第95回記念選抜高校野球大会(3月18日開幕、阪神甲子園球場)の選考委員会で出場36校(一般選考32校、21世紀枠3校、神宮大会枠1校)が発表されてから2週間。九州地区からは、昨秋九州大会のベスト4(沖縄尚学、長崎日大、大分商、海星)が順当に選ばれ、準々決勝で敗れた西日本短大附と東福岡のセンバツ出場はなりませんでした。
福岡県勢がセンバツ出場を逃すのは2020年以来、3年ぶりのこと。ちなみに3年前は、新型コロナの影響で選抜大会そのものが中止となった年です。
21世紀枠の九州地区推薦校・高鍋(宮崎)の選出もならず、九州地区から3年連続となる21世紀枠の獲得はなりませんでした。
今回は、その21世紀枠についての雑感をアップしたいと思います。
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21世紀枠は2001年にスタートした制度ですが、福岡から選出されたことはありません。これまでに直方、門司学園、八幡南の3校が九州地区推薦校に選ばれましたが、最終選考で涙をのみました。一方で北海道・福島・島根・徳島からは過去に4校、宮城・岩手・和歌山からは3校が選ばれています。特に多いのが東北(14校)と四国(10校)。選出される地域に偏りがあることを以前から感じていたのですが、今回詳しく調べてみました。
【21世紀枠 地区および都道府県別出場回数】
地区 | 21世紀枠選出回数 |
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4回 | 3回 | 2回 | 1回 | ||
北海道 | 4 | ||||
東北 | 14 | 福島 | 岩手、宮城 | 秋田 | 山形、青森 |
関東・東京 | 6 | 栃木 | 東京、茨城、山梨、千葉 | ||
北信越 | 5 | 新潟 | 福井、富山、石川 | ||
東海 | 4 | 愛知 | 岐阜、静岡 | ||
関西 | 8 | 和歌山、兵庫 | 滋賀 | ||
中国 | 5 | 島根 | 山口 | ||
四国 | 10 | 徳島 | 高知、愛媛、香川 | ||
九州 | 8 | 沖縄、大分 | 鹿児島、佐賀、熊本、宮崎 |
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一般枠でセンバツ出場を勝ち取るには事実上、秋の地区大会に出場する必要があるわけですが、福岡から九州大会に出場する難しさは全国屈指です。加盟138校に対して与えられる九州大会出場枠は「2」で競争率は69倍。全国では神奈川、千葉、埼玉に次ぐ「狭き門」となっています。ちなみに競争率がいちばん低いのは鳥取県の8倍(加盟校24校に対して中国大会出場3校)。「県大会→地区大会の競争率」の高いトップ10をまとめたのが【表1】です。
【表1】府県大会→地区大会の競争率が高いトップ10
府県名 | 加盟校数 | 地区大会出場枠 | 競争率 |
神奈川 | 190 | 2 | 95.0 |
千葉 | 171 | 2 | 85.5 |
埼玉 | 163 | 2 | 81.5 |
福岡 | 138 | 2 | 69.0 |
愛知 | 189 | 3 | 63.0 |
大阪 | 185 | 3 | 61.7 |
兵庫 | 158 | 3 | 52.7 |
茨城 | 104 | 2 | 52.0 |
京都 | 76 | 2 | 38.0 |
鹿児島 | 76 | 2 | 38.0 |
※関東、北信越、近畿、中国大会は自県開催時や隔年での増枠があるが、それらは考慮せず通常の出場枠で計算
※加盟校数は令和4年度・日本高校野球連盟資料より
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次に、地区大会→センバツの競争率も【表2】にまとめてみました(単独開催の北海道、東京は除く)。近畿大会は16校に対してセンバツ6枠が与えられるため競争率は2.7と低く、逆に東北大会では18校で2枠を争うため競争率は9倍と高くなっています。16校で4枠を争う九州大会の競争率は4倍で、比較的低い数字になっています。つまり福岡のチームにとって「九州大会出場の難しさは全国屈指」である一方、「九州大会に出場できれば、センバツ切符は他地域より取りやすい」と言えます。
【表2】各地区大会→センバツの競争率
地区大会 | 出場数 | センバツ一般枠 | 競争率 |
東北大会 | 18 | 2 | 9.0 |
関東大会 | 15 | 4.5 | 3.3 |
東海大会 | 12 | 2 | 6.0 |
