【観戦記】東海大福岡10-8延岡学園(九州大会準々決勝)




終盤の延岡学園の激しい追い上げをしのいだ東海大福岡が、辛くも逃げ切って準決勝進出を決めた。

序盤は東海大福岡が優位に試合を進めた。2回一死後、唐崎が四球で出ると続く井上の時にバスターエンドラン、これがレフト右への二塁打となって唐崎が一気に生還し先制。3回は一死から宗右前打のあと山本、藤本の連続四球で一死満塁とし、野上の右犠飛でまず1点。ここで登板した延岡学園・藤川から唐崎の右翼線に落ちる二塁打で1点を加えると、なおも二死二、三塁から井上の右中間三塁打で2人を迎え入れ、佐藤がファースト左を破って井上も還り、この回5点をあげた。

3点差に迫られた8回は先頭の藤本が右中間本塁打を放って加点。7-5で迎えた9回は二死から宗が遊内野安打で出ると山本中前打で二死一、二塁とし、藤本の右越え二塁打で2点を追加。さらに野上も中前にはじき返して藤本が生還し、リードを広げた。

9回表 東海大福岡 二死一、二塁 藤本が右越え二塁打を放つ

5回まで得点できなかった延岡学園は6回、先頭の宮川が振り逃げで出塁すると佐藤、影山が連続四球で無死満塁とし、坂口の左犠飛でまず1点。小林右前打で再び満塁から甲斐の右犠飛でこの回2点を返した。7回は四球で出た工藤を江藤が送り、宮川中前打で一死一、三塁。続く佐藤の左前打で3点差に迫った。

さらに8回は甲斐が中前打、代打太田も右前打で続き、工藤四球で無死満塁。江藤、宮川は連続三振に倒れたが佐藤の左前打で2者が生還し、5-7と迫った。

5点差となった9回はこの回から登板した福田から坂口が四球を選び、小林が右前に落として無死一、二塁。甲斐右直、太田中飛で二死となったが、ここで再登板した佐藤から工藤が振り逃げで二死満塁とし、代打井上が押し出し四球。さらに宮川が左翼線に落とし二者が還り、なおも一、三塁と迫ったが佐藤が三振。6回以降、9安打に7四球をからめて激しく追い上げたが、あと一歩及ばなかった。

第153回九州地区高校野球大会準々決勝
(2023年10月31日・火/小郡市野球場)
チー ム 一二三四五六七八九  計HE
東海福岡 015000013 1013
延岡学園 000002123  811
 東海大福岡 年 打安点  延岡学園 年 打安点
(二)光 富 ② 500 (中)宮 川② 622 
(中) 宗翔 ② 530 (二)佐 藤② 533
(三)山 本 ② 410 (一)影 山② 310
(一)藤 本 ➁ 423 (右)坂 口② 211
遊 福 島 ② 000 (捕)小 林② 520
一 伊 藤 ➁ 000 (三)甲斐夢② 411
(右)野 上 ➀ 422 (投左) ② 300
走右 西村真 ② 000  打左 太田② 210

(左)唐 崎 ➁ 421 (左)星 川② 000
(捕)井 上 ② 523  投 藤 川➀ 200
(投一投)佐藤② 411  投 工 藤② 100
(遊)秋 田 ② 300 (遊)江 藤➁ 100
打  宗義 ➀ 100  打 甲斐輝② 100
投遊 福田 ② 000  遊 山 口➀ 000
ーーーーーーーーーーーー  打 井 上➁ 001
振球犠盗残        振球犠盗残
63106       11113112
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投 手 回 安球振責 投 手 回 安球振責
佐藤  8 9793  南   2.2 3304
福田   0.2 1100  藤川  3.1 4022
佐藤   0.1 1120  工藤 3 6044
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▼試合時間:13:35~16:14
※選手名の下線は左打者

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延岡学園の先発・南

激しい試合だった。東海大福岡は2回に井上の鮮やかなバスターエンドランで先制すると、3回にも延岡学園の先発・南の制球の乱れに突け込んで1点を追加、さらに救援の藤川にも3連打を浴びせて6-0とリードを広げた。東海大福岡の先発佐藤は直球がコーナーによく決まり、縦に落ちるスライダーや抜いたカーブも低めにコントロールされ、3回まで四球の走者を一人出しただけ。投打とも圧倒し、コールドさえ視野に入ってくる展開だった。

延岡学園・藤川

しかし4回以降、東海大福岡打線は藤川を打ちあぐむ。内外野へいい当たりは出るものの野手の守備範囲内におさまり4回は三者凡退。5回は一死後、野上が左前打を放つが、唐崎三振の時に二盗に失敗して併殺。登板直後は不安定だった藤川の変化球も徐々に決まり始め、6回は遊ゴロ3つに打ち取られた。

東海大福岡・佐藤

一方の佐藤は4回あたりから直球が高めに抜け始める。2安打と四球で無死満塁とされた4回は小林を三振、甲斐は遊ゴロ併殺で切り抜け、5回も三者凡退に抑えたがボールが先行し、7番8番といずれもフルカウントの末に三振に打ち取るきわどい投球が続いた。

そして6回。わずかに見せた隙が延岡学園の猛攻を呼び込む。この回先頭の宮川を低めのスライダ―で空振り三振に打ち取ったが、ボールがこぼれたのを見て宮川は一塁へ走る。余裕をもってアウトと思われたが井上の一塁送球が左に逸れ、藤本の足が離れて振り逃げが成立。すると佐藤が2者連続で四球を与え犠飛、安打、犠飛で2点を失う。それでもまだ6-2。東海大福岡の優位に変わりはなかった。

