【観戦記】東筑7-4希望が丘(選手権大会準決勝)




◇東筑7-4希望が丘(選手権大会準決勝)

東筑が8回に希望が丘のエース江越を一気に攻略、希望が丘の9回の追い上げを振り切って、6年ぶりの決勝進出を果たした。

▼準決勝(25日・久留米)〔試合記録〕
希望が丘 100 000 003=4
東  筑 001 010 05x
=7
【希】江越→中山【東】安田→多田

1点を追う東筑は3回一死後、2番関屋が四球を選ぶと二盗を決め、尾形の左翼線二塁打で同点のホームを踏んだ。5回は1番永田が遊内野安打で出塁し、関屋が送った後、尾形の遊ゴロ失で永田が生還して勝ち越した。

3回裏 東筑 一死二塁 尾形の左翼線二塁打で関屋が生還、同点に

8回は5番阿部が四球で出ると、続く池田の一前バントが敵失を呼び、無死一、二塁。中嶋が送って一死二、三塁とし、8番大越の右前打でまず1点。なおも一、三塁から安田の左中間二塁打で2人を迎え入れて5-1。永田も中前打で続いて再び一、三塁とし、関屋の右前打で安田が生還した。なおも一、二塁の場面で登板した希望が丘の2番手中山から尾形が一塁側にセーフティバントを決めて満塁とし、森木が押し出しの四球を選んでこの回5点を奪い、突き放した。

希望が丘は初回、先頭の下田が右前打で出ると長崎が送って一死二塁。石本の右前打と二盗で一死二、三塁とし、渡邊の遊ゴロの間に下田が生還して先制した。しかしその後は2回一死二塁、5回一死一、三塁、6回一死二塁、7回一死二、三塁、8回一死二塁と再三得点圏に走者を送りながら決定打を欠いた。

9回表 希望が丘 一死二、三塁 隈井が二塁内野安打を放つ

6点差となった9回は5番敷田が左前打で出ると、江越右飛のあと松崎のセンター左への二塁打で一死二、三塁とし、8番隈井の二塁内野安打で1点を返した。なおも一死一、三塁から山野の遊ゴロ併殺崩れの間に三塁から松崎が還って2点目。下田左前打で二死一、二塁とした後、ここで登板した東筑2番手多田から長崎が遊内野安打を放ち、打球が外野に達する間に山野が生還し4-7と3点差に迫った。しかし反撃もここまで。中盤の逸機が響き届かなかった。

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東筑・安田

東筑は背番号11の2年生・安田が今大会初先発。立ち上がり、いきなり下田に直球を右前にはじき返され、石本にはスライダーを一・二塁間に合わせられ、内野ゴロで先制を許す。2回も先頭の江越を歩かせるが、このピンチを切り抜けると3回以降は120キロ台後半の直球(この日最速132キロ)にスライダ―、カーブでテンポよくストライクがとれるようになり、3回4回は三者凡退に抑えた。

希望が丘・江越

希望が丘の先発江越は、この日も立ち上がりから130キロ台前半の直球(同136キロ)がよく走っていた。2回は一死から渡邉、中嶋に連打を浴びたが大越を内角直球で見逃し三振、安田にはスライダーで空振り三振に仕留めてピンチを脱した。ただ東筑はその後も毎回のように走者を出し、江越を楽にさせない。3回は四球で出た関屋が二盗を決めると尾形が三塁線を破って同点。5回は一死二塁で尾形の強烈なゴロをショートがトンネル。地を這うような打球に少し腰高になってしまったか。

希望が丘も5回以降は再三走者を出すが、得点に結びつかない。5回一死一、三塁では江藤が二盗を敢行。初回一死一、三塁の場面ではセカンドがカットして二盗を甘受したが、ここでは大越が直接二塁に送球して刺した。続く三宮は左飛。結果論だが、走っていなければ犠牲フライには十分という当たりだった。6回も先頭の下田が左前打で出ながら、次打者長崎の時に離塁が大きくキャッチャーからのけん制に刺されてしまう。直後に長崎の二塁打が飛び出したが石本の遊ゴロで三塁を狙ってタッチアウト。チグハグな攻撃となってしまった。

東筑も6回2本のヒットで一死一、二塁とし、突き放しにかかるが大越が遊ゴロ併殺打。江越の懸命の力投の前に追加点は得られない。

膠着状態のまま試合は7回へ。希望が丘は一死から江越が四球を選ぶと、続く松崎が左中間を真っ二つに割る長打を放つ。一塁から江越が同点のホームを踏むかと思われたが、二塁ベースを回ったところで足がつったようで急停止。そのまま背負われてベンチへ下がった(臨時代走を起用)。ここが勝負処とみた希望が丘ベンチは代打攻勢をかけるが加納は三振、平安は強烈なピッチャー返しを放ったが投手のグラブに当たった打球はセカンドの前へ。グラブに当たっていなければセンター前に抜けていたと思われる一打だったが、希望が丘はこの回も得点できない。

8回裏 東筑 一死一、三塁 大越の左中間二塁打で池田(20)に続き大越が生還

投球は絶望的と思われた江越だったがベンチでの治療を経て7回裏のマウンドへ立つ。二死をとったあと、関屋にファーストのミットをはじく二塁打を許し、尾形を歩かせたが、4番森木を渾身の投球で三飛に打ち取る。しかしこれが最後の見せ場だった。8回は四球で先頭打者を出すと味方の失策もからんでピンチが広がり、4連打を浴びて降板した。

東筑の各打者のスイングは依然として鋭い。江越の出来も決して悪くなかったが序盤からヒットを重ね、4回以外は毎回安打。少しでも甘く入ると痛打されるという重圧をかけ続け、徐々に江越のスタミナを奪っていった。終わってみればこの日も13安打。県大会に入ってからの安打数は16、16、14、13と、とどまるところを知らない。

希望が丘は春の大会の3位校ながら、小柄な打者が多く中軸打者でさえバットを短く持ってスイングしてくる「普通の公立校」のようなチームがゆえに、正直ここまで勝ち上がってくるとは予想していなかった。この試合でも2番長崎や7番松崎などが東筑も顔負けの当たりで次々と外野の間を破り、春の実績がフロックでないことを証明した。大切な場面で守備や走塁のミスが出て勝利とはならなかったが、9回は5本のヒットを重ねてスタンドを大いに沸かせた。

江越という大エースを支えた小さなナインたちの奮戦は、創部以来初の夏4強という形で新たな歴史として刻まれた。

試合終了後、ベンチ前に整列し東筑の校歌を聞く希望が丘ナイン
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