【観戦記】西短大附11-10九国大付(春季大会準々決勝)




【西短大附11-10九国大付(春季大会準々決勝)】

9回裏西短大附無死満塁 高峰が左前にサヨナラ打を放つ

九国大付の投手交代を機に反撃に転じた西短大附が、9回に5点差をひっくり返して逆転サヨナラ勝ちを収めた。

西短大附は9回、多久がライト右への二塁打で出塁し、代打吉田死球のあと深町の左前打でまず1点。なおも無死一、二塁から荒木の遊強襲安打で吉田が還り7-10。続く代打井上の右前打で無死満塁とし、江口の三ゴロが本塁悪送球を招き2者が還って1点差に迫った。轟木申告敬遠で無死満塁から村上の中前打で同点、さらに高峰が左前にサヨナラ打を放ち一気に勝負を決めた。

序盤から優位に試合を運んだのは九国大付。初回山口が左前打で出ると捕手の一塁牽制悪送球で二進。秀嶋の遊内野安打のあと、浅嶋の犠打と佐倉の四球で一死満塁とし、白井の走者一掃の右中間三塁打、さらに宮崎の中犠飛でこの回4点を先制した。3回は二死から佐倉中前打、白井・宮崎の連続四球で二死満塁から、太田の押し出し死球で1点を加えた。4回は田端が左前打で出塁。山口、秀嶋は共に右飛に倒れたが、浅嶋の遊ゴロで一塁送球が乱れて二死一、三塁。佐倉の左前打で田端が還り、レフトが打球を後逸する間に一塁から浅嶋もホームを衝いて2点を加え、7-1とリードを広げた。

1回表九国大付一死満塁 白井が右中間に先制の三塁打を放つ

7回は一死から佐倉四球のあと白井が左翼線を破る安打を放ち、クッションボールがフェンス際を転々とする間に一塁から佐倉が生還(記録は三塁打)。続く宮崎も右前打を放って2点を追加した。9回は佐倉のライト左への安打のあと(代走藤木)、白井がセンター右に落として無死一、三塁とし、宮崎のニゴロが4-6-3の併殺打となる間に藤木が還って1点を加えた。

西短大附は2回二死後、深町が死球で出ると、荒木の左前打をレフトが後逸する間に深町が生還した。5回は一死から中塚が左前打。江口も右前打で続き、轟木中飛のあと村上の右前打で中塚が生還した。6回は先頭の多久が左中間二塁打を放ち、古賀三振、深町死球のあと荒木がレフト前に落として3-7とした。

8回は一死後、深町が左翼線二塁打で出塁し、荒木のニゴロで三進。ここで登板した九国大付2番手の木塚から3者連続で四球を選びまず1点。代わった徳永から村上の三ゴロ失でさらに1点を返した。最大6点差をつけられたが小刻みに得点を返し、九国大付の継投の隙を突いて土壇場で一気に試合をひっくり返した。

第152回九州地区高校野球福岡大会準々決勝(2023年4月2日・日/北九州市民球場)
        一二三四五六七八九   計HE
  九国大付  401200201 1013

  西短大附  010011026 1115
 九国大付  打安点  西短大附  打安点 ◆投手成績
(中)山 口 510 (遊)江 口 520 九国付 回 安球振責
(左)秀 嶋 520 (二)轟 木 200 田端  7.2 9373
投 木 塚 000 (中)村 上 632 木塚  0.0 0301
投 徳 永 000 (三)高 峰 611 徳永  0.1 4104

投 池 田 000 (捕)多 久 520 池田  0.0 2100
(三)浅 嶋 400 (一)古 賀 400 
(一)佐 倉 331 打 吉 田 000 西短附 回 安球振責
走右 藤木 000 (右)深 町 321 中塚    9 13518
(二)白 井 434 (左)荒 木 532
(遊)宮 﨑 322 (投)中 塚 310 試合時間
(右一)太田 401 打 井 上 110 09:54~12:21
(捕)下 川 400 走 飯 田 000
(投左)田端 420
振球犠盗残 打安点  振球犠盗残 打安点
15206 36138  780014   4015
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※公式記録ではありません

