【観戦記】星琳8-6福岡大大濠(選手権大会4回戦)




◇星琳8-6福大大濠(選手権大会4回戦)

中盤激しい点の取り合いとなったが、延べ6投手の継投をみせた星琳が福大大濠の追撃をかわして逃げ切った。

▼4回戦(18日・久留米)〔試合記録
福大大濠 001 131 000=6
星  琳 000 520 01x
=8
【福】永田→平川→松尾→鯉川
【星】宇土→田中→宇土→田中→富岡→田中

2点を追う星琳は4回、1番田中(蓮)が中前打で出ると、富岡が四球を選び無死一、二塁。ここで登板した2番手平川から小山が左前打を放ち満塁とし、田中(直)三振のあと、5番遠竹の左前打でまず1点。山本の押し出し死球で追いつくと、3番手の松尾から7番宇土が左前打を放って逆転した。なおも一死満塁から朝吹の三塁前スクイズが内野安打となり4点目。二死後、打者田中蓮の時に捕手からの一塁牽制をファーストがはじく間に三塁から山本が還って、この回5点を挙げた。

5回裏 星琳 一死一塁 田中直が左翼ポール際に本塁打を放ち生還

追い付かれた直後の5回は一死から3番小山が中前打で出塁し、続く田中直が左翼ポール際に本塁打を放って2点差とした。1点リードで迎えた8回は山本が遊ゴロ失で出ると、続く堂元も右前打。朝吹が送ったあと、宇田川のニゴロの間に山本が生還、再び2点差として逃げ切った。

福大大濠は3回一死後、3番黒田が四球、藤田の左前打で一死一、二塁とし、5番日高が中前打を放って先制した。4回は一死から四球で出た8番高尾が二盗を決めると暴投で三進。9番永田の中犠飛で生還した。逆転された5回は黒田、藤田が連続四球。日高三振のあと、6番高田が左越え二塁打を放ちまず1点。なおも一死二、三塁から龍は三振に倒れたが、高尾が左越え三塁打を放って追いついた。

6回は右前打で出た1番大神が二盗を決め、暴投で三進。八島三振のあと、黒田のセカンドへの当たりがイレギュラーして右前に達する安打となり大神が生還、1点差とした。しかし7回8回といずれも二死二塁のチャンスを迎えながらあと一本が出ず、涙をのんだ。

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試合の流れが二転三転し、どちらに勝利が転んでもおかしくない試合だった。

星琳先発の宇土

序盤は福大大濠ペース。初回一死から八島が四球で出ると続く黒田の時にヒットエンドランが鮮やかに決まって(右前打)一死一、三塁。ただ4番藤田は簡単に初球を打って三ゴロ、日高もニゴロで得点できなかった。2回も2つの四死球で一死一、二塁としたが永田三振、大神左飛で無得点。ようやく3回一死一、二塁から日高の中前打で先制したが、続く高田の右飛で二走が飛び出してしまい併殺。アウトカウントの確認ミスか、勢いに水を差す痛いプレーだった。

再三の得点機にわずか1点。この拙攻が、結果的に後々響くことになる。

それでも4回一死から高尾が四球を選ぶと二盗を決め暴投で三進し、永田の中犠飛で生還。ノーヒットで1点を加えた。星琳の先発・左腕の宇土はチェンジアップを軸とした投球を見せたが制球に苦しみ4回途中、3安打5四死球で降板。田中直にマウンドを譲った。

福大大濠・永田

福大大濠の先発は2年生の永田。初戦の福岡舞鶴戦で1イニングを投げており、130キロ台前半の直球(この日最速135キロ)にスライダー、カーブを交えてくる左腕だ。初回に2番富岡に中前打を許したが、ここを併殺で切り抜けると2、3回と三者凡退。快調な立ち上がりを見せた。

4回表を終えて2-0。序盤の拙攻はあったが福大大濠のペースで試合が進んでいた。ところが4回、永田の制球が乱れる。先頭の田中蓮に3-0とした後に中前打を許すと、富岡にはストレートの四球で無死一、二塁。2点のリードはあったが福大大濠は同じく2年生の平川をマウンドに送りこんだ。

