて多くの観客を魅了した。

 

Pocket
LINEで送る

1 Trackback / Pingback

  1. アクセスランキングと共に振り返る2022年「福岡の高校野球」 |

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*