夏の注目校紹介⑤【飯塚】~終盤の集中力を高め 「今年こそ」目指す頂点




終盤の集中力を高め、
「今年こそ」目指す頂点
【飯塚】(飯塚市)



本格派右腕2人を擁し
10大会ぶりの優勝狙う

藤原大翔(3年)

2012(平成24)年夏に二度目の甲子園出場を果たしてからも例年のように上位進出を果たしながら、あと一歩のところで優勝を逃し続けている。2018(平成30)年夏は北福岡大会で準優勝。一昨年と昨年の夏は、プロ入りした白濱快起(現ロッテ)を擁しながら、ともに準決勝で終盤の逆転負けを喫した。

今年のチームも秋春とも県大会に出場するなど力がある。その原動力となっているのが藤原大翔(3年)、中村大輔(3年)という140キロ超の直球を武器にする二人の右腕だ。1年夏からマウンドに立つ中村は闘志を前面に押し出した投球を見せ、昨秋はエースとしてチームを県大会に導いた。春は故障した中村に代わって藤原が活躍。伸びのある直球、切れ味鋭いスライダーで三振の山を築いた。両投手とも制球に課題を残したが、その快速球は魅力十分だ。

中村大輔(3年)

打線は松永翼、肥後琥南の2年生が3、4番に座り、縄田琉樹、福田力輝、河村竜気ら3年生の好打者がその前後を固める。「好投手と対戦すると打てない」と吉田幸彦監督の評価はシビアだが、春の福岡大会では4試合で38得点をあげた。準々決勝では失策が絡んだとはいえ、複数の好投手を抱える福岡大大濠から8点を奪っている。

ただ、その大濠戦では四度リードを奪いながら逆転で敗れた。昨年、一昨年の夏に喫した終盤の逆転負けと同じように、失策や四死球がきっかけだった。郡山広大主将(3年)が課題にあげる「勝っている試合での集中力」を研ぎ澄ませ、惜敗続きの歴史にピリオドを打ちたい。

充実した練習環境に
専門家によるサポート体制

県内のベテラン監督の勇退が相次ぐ中、「自分が伝えられることがあれば、若い指導者たちに伝えていきたい」と吉田監督。練習試合も相手を問わず受け入れる

飯塚市内の学校敷地内に専用野球場と室内練習場が整備され、近隣の庄内野球場も借りながら練習を行う。部員85人の大所帯で、そのうち約3分の2がサッカー部員と共に寮生活を送る。県内の中学出身者が大半を占め、今年の1年生は県外からは一人だけ。軟式出身者が増えているのも近年の傾向だという。

平日の練習は午後3時から。寮の夕食時間の関係で午後6時30分に全体練習が終わるが、夕食のあと自主トレに励む部員もいる。主力中心のA組、控えメンバーのB組に分かれてノック、フリーバッティング、実戦形式のシートバッティングが基本メニュー。火曜日、水曜日には室内練習場でのウエイトトレーニングが加わり、月曜日は自主練習に充てる。「今年は短打でつないでいくチーム」(郡山主将)であることを自覚し、練習では点差やカウントなど状況に応じた様々な攻撃パターンを磨く。

吉田監督の他、3人のコーチがノックや投手指導を分担。3年前からは専属トレーナーがウエイトトレーニングのメニューを作成している。投手陣は2日に一度ジムに通い、理学療法士の指導の下で可動域を広げるトレーニングに取り組むなど、ここ数年はフィジカルの強化・ケアにも力を注ぐ。

1973(昭和48)年夏に柳川商の主将として甲子園に出場、大学では全日本選手権、社会人では都市対抗野球を経験するなど輝かしい球歴を持つ吉田監督だが、2003(平成15)年に飯塚の監督に就く前は25年間の会社員生活を送った。その時の経験を折に触れて部員たちに話をするのは、「社会で通用する人間になってほしい」という思いから。「今年の3年生は特に真面目で素直」と指導にも熱が入る。

夏の厳しさを知り
総力戦で頂点を目指す

京築ボーイズ時代はセカンドだった藤原は飯塚入学と同時に投手へ転向。「直球で押すのが自分の持ち味。無失点で福岡を獲りたい」

注目される2枚看板の起用法だが、吉田監督は中村を先発させ、藤原を抑えに回して終盤を乗り切る構想を描く。

その藤原の成長が著しい。冬場は体重を増やすことを意識し、12キロの増量を実現。球速は最速148キロまで上がった。さらにスライダーを徹底して究め、「人差し指で弾く」感覚を掴んだことで、切れ味が増した。春の大会で実戦経験を積んで自信を深め、課題であった制球も安定するようになり、最近の練習試合では四死球の数も目に見えて減っている。カウントをとるカーブを含めた変化球の精度を上げ、テンポよく投げることを課題に最後の調整を続ける。

郡山主将「秋春とも負けた試合の後、勝つために必要なことを皆で話し合い、課題を共有してきた。夏はその成果を出したい」

打線の中軸を担う2年生のうち松永は春の大会以降に頭角を現してきた選手で、シュアな打撃が持ち味。肥後には一発の魅力があり「アウトになってもいいから打球を上げることを意識させている」(吉田監督)と将来を見据えた指導をしている。ただ、打線のポイントとして挙げるのは前チームからの主力で試合経験の豊富な縄田、福田、河村ら3年生。「チャンスで打ってもらわないといけない選手たち」と期待を寄せる。

夏に向けて吉田監督は「主力選手がケガなく、ベストの状態で大会を迎えることができれば何とか勝負になる」と慎重だが、それも夏の厳しさが身に染みて知るからこそ。「万全の状態で大会を迎えても誰かが調子を落としたり、故障したりするもの。そうした状態の時に、チーム全体で乗り超えて行けるか。調子のよい選手を見極めながら、総力戦でのぞみたい」。

2年分の悔し涙を歓喜のそれに換えた先に、11年ぶりの甲子園が待っている。

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