’23選手権福岡大会を振り返る①~総括編




第105回全国高校野球選手権記念福岡大会は九州国際大付の2年連続9度目の優勝で幕を閉じました。今大会の軌跡をデータなどをまじえながら振り返ってみたいと思います。

 

7月1日(土)と例年になく早い時期に開幕した今年の福岡大会。4年ぶりに全校が一堂に会しての開会式も予定されていましたが雨により中止となり、開幕以降もしばらくは雨による影響を受け続けました。

【門司大翔館ー育徳館】9回裏二死三塁から始まった4日後の継続試合で信濃が一ゴロに倒れ試合終了

12日まで全試合が予定通りに実施されたのは4日間のみ。2回戦の門司大翔館―育徳館戦では9回裏育徳館二死三塁の場面で試合が中断、そのまま継続試合となりましたが、その後も雨が続き実施されたのは実に4日後。雨予報時の試合開始の判断、また降雨時にどのタイミングで試合を中断させるべきなのかを改めて考えさせられる試合となりました。

雨のため開始時間を遅らせて行われた試合も多く、その影響で12日の第三試合・福岡大大濠―福岡第一(春日公園野球場)は夏の試合では異例の点灯試合に。13日以降は予定通りに実施されましたが、大会期間中の試合実施率(予定された試合のうち実際に行われた試合の割合)は65.7%と過去10年でもっとも低い数字となるなど、序盤は雨に翻弄された大会となりました。

背景色の濃い青は予定された試合の半数以上が中止となった日(薄青は半数未満)。赤字は県大会

南部大会ではシード校の初戦敗退が相次ぎました。春4強の福工大城東は博多工・大野投手に完封を喫し、昨秋準優勝の東福岡は筑前に打ち負けました。春の福岡地区大会優勝の筑陽学園は2回までに11点を奪われて九産大九産に5回コールド負け。春までの実績がそのまま通用しない夏の怖さを示す結果となりました。一方で、福岡常葉八女学院が夏初勝利をあげるというフレッシュな話題もありました。

北部では北筑が東筑に敗れた以外、シード校の7校は順当に県大会へ進出しました。折尾の古賀投手は2回戦の玄界戦でノーヒット・ノーランを達成し、須恵は初の県大会出場を決めました。須恵は4回戦でシード校の福岡を下し、県大会初白星も同時に手にしました。

県大会に入ってからも、優勝候補と目されていたチームの敗退が続きました。昨秋の優勝校で春の九州大会4強の西日本短大附は4回戦で嘉穂との延長タイブレークにもつれる試合は制したものの、続く5回戦で東筑の猛打に屈してコールド負け。春の優勝校で九州大会4強の福岡大大濠も星琳に打ち負けて4回戦で敗れ、藤原・中村の右本格派2人を擁して3年連続ベスト4を狙った飯塚も5回戦で大牟田に競り負けて、ベスト8を前に姿を消しました。その一方で近大福岡が初の8強、希望が丘が初の4強入りを果たし、新たな歴史を刻みました。

優勝候補が相次いで早々に敗れる中、夏2連覇を目指す九州国際大付は5回戦で久留米商に9回二死まで追い詰められながらも、驚異の粘りを見せて逆転サヨナラ勝ち。底力を見せてベスト8入りを果たすと、準決勝の大牟田戦もサヨナラ勝ちで決勝へコマを進めました。

【久留米商ー九国大付】9回裏 九国大付 二死一、二塁 三宅の右前打で藤木が生還、同点に

もう一つのブロックからは強打で勝ち上がってきた東筑が決勝へ。両校は春の福岡大会、5月の北九州市長杯でも対戦し、いずれも九州国際大付が勝利を収めていましたが、三度目の対戦となった決勝の舞台でも九州国際大付が競り勝ち、昨夏に続く連覇を達成しました。

また、今大会からタイブレークの適用が延長12回から10回に前倒しされました。延長戦は5試合ありましたが、そのうち4試合までが10回に決着。試合時間の短縮効果をもたらす結果となりました。

「投高打低」の傾向に

1試合あたりの平均値。赤字は各項目の最高値、背景の色付きは平均値以上の項目

ベスト8以上のチーム成績は表の通りです。打撃部門では東筑が5項目中4項目で平均値以上の数値。平均得点「8.0」は他校を大きく引き離しています。「犠打」「盗塁」の数値も高く機動力も絡めながら得点を重ねたことが分かります。ちなみに東筑はベスト8入りした昨年も得点でトップでした(昨年は8.4)。希望が丘は「長打」「犠打」で高い数値を示しました。得点圏に走者を進めながら長打で効率よく得点をあげてきたことがうかがわれます。投手・守備部門では九州国際大付、大牟田、東海大福岡の3校が抜きんでています。

九州国際大付は昨年と比べると得点(7.14→5.86)打率(.356→.343)犠打(2.71→2.0)本塁打(0.86→0)など攻撃に関する数値は軒並み下がりましたが、失点(1.43→1.14)防御率(1.33→1.17)失策(1.0→0)と守りの数値は全てアップ。今年は守り勝ってきたことを物語っています。

昨夏のベスト8との平均値を比較すると「得点」は6.73→5.93「打率」は.333→.321と下がる一方で、「失点」は3.09→2.35「失策」は0.84→0.7となっており、少なくとも上位チームに関しては「投(守)高打低」の傾向だったことが見てとれます。

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