【観戦記】九国大付4-3大牟田(選手権大会準決勝)




◇九国大付4-3大牟田(選手権大会準決勝)

2年生の左腕エース同士の投げ合いとなった一戦は九国大付が9回、力投を続けた田端自らのサヨナラ打で熱戦に終止符を打った。

▼準決勝(25日・久留米)〔試合記録
大牟田  000 003 000=3
九国大付 101 010 001x
=4
【大】境【九】田端

同点で迎えた9回、九国大付は7番三宅に代わる代打宮川が中前打を放ち出塁(代走藤木)すると、下川の時に暴投で二進。下川が送りバントを決めたあと、9番田端が中前にサヨナラ打を放って勝負を決めた。

9回裏 九国大付 一死三塁 田端の中前打で藤木がサヨナラのホームイン

序盤から九国大付が優位に試合を進めた。初回秀嶋が四球を選び、隠塚が送って一死二塁。山口は三振に倒れたが4番佐倉の左前打で先制点をあげた。3回は田端が死球で出塁、秀嶋が送ったあと隠塚右前打で一死一、三塁とし、3番山口の中前打で田端が生還。5回には四球で出た田端を秀嶋が送り、隠塚は投ゴロで二死となったが山口が右翼線三塁打を放ってリードを広げた。

5回まで毎回安打を放ちながら無得点に抑えられてきた大牟田は6回一死後、4番成清が左翼線への三塁打で出塁し、宮崎の右中間二塁打でまず1点。さらに6番山下もセンター左を破る三塁打を放って1点差とすると、続く野中がスクイズを決めて追いついた。

しかし7回8回は三者凡退、9回は一死から野中が中前打で出たが境が遊ゴロ併殺打に倒れ、田端から勝ち越し点を奪うことができず、その裏に力投を続けていた境が力尽きた。

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大牟田・境

大牟田の先発・境はこの日も130キロ台前半(この日最速136キロ)の直球に力があったものの疲れからか、あるいは多少の力みがあったか、制球にやや乱れが生まれた。初回秀嶋を追い込みながら歩かせると犠打で送られ、佐倉に外角直球を三遊間に運ばれた。

3回と5回も四死球を与えた田端を犠打で二塁に進められ、いずれも山口にタイムリーを浴びた。5回の右翼線三塁打は外に逃げていくスライダ―をうまくバットに乗せて右翼線に運んだ山口を褒めるべきだろうが、悔やまれるのはホームを踏んだ3人がいずれも四死球で出した走者だったこと。じわじわとリードを広げられ、九国大付のペースで試合が進んだ。

九国大付・田端

一方の九国大付・田端も、5回まで一人も走者を出さなかった5回戦の久留米商戦、8回まで2安打に抑え込んだ準々決勝の祐誠戦と比べると、この日は初回から毎回のように安打を許す苦しいピッチング。それでも130キロ前半(同135キロ)の直球、スライダーなど変化球を低めに決めて得点を許さない。味方打線から5回までに3点の援護ももらい、過去2試合よりは余裕を持って前半を投げ切った。

しかしグラウンド整備後の6回表、大牟田打線は田端のわずかな緩みを逃さなかった。成清がスライダーをうまくバットに乗せて左翼線に運び、レフトがクッションボールの処理に手間取る間に三塁へ達すると、宮崎もスライダーを逆らわずに右中間へ弾き返しまず1点。山下は直球をセンター左に運び、これで1点差。7番野中は2球目にスクイズを決めて、12球で3点を奪い返した。

6回表 大牟田 一死二塁 山下が中越え三塁打を放つ

6回裏、今度は九国大付が勝ち越し機を迎える。白井が中前打で出ると、代打浅嶋の投前送りバントを境は二塁に送球したが間に合わず、無死一、二塁。しかし続く三宅の送りバントが捕邪飛となって走者を送れず、下川、田端も凡退。大きなチャンスを逃して流れが再び大牟田に変わるかと思われた。

だが、田端も7回表をきっちり三人で抑えて流れを渡さない。すると境もその裏を三人で退ける。さらに8回も両者3者凡退で一歩も譲らない。田端の方が疲れているよう見え、境は淡々と投げ込んでいる感じだったが、お互い触発されるように力のある球を投げ合った。

そして迎えた9回裏、九国大付ベンチは過去3打席で2三振+バント失敗と調子の出ない三宅に代えて、2年生の大型打者・宮川を代打に起用する。今大会2打席目の宮川だったが、1球見送った後の2球目の直球を痛烈にセンター前にはじき返し起用に応える。代走に俊足の藤木が送りこまれる。下川の2球目がワンバウンドとなり(記録は暴投)捕手の宮崎がこれを後ろにこぼす間に藤木が二進。下川が送り一死三塁となった。

打席には田端。この日は2つの四死球と一ゴロだったが、久留米商戦で好投手中島から2安打、祐誠戦でも貴重な追加点となるタイムリーを放つなど、打撃にもセンスを感じさせる選手だ。1点取られたら終わりの場面、塁を2つ埋めて2番隠塚と勝負という選択肢もあったと思うが、勝負に行く。2-1からの4球目、強く叩いた打球は大きく跳ね、境が差し出すグラブをかすめてセンター前に転がっていった。

それにしても田端はその投球術だけでなく、冷静なマウンドさばきや打席で見せる闘志など2年生とは思えない雰囲気を持つ選手だ。一方の境はあまり感情を表面には出さないが、直球で押す強気の投球でチームを準決勝まで導いた。お互い2年生。新チーム以降も続くライバル関係となっていきそうだ。

九国大付はこの試合の前まで犠打はわずかに8個だったが、この試合では先頭打者が出た5度、全て送って来た。4回戦までの猛打や昨年のチームの印象もあって強打のイメージが強いが、今年のチームは本塁打ゼロが示すように、つなぐ打撃で得点を重ね、そのリードを田端を中心に守り抜くのが勝ちパターンといえそうだ。

1回裏 九国大付 二死二塁 佐倉が先制の左前適時打を放つ

田端にサヨナラ打を許した後、大牟田の捕手宮崎は突っ伏したまましばらく起き上がれなかった。直前にワンバウンドの投球をそらしてしまったことを悔いていたのだろう。そんな宮崎のもとに真っ先に駆け寄ったのは九国大付の佐倉だった。佐倉は久留米商戦や祐誠戦などでも試合終了後、相手チームの選手と健闘をたたえ合って言葉を交わすシーンが見られた。一発を狙うのではなくチームバッティングに徹する主将としての自覚が、こうしたシーンにも表れているように感じた。

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