【観戦記】西短大附6-5嘉穂(選手権大会4回戦)




◇西短大附6-5嘉穂(選手権大会4回戦)

嘉穂が9回の土壇場で同点に追いつき延長タイブレークにもつれこむ熱戦となったが、最後は西短大附が嘉穂を振り切ってベスト16入りを果たした。

▼4回戦(16日・春日公園)〔試合記録
西短大附 004 000 000 2=6
嘉  穂 011 100 001 1=5
(延長10回タイブレーク)
【西】中塚→村上【嘉】幸野

延長10回表、無死一、二塁から西短大附は5番多久が送って一死二、三塁とし、続く荒木が右前打を放ってまず1点。なおも一死一、三塁から7番深町がスクイズを決めて2点目。その裏、1点差まで迫られたが辛うじて逃げ切った。

10回表 西短大附 一死二、三塁 荒木が右前適時打を放つ

西短大附は1点を追う3回、四球で出た8番安田が二盗を決め、中塚のニゴロで一死三塁。続く江口の右前打で同点に追いついた。さらに轟木も中前打で続き、村上三振のあと4番高峰の右前打で二死満塁とし、多久が三塁線を破る走者一掃の三塁打を放ってこの回4点をあげ、逆転に成功した。

先制したのは嘉穂。2回7番西野が中前打で出ると、続く葛原がレフト左への二塁打を放って無死二、三塁。山田四球で満塁とし、塚本の一打は4-6-3の併殺となったが、この間に西野が先制のホームを踏んだ。逆転された直後の3回は2番己城、3番松延と連続四球を選び佐伯三振のあと、幸野も四球で一死満塁。西野は投ゴロ(本塁封殺)で二死となったが、葛原が左前打を放って1点を返した。4回も9番塚本、1番北原が連続四球のあと己城が送り一死二、三塁から松延の右犠飛で1点差とした。

その後は得点圏に走者を進めながら本塁が遠かったが、9回一死から幸野が三ゴロ失で出塁し、続く西野のセンターへの二塁打で幸野が生還して追いついた。2点を追う10回裏も無死一、二塁から塚本三振、北原遊飛で二死となったあと、己城の右前打で1点差としたが続く松延はいい当たりながら投直。あと一歩及ばず涙をのんだ。

———————————

3回表に西短大附が4安打を集めて逆転し、このまま西短大附のペースで試合が進むと思われたが、西短大附の先発中塚の不調もあり、試合は最後までもつれた。

西短大附・中塚

この日の中塚は制球に苦しんだ。初回に2安打を許すと、2回も2安打に四球で無死満塁。ここは併殺で1点で食い止めたが、3回は3つの四球のあと、葛原にタイムリーを浴びる。130キロ前後の直球(この日最速134キロ)がばらつき、チェンジアップはワンバウンドになるシーンが目立った。比較的ストライクの取れるカーブが多くなり、4回一死二、三塁では松延にそのカーブを狙われてライトに打ち上げられ、たちまち1点差。5回も西野にカーブを左翼線に運ばれたところで西短ベンチは中塚を諦め、センターから村上を登板させた。

西短大附・村上

村上は長身から投げ下ろす130キロ台の直球(同138キロ)で2者連続三振に仕留めこのピンチを切り抜ける。軽く投げているのに球がミットにズバット突き刺さる、そんな印象だ。この直球を軸に縦に落ちてくるスライダーにカーブを織り交ぜて、制球力もある。

その村上にも嘉穂打線は食らいつき、6回以降、毎回のようにヒットを重ねて得点圏に走者を送るが、西短大附も懸命の守りで得点を許さない。8回二死一、三塁では嘉穂が二盗を敢行。一、三塁での二盗に対しては捕手の二塁送球がそれたり、カバーに入るセカンド、ショートとの連携が乱れるシーンがよく見られるが、捕手の多久は迷わずに二塁に送球、すばやく二塁に入ったショート江口にストライク送球を送り、見事にこれを刺してピンチを脱した。

嘉穂・幸野

一方、嘉穂の先発・幸野は3回に4点を失ったが、その後は走者を出しながらも追加点を許さなかった。130キロ台(同138キロ)の直球を見せ球に、投球の軸となったのは120キロ台の変化球。一見ストレートの軌道だが、手元で微妙に動いているように見えた。この球にカーブ、そして時にはクイックモーションを使いながら西短打線をかわしていった。西短大附もこの試合、14安打を放ったようにヒットは出るのだが、決めきれない。嘉穂の守りもセカンド北原を中心に堅実で、終盤はむしろ押し気味に試合を進めた。

4-3と西短大附が1点リードのまま、9回裏の嘉穂の攻撃を迎える。一死から幸野の三ゴロはバウンドが少し変わったか、サード高峰が顔に当ててしまい、落ちた球をすぐに拾って一塁送球したが、これが乱れて出塁を許す(記録は失策)。続く西野はこの日3本目となる安打を中前に運んだが、これも中前に落ちた後にバウンドが変わったかセンター吉田が逆をつかれるような形となって後逸、一塁から一気に幸野がホームを陥れた。なおも一死二塁、今度は嘉穂がサヨナラのチャンスを掴んだが、村上も踏ん張る。この日2安打の葛原を遊飛、山田を一ゴロに仕留めて延長戦に持ち込んだ。

10回、まず西短大附は無死一、二塁から5番多久が送って二、三塁とし、この日3安打と好調の荒木が右前打を放ち勝ち越し。続く深町がスクイズを決めて2点差に広げる。その裏の嘉穂は無死一、二塁で、打者塚本の時に二走が飛び出し、二・三塁間の挟殺プレーとなったがサード高峰が二塁に悪送球で無死一、三塁。一死後、北原の遊飛ではショートとレフトが交錯するなど、西短大附の野手にも焦りが見られたが、何とか二死までこぎつけた。

追い込まれた嘉穂だったが己城が追い込まれながら右前打を放ち、これで1点差。この日3安打と好調の松延に打席がまわり、嘉穂の応援のボルテージもあがる。松延は2球目をジャストミート、強烈なピッチャー返しを放つが村上が抜群の反射神経を見せてこれを好捕。熱戦に終止符が打たれた。

10回裏 嘉穂 二死一、二塁 松延の一打を村上が好捕、試合終了となる

西短大附は中塚の不調、さらに打線も嘉穂・幸野の変化球に手を焼き苦しい試合を余儀なくされたが、こうした試合を勝ち上がっていくのは西短大附らしさとも言える。5回戦の相手は東筑。過去、夏の大会の対戦成績は1勝3敗。唯一勝った2019年準決勝も5-0から追い上げられ6-5での薄氷の勝利だった。厳しい試合となりそうだが、この苦戦を糧にしたいところ。

嘉穂は、幸野投手が9回までに137球を投げていたことを考えても9回裏で一気に勝負を決めたかったが、そのあと一歩が届かなかった。それでも春の大会では初戦敗退、福岡中央地区大会でも2回戦で敗れるなど、決して戦前の下馬評は高くない中で、幸野投手の気迫あふれる投球と、しぶとく食らいつく打撃であと一歩まで追い詰めた戦いぶりは見事の一言。試合終了とともに沸き起こった春日公園球場の万雷の拍手の中で、今年の嘉穂の夏は終わりを迎えた。

試合終了後、バックネット裏の観客に向けても頭を下げる白石監督以下、嘉穂の選手たち
Pocket
LINEで送る

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*