秋の九州高校野球史に残る九国大付の猛打~ ’21秋季九州大会回顧




秋の九州大会は九州国際大付の優勝で、幕を閉じました。4試合で43点を奪ったその強打がどれほどのものであったのか、過去の秋の九州大会の記録をひも解いて検証してみました。

まず、総得点「43」は2019年の明豊(大分)と並ぶタイ記録。打点「42」は過去最高記録となります。2桁得点を3試合で記録したのは1994(平成6)年の熊本工(12・10・5・11)以来、二度目のこと。(秋の)九州の高校野球史に残る猛打であったことがうかがえます。
もちろん秋の九州大会に出場した福岡県のチームとしても、総得点・打点とも過去最高となりました。ちなみに九州国際大付が三好(現広島)―高城(現DeNA)のバッテリーで2011年のセンバツで準優勝した時のチームは、前年秋の九州大会(準優勝)で22得点でした。

九州国際大付の主要打者の打撃成績について、九州大会4試合と観戦した福岡大会の2試合(決勝、準々決勝)の計6試合についてまとめました(下図)。

春の九州大会で準優勝、夏の福岡大会8強だった前チームでは中上、野田、黒田の2年生3人が2~4番に並び、主力として活躍していました。夏の大会では野田の.474をはじめ、黒田が.444、中上も.353と高打率を記録。この3人は秋の大会6試合でもそれぞれ5割以上の打率を残しており、新チームでも打線の中核を成しています。

九国大付・黒田

さらに前チームで4番を打っていた黒田が、1番に入ったことで得点力が大きく伸びました。打率(.524)もさることながら、出塁率は.677と7割に近く、長打力もあるため、いきなり得点機をつくることもできます。象徴的だったのが九州大会準々決勝の明豊戦の初回。黒田が二塁打を放つと中上が送り、大島の犠飛であっさりと先制。試合の主導権を握りました。

黒田の後を打つ中上も打率、出塁率とも5割を超える数字を残していますが、犠打数6も光ります。6試合で犠打6ですから、1試合に一つは犠打を決めていることになり、特に序盤における確実な得点に貢献しています。

そして黒田に代わって4番に入ったのが1年生の佐倉。確実性は黒田に譲りますがそのパワーは魅力的で、勝負強い野田が5番に控えていることで、結果を恐れず思い切りのよいスイングができている印象を受けます。
6番白井、7番毛利は上位打線に比べると数字はやや落ちるものの、白井は九州大会決勝の大島(鹿児島)戦で、毛利も福岡大会決勝で本塁打を放つなど、力のある打者が続きます。

下位打線では8番香西がキーマン。投手ながら打率は4割6分2厘、出塁率も5割を超えており攻撃の起点となっています。9番尾崎が送って強打者が並ぶ上位につなげるのが、九州国際大付のもう一つの得点パターンと言えます。

打線のリズムをつくっているという点で、安定した投手陣の存在も見逃せません。左腕エースの香西は九州大会4試合、福岡大会1試合の計5試合で25回3分の1を投げて四死球はわずかに5個。野田も20回を投げて死球が一つあるだけ。守りも堅く九州大会では無失策で、福岡大会の2試合を加えても1失策。テンポのよい守りも、強打を生み出す一因となっていそうです。

20日(土)から始まる明治神宮大会でも、その強打が全国レベルでどこまで通用するか注目されます。

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