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九国大付の先発・田端

流れが一旦変わると終盤の6点差も簡単にひっくり返る。そんな高校野球の怖さと醍醐味を、まざまざと見せつけられた試合だった。

8回表を終えて9-3。九国大付の2年生左腕・田端が、西短大附の強力打線を相手に8安打を許しながら3失点に抑える健闘を見せていた。田端は130キロ前後の直球(この日最速135キロ)を見せ球に、左打者には外に逃げるスライダー、右打者にはチェンジアップや90キロ台のカーブなどを軸とした投球で、4回を除いて毎回のように走者を出しながらも最少失点に抑えてきた。中でも4番高峰に対しては4打数無安打。三振を2つ奪い、完全にタイミングを狂わせてきた。

8回裏の西短大附は一死から深町が左翼線二塁打、荒木のニゴロで二死三塁。ここで九国大付ベンチは田端をレフトにまわし、長身右腕の木塚をマウンドに送り込んだ。この時点で田端の投球数は124球。特別多くはなかったが、2年生ということで無理をさせなかったのか。あるいは西短打線に捕らえられてきたとの判断か。いずれにしても、結果的にこの交代が大逆転劇の序曲となった。木塚は最速141キロの直球で押してきたが制球が定まらず3者連続四球。押し出しで1点を献上して降板し、3番手徳永がマウンドへ。続く村上の一打はサード右へのゴロ、これを浅嶋がバウンドを合わせられずはじいてしまい、さらに1点が西短大附に転がり込み5-9。続く高峰は右直に倒れたが当たりはよく、徐々に流れが西短大附に傾きつつあった。

九国大付・池田

9回表、九国大付は佐倉と白井の連打で無死一、三塁。西短大附はもう1点もやれない場面だったが、内野陣は1点やむなしの中間守備。1失点でしのげば、まだチャンスはあると踏んでの決断だったか。結果的に宮崎をニゴロ併殺打に打ち取り1点で切り抜け、5点を追って9回裏の攻撃が始まった。

マウンドは引き続き徳永。130キロ(同132キロ)前後の直球にスライダーを交える右腕で制球もよさそうな投手。しかし西短大附は8回の勢いそのままに、多久にライト右へ二塁打。代打吉田の死球のあと深町の左前打で1点を返すと、荒木の痛烈な当たりはショートを強襲するヒットとなり7-10。なおも無死一、二塁の場面で西短ベンチは、これまでどれだけ打たれても代えなかった中塚に代打・井上を送り込む。期待を一身に背負った井上は追い込まれながらもライト前にはじき返した。これで無死満塁。

ここで九国大付は徳永をあきらめ、池田を送り込む。池田は昨夏の福岡大会で体調不良のエース香西に代わって主戦を務め優勝に貢献、甲子園のマウンドも経験した右腕。本来ならエースナンバーを背負ってしかるべき存在だ。その池田が17番という重い番号を背に、絶体絶命のマウンドに上がる。気迫十分で向かっていった池田は江口を三ゴロに打ち取ったが、併殺をあせったかサード浅嶋の本塁送球が高くなり、2者が生還して遂に1点差となった。

一塁側ベンチ、スタンドを中心とした異様な盛り上がりの中で、九国大付ベンチは申告敬遠の指示を出し満塁策をとったが、この時点ですでに勝負はついていたのかもしれない。村上が中前に同点打を運び、高峰が三遊間を破るサヨナラ打を放つまで要した球数は、わずか3球だった。

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西短大附・中塚

九国大付は初戦の東筑戦を欠場した佐倉が4番に座った。第一打席は一死二、三塁でストレートの四球。2打席目は詰まった当たりのセカンド左へのゴロが、セカンドがつまずいて反応できずセンターに抜ける幸運な安打。3打席目は外角のカーブをうまくバットに乗せて左翼線に運ぶ技ありの一打。4打席目は直球を叩いてライトフェンスを直撃、当たりが良すぎて単打となった。

この日の西短バッテリーの佐倉への投球は外角中心。他校も無理には勝負をせず、佐倉が一塁に歩くケースが増えるかもしれない。その場合、5番白井の役割が大きくなるが、この日は3安打4打点の活躍。東筑戦でも2安打3打点を記録している。前チームから出場している選手だが、さらに力をつけた印象で佐倉と共に九国大付打線の得点源となりそうだ。

西短大附の中塚は大きなカーブでカウントを稼ぎ、内外角いっぱいを直球で攻めながらチェンジアップで打ち取っていくのが持ち味だが、この投球ができるようになったのは中盤以降。序盤は慎重になりすぎたか、コーナーを衝いた球が外れることが多く、苦しい投球が続いた。左打者の外角低めいっぱいにカーブが決まるようになってからは、投球にも余裕を感じた。この球が決まるか否かが、中塚の調子を測るバロメーターと言えそうだ。

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