平川は130キロ台前半の直球(同137キロ)にスライダーを持つ右腕だが、小山に2-0から左前打を許して無死満塁。田中直は三振に仕留めたが、遠竹に左前打を許し1点差。さらに山本に死球を与えて同点となり、球場の雰囲気が変わり始める。

ここで福大大濠ベンチは主戦投手の一人である松尾を投入したが、宇土に左前に逆転打を浴び勢いを止めることができない。続く朝吹は初球をスクイズ、三塁前にうまく転がし、虚をつかれた松尾は一塁にも投げられず内野安打となり4-2。さらに宇田川も1-2からスリーバントスクイズ、これは失敗(ファール)に終わったが、星琳は嵩に懸かって攻撃を仕掛けてくる。この回二度目の打席となった田中蓮の2球目、一走の離塁が大きいのを見て捕手の藤田は一塁へけん制球を送ったがやや高くなり、タッチを急いだファーストがはじき(記録は一失)三塁から山本が5点目のホームを踏んだ。

5回表、星琳は前の回にレフトに回っていた宇土を再びマウンドに上げたが黒田にストレートの四球。藤田にも2-0となったところで、レフトに回っていた田中が再度マウンドへ上がったが結局、藤田は四球。星琳投手陣の制球難もあり、まだまだ福大大濠にもチャンスはありそうだった。

5回表 福大大濠 二死二、三塁 高尾が左越えに同点三塁打を放つ

続く日高は2球目で送りバントを試みるがファール、強打に切り替えたが三振。もらったチャンスを広げられない。高田の一打はレフトが追いつくかと思われたが、右から左に強く吹いていた風に乗ってレフトの頭上を越える二塁打となり1点を返す。龍三振のあと、高尾も同じようなレフトへの飛球、これもやはり風に乗って三塁打となり2人が生還、一気に追いついた。

同点となり試合を落ち着かせたい松尾だったが、その裏一死から3番小山にスライダーを中前に運ばれると、途中出場で4番に入っていた田中直にもスライダーをレフトへ高々と打ち上げられ、風に乗って左翼ポール際に吸い込まれていった。今後は風が星琳に味方し7-5。これ以上の失点はできない福大大濠は、ここでエース鯉川をつぎ込む。

6回表、星琳のマウンドにはショートから富岡が上がる。その富岡から大神が右前打を放つと二盗を決め、暴投で三進。八島三振のあと黒田の一打はセカンド正面のゴロだったが、捕球体勢に入ったセカンドの前で大きく弾みライト前へ。まだツキは福大大濠にあった。これで6-7となって1点差。

福大大濠・鯉川

マウンドでは鯉川が気持ちの入った投球を続けた。この日最速140キロの直球にフォークを交えて6回は3つのアウトを全て三振で奪う。7回は小山に右前打を許すが、続く田中直の投前バントを猛然とダッシュして掴むや否やセカンドへ矢のような送球、そのまま一塁に転送させて併殺に仕留める。背番号1に恥じぬ投球、プレーで打線の援護を待った。

7回の福大大濠は高田が四球を選ぶが、ここで三度目の登板となった田中直から龍が送りバントを決め切れず、強攻して中飛。高尾三振の時に高田が二盗を決めたが、鯉川の強烈な打球をサード富岡に阻まれ無得点。8回も二死二塁としたが、頼みの4番藤田が田中直のスライダーに三振。あと一本が出ない中、8回裏に星琳に追加点を奪われ万事休す。9回はわずか8球で攻撃を終え、勝負が決した。

星琳・田中直

福大大濠に攻守でミスもあったが、何よりも星琳の打力が福大大濠の投手陣を上回った。松尾・鯉川といった主力級の投手も含めて12安打を浴びせ、その大半が芯で捕らえたクリーンヒット。打球の速さも目を引いた。

一方で投手陣は3人の投手で9つの四死球を与えるなど制球に苦しんだ。それでも打線の援護を受ける中で田中直が尻上がりに調子を上げ、三度目の登板となった7回途中からは縦に鋭く落ちるスライダーを武器に無失点で切り抜けた。回が詰まるにつれて硬さが見られた福大大濠とは対照的に、星琳は最後まで思い切りよく伸び伸びとしたプレーを見せ、春の優勝校に打ち勝った。

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