北信越大会 | 16 | 2 | 8.0 |
近畿大会 | 16 | 6 | 2.7 |
中国大会 | 16 | 2.5 | 6.4 |
四国大会 | 12 | 2.5 | 4.8 |
九州大会 | 16 | 4 | 4.0 |
合計 | 141 | 28 | 5.0 |
※関東は4枠で残り1枠を東京と争う
※中国、四国は各2枠で残り1枠を両地区で争う
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そして「県大会→地区大会の競争率」と「地区大会→センバツの競争率」を掛け合わせて「県大会→センバツの競争率」を算出し、高い順に並べたのが【表3】です。競争率の高い愛知や神奈川、埼玉はこの10年以内にセンバツ優勝校を輩出しており(東邦、東海大相模、浦和学院)、厳しい競争を勝ち上がってきたチームは全国でも活躍できることを示しています。福岡も優勝こそありませんが、過去5大会で5校がベスト8に進出(福岡大大濠が2度、東海大福岡、筑陽学園、九国大付)するなど好成績を残しています。
【表3】府県大会→センバツの競争率
県名 | 県大会→地区大会の競争率 | 地区大会→センバツの競争率 | 合計 | 21世紀枠選出回数 |
愛知 | 63.0 | 6.0 | 378.0 | 2回 |
神奈川 | 95.0 | 3.3 | 316.4 | 0回 |
千葉 | 85.5 | 3.3 | 284.7 | 1回 |
福岡 | 69.0 | 4.0 | 276.0 | 0回 |
埼玉 | 81.5 | 3.3 | 271.4 | 0回 |
長野 | 28.7 | 8.0 | 229.3 | 0回 |
新潟 | 28.0 | 8.0 | 224.0 | 2回 |
静岡 | 36.3 | 6.0 | 218.0 | 1回 |
宮城 | 24.0 | 9.0 | 216.0 | 3回 |
福島 | 23.7 | 9.0 | 213.0 | 4回 |
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ここで話は21世紀枠に戻ります。センバツへの道が険しい神奈川、福岡、埼玉、長野などは21世紀枠での出場がゼロ。競争率全国2位という激戦区の神奈川からは関東地区推薦校にさえ選ばれたことがなく、埼玉もわずか1回(2016年の上尾)のみ。一方で、これまで4校も21世紀枠選出校を輩出している島根は競争率でいえば37位、徳島に至っては47位と最下位です。3回選ばれている和歌山も44位。こうした競争率の低い地域からは何度も選出され、センバツへの道が険しい地域から全く選出がないのは、やはり少し偏っている感じを受けます。
センバツで好成績を残している県(愛知、神奈川、埼玉、大阪など)ほど21世紀枠で選ばれにくくなっている、という見方もできます。大阪桐蔭や履正社など全国区の強豪がひしめく大阪も21世紀枠はおろか、関西地区候補校に選出されたのも一度だけ(2019年の八尾)。選考委員の頭の中に「センバツで好成績を残している地域=甲子園に頻繁に出ている地域」というイメージが強く、「頻繁に甲子園に出ている地域から21世紀枠を選ぶ必要がない」という無意識のバイアスがかかっているのかもしれません。確かに「頻繁に甲子園に出ている地域」には違いありませんが、それは高い競争率を勝ち抜いてきた結果であり、その地域のチームにとって甲子園への道はとてつもなく険しいものなのです。
さらにいえば地区推薦校も「九州」「関東・東京」では8都県から1校、「四国」「東海」ではその半分の4県から1校が選ばれるため、九州や関東の各県21世紀枠推薦校が地区推薦校に選ばれる確率は、四国や東海の各県のチームの2分の1ということになり、ここにも福岡が21世紀枠に選ばれにくい要因があります。
「21世紀枠とは〝高校野球の模範的な姿を実践している学校〟を選ぶもので、競争率の高い地域のチームを救済するものではない」という指摘があるかもしれません。であれば21世紀枠を現在の3枠から2枠に縮小し、もう1枠を競争率の高い県に割り振る、としてはどうでしょう。夏の大会は神奈川で190校から1校、福岡でも138校から1校と厳しい戦いが待ち受けます。選抜大会の意義の一つが「結果だけにこだわらず多角的な視点から甲子園出場のチャンスを与える」ものであるならば、激戦区のチームに希望を与える制度があってもよいと思います。
現状の制度では、福岡から「21世紀枠」が選出されるイメージが全く湧きません。
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