延岡学園・工藤

延岡学園ベンチは7回表からエース工藤をマウンドに送り込み、さらに流れを引き寄せにかかる。東海大福岡は1番からの好打順だったが、工藤は伸びのある直球で2つの三振を奪って三者凡退で仕留めベンチの期待に応えると7回裏、佐藤はその工藤にストレートの四球を与える。もはや、安定感を誇った序盤の面影はどこにもなかった。

犠打で送ったあと延岡学園は宮川、佐藤の連打で1点を返し3-6。影山の一打も左翼ポール際に向かって伸びていったが、レフト唐崎がランニングキャッチ。坂口四球で二死満塁となり、続く小林の当たりはバットの先、センター前に落ちるかと思われたが宗が懸命に前進してつかみ追加点は阻止した。

3点差に迫られ東海大福岡ベンチにも追加点を取らないと逃げ切れない、という雰囲気が漂い始める。8回表先頭の藤本はその思いを示すかのように9球粘ったあとの10球目を、ライナーで右中間スタンドに叩き込んだ。二死後、井上も三ゴロ失で一塁にヘッドスライディングを見せ、闘志を前面に出して突き放しにかかる。

8回表 東海大福岡 無死 藤本が右中間本塁打を放ちホームイン

ただ、延岡学園の勢いは本塁打一本では止めることができなかった。8回裏甲斐(夢)、太田の連打と工藤の四球で、この試合三度目の無死満塁。佐藤も甲斐(輝)、宮川とスライダ―で連続三振に打ち取るが、佐藤には左前打を許して2人が還り5-7。なおも一、二塁から影山の右前打で二塁から工藤が本塁を突く。本塁はクロスプレーとなったが間一髪アウト。東海大福岡も懸命の守りを見せる。

8回裏 延岡学園 二死一、二塁 影山の右前打で二走の工藤が本塁を狙うがタッチアウト

追加点を取らないと危ない。そうした雰囲気の中で始まった9回表の攻撃は代打の宗(義)、光富と倒れ簡単に二死。三者凡退ともなれば9回裏の延岡学園の攻撃に勢いがつくことが必至だったが、ここからの粘りがこの試合の勝因となった。宗(翔)は変化球をひっかけたが飛んだコースがよくショート左への内野安打。山本が中前に弾き返すと、前の打席本塁打の藤本が2-0から目の覚めるような当たりをライト右へ飛ばし、2人の走者が相次いで生還。野上もセンター前に痛打を飛ばして二死から怒涛の4連打で3点を奪い、さすがに勝負あったかと思われた。

9回裏。5点差に開いたこともあってか、東海大福岡ベンチは佐藤をファーストに回し、普段はショートを守る福田をマウンドに送り込んだ。制球のよさを買われての起用と思われる福田だったが先頭の坂口にストレートの四球。小林にはライト前に落とされ、またしても雲行きが怪しくなる。甲斐はいい当たりの右直、太田もセンター前に落ちそうな当たりを宗が抑えて二死となったところで、再び佐藤がマウンドへ。最後はエースでというベンチの思いだろうが、幕引きは容易ではなかった。

東海大福岡・福田

工藤は空振り三振で試合終了と思われたが、ワンバウンドとなった投球を井上が後逸(記録は暴投)し、振り逃げとなって二死満塁。代打井上にはフルカウントからスライダーを見極められて、押し出し四球で6-10。宮川の一打はサード後方への飛球、レフト、ショートも追った打球はその3者の間に落ち、二死ということでスタートを切っていた二人が生還。これで8-10となりなおも一、三塁。長打が出れば同点、本塁打なら逆転サヨナラのシーンを迎えた。打席は2打席連続でタイムリーを放っている2番佐藤。さらに3番4番が待ち受ける厳しい場面だったが、佐藤は直球、スライダーで追い込むと、最後は高めの直球で空振り三振に仕留め、激しく拳を突きあげた。

6点リードを得ながら混戦となった背景には佐藤の変調がある。4回以降、直球が抜けるようになり、後半の4イニングスだけで被安打8、与四球6と乱れた。今春以降、観戦した試合では四死球も少なく安定感のある印象だったが、8点を失った初戦の九州学院戦でも6つの四死球を与えている。福岡大会でも決勝の飯塚戦で6四球、パート決勝の筑陽学園で8四死球と不安定さを感じさせる数字が並ぶ。

この試合ではギリギリのところで踏ん張ったことで勝ちにつながったが、この先の準決勝、決勝、さらに来春のセンバツで全国の強豪相手に戦うことになれば、やはり佐藤の復調は欠かせない。11三振を奪ったように130キロ台後半の直球、落差あるスライダーといい球を持っているだけに、制球をもう一度整えたいところ。

打線はこの試合でも集中打が光った。激しく追い上げられる中で集中力を切らさず、再び終盤に突き放すというタフな試合をものにした。大逆転劇を演じた初戦の九州学院戦とはまた違う形の厳しい試合を経験したことで、チームはより逞しさを増したに違いない。

佐藤の変調があったとはいえ、延岡学園の猛追は見事だった。6点差を決して諦めず、ボールをしっかりと見極めながらの好球必打で、迫力のある打撃を見せた。投手陣も藤川、工藤と右本格派の二人が力のあるところを示し、守ってはショート江藤が荒れたグラウンドの中で7つのゴロを堅実に処理した

すっかり傾いた秋の陽の中で試合終了後もしばらくベンチ前から動けなかった選手たちの姿が、あと一歩及ばなかった無念さを物語っていた。

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