大逆転を生む勝利への執念
投手力充実で2年ぶりの栄冠へ
【西日本短大附】(八女市)
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秋春とも九州大会に出場
強打で2年ぶりの優勝狙う
昨秋は福岡大会で優勝、今春は準優勝でいずれも九州大会に出場した。九州大会でも秋は1勝、春は2勝。センバツは逃したが実績は県下ナンバーワンで、優勝候補の最右翼として夏を迎える。
持ち味はその打力だ。秋は7試合で合計48点、春は63点を叩き出した。小柄ながら攻守に抜群のセンスを見せる江口翔人(3年)を切り込み隊長に、長打力のある2番・轟木琉惺(3年)が続き、村上太一、高峰駿輝と2年生の大型打者が3、4番に座る。昨夏8強の前チームで4番だった多久将太(3年)、左の古賀海凪(2年)と一発のある打者が並び、深町竜佑(3年)、荒木悠吾(2年)と勝負強い2人へと続く打線は切れ目がない。秋は久留米商や福岡大大濠、春は筑陽学園、九州国際大付などの強豪相手に打ち勝ってきた。
投手陣は春の福岡大会までエース中塚康太朗(3年)がほぼ一人で投げてきた。直球・変化球と制球力にすぐれ、走者を出してからも簡単に崩れない投球を見せる。春の福岡大会後は足の捻挫で登板を回避していた村上がマウンドに立てるようになった。長身を生かした角度ある直球を武器に、九州大会初戦でセンバツ出場校の長崎日大を完封。高い潜在能力を示し、夏は中塚の負担も軽減されそうだ。
強打のチームにありがちな脆さもなく、秋は久留米商、春は九州国際大付に逆転サヨナラ勝ち。特に九州国際大付戦は9回裏に5点差をひっくり返す驚異的な粘りを見せるなど、リードを許しても簡単に諦めない精神的な逞しさもある。
春の大会では失策から失点につながるなど守備にやや不安を残すが、村上が使える目途が立ったのは大きく、2年ぶりとなる優勝のチャンスが巡って来た。
ベンチ入りメンバーは
全部員の投票で決定
八女市にある学校敷地内には専用野球場と室内練習場を備え、練習環境は充実している。平日の練習は午後4時すぎから8時前まで。81人の部員を6班に分け、グラウンドでの打撃・守備練習、室内練習場での筋トレなどフィジカルトレーニング、敷地内でのランニングを交互に行う。各大会前はベンチ入りメンバーを中心とした練習になるが、そのメンバーは全部員による投票で決められる。今夏のベンチ入り20人も6月5日に決まり、最後の調整に入っている。
土日は4チームを編成し、学校内外でそれぞれ練習試合を行う。強豪校だけに練習試合の申し込みも多いが「相手がどこだろうと断ることはない」(西村慎太郎監督)ため、すでに予定は一年先まで埋まっている。
近年は、土壇場での劇的な逆転勝ちが多いのも特徴だ。優勝した2年前の準決勝・飯塚戦、昨夏初戦の純真戦、今春の九州国際大付戦と、その例は枚挙にいとまがない。
西村監督は「これまでは私が〝全国優勝した西短〟を背負い過ぎていたのかもしれない。そしてそれを選手たちにも背負わせていたのかも」と語る。2019(令和元)年夏に一度監督を離れ、2021(令和3)年1月に復帰した時、「勝ち負けよりも高校野球に携わることができるワクワク感の方が大きかった」という。そうした思いが選手たちにも伝播しているのか「ここで打てなかったらどうしよう」ではなく、「必ず打ってやる」とプラス思考で打席に立てる選手が増えてきた。
「逆転の西短」を生み出している背景には、そうした監督自身の心境の変化が影響しているのかもしれない。
江口主将を中心に固い結束で
主力の2年生も力を発揮
レギュラーのうち4人を2年生が占める若いチームだが、同じようなチームが過去にもあった。4、5番と捕手を2年生が務めた2016(平成28)年のチームで、この時の3年生は「いかに2年生に伸び伸びとプレーさせるか」を考え、2年生たちは「支えてくれる先輩たちのために結果を残す」と必死の努力を続けたという。秋は南部予選で敗れ、春先は練習試合で連敗続きだったが春の福岡大会を制し、九州大会では劇的な勝利の連続で準優勝。「負けていても最後まで決して諦めず、技量以外の何かが作用して勝利につながる。そんな高校野球の魅力を改めて感じさせてもらえた」と振り帰る。
今年のチームも力のある2年生が活躍しやすい環境を3年生が整え、勝ち続けている。その中心になっているのが主将の江口だ。1年生の夏にレギュラーとして甲子園の土を踏み、以来主力として活躍してきたが、そうした実績におごることなく部全体に目を配り、活躍の場の少ない部員にも声を掛ける。その姿勢がチームに一体感を作り出し、「チームのために」と考える2年生が実力を発揮している。
「秋、春とも九州大会に出場できたが、夏は全国まで続くもっと高く険しい山に登らなければならない。5、6月はそのための準備期間だと選手たちに言い聞かせている」と西村監督。秋、春以上の高みを目指すチームに、慢心はない。
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