【観戦記】東筑紫学園9-7折尾愛真(北九州市長杯2回戦)




【東筑紫学園9-7折尾愛真(北九州市長杯2回戦)】

11回表東筑紫学園二死二、三塁、輪竹が右越えに決勝の二塁打を放つ

 両校あわせて20安打・16四死球を記録し、試合時間が3時間30分を超えた一戦は、延長11回に勝ち越した東筑紫学園に軍配が上がった。

 同点で迎えた11回表、東筑紫学園は一死後、7番池田が右中間三塁打で出ると一松が四球を選び、二盗を決めて一死二、三塁。松井は三振に倒れたが、1番輪竹が右越え二塁打を放って2者が還り、これが決勝点となった。
 先手を取ったのも東筑紫学園。初回先頭の輪竹が左前打で出ると二盗を決め、小柳三振の時に三盗も決めて一死三塁。伊藤は三振に倒れたが、打者藤田の時に暴投で先制のホームを踏んだ。2回は先頭の5番野田が右越え本塁打。富田も左前打で続き、池田が送った後、一松の左翼線二塁打でこの回2点を追加した。逆転された直後の4回は野田の中前打と盗塁で無死二塁。富田左飛のあと池田のニゴロで三進し、打者一松の時に捕手の三塁牽制の隙を突いて三走の野田が本塁に突入、生還した。
 2点を追う7回は二死から9番坂本が左翼ポールに当たる本塁打で1点差に迫り、続く8回は二死から藤田が四球を選び、野田の遊ゴロで一塁送球が逸れる間に藤田が一気に生還。続く富田の初球が暴投となり、野田が逆転のホームを踏んだ。その裏同点に追いつかれたが、救援した3番手松井が得点を与えず、11回の勝ち越し点につなげた。

8回裏折尾愛真一死満塁、近藤が左犠飛を放つ

 3点を追う折尾愛真は2回、5番謝名堂が右前打で出ると続く近藤のセンター左への安打で一気に三進、近藤が一・二塁間で挟殺される間に、本塁に突入した謝名堂が捕手の走塁妨害で生還、1点を返した。3回は9番新井が右中間二塁打。栗本四球、澤田死球で無死満塁とし、一死後、4番大坪の時に暴投で新井が生還。大坪四球で再び満塁とし、謝名堂の右前打で2点目。近藤は三ゴロ(本塁封殺)に倒れたが、7番松岡が押し出し四球を選んで逆転に成功した。
 同点に追いつかれた直後の4回裏は一死から1番栗本が右前打で出塁すると、澤田の右中間二塁打で一気に生還して再び勝ち越し。さらに重富四球で一死一、二塁とし、ここで登板した2番手坂本から大坪は中飛に倒れたが、澤田がタッチアップから三進。続く謝名堂が詰まりながらも左前に落とし、この回2点をあげた。8回裏は一死後、重富が右前打で出ると大坪の時にヒットエンドラン、打球は三ゴロとなったが二塁送球が間に合わず(記録は不明。本サイトでは野選と判断)、続く謝名堂の一ゴロが失策を誘い一死満塁。ここで近藤が左犠飛を打ち上げて再び同点に追いついた。
 さらに松岡が四球で二死満塁としたが、後続が凡退。9回裏も無死二塁のサヨナラ機をつくったが決定打が出ず、東筑紫学園を上回る11安打11四死球を得ながらも16残塁に泣いた。

第49回北九州市長杯争奪高校野球大会2回戦 (2021年4月24日・土/北九州市民球場)
        一二三四五六七八九十士 計 HE
 東筑紫学 12010012002 9092

 折尾愛真 01320001000 7111
 東筑紫学園 打安点  折尾愛真  打安点 ◆投手成績
(中)輪 竹 522 (二)栗 本 610 東筑紫 回 安球振失
 中 大 野 000 (左)澤 田 511 吉本  3.1 6656
(三)小 柳 500 (右一)重富 410 坂本  4.1 4310
(一)伊 藤 300 (中)大 坪 500 松井  3.1 1350

 打 渡 辺 100 (遊)謝名堂 532 
 一 松本翔 100 (捕)近 藤 511 折愛真 回 安球振失
 左 松本怜 000 (三)松 岡 411 稲川  5 5110
(捕)藤 田 400 (投)稲 川 200 田端  6 4483
(右)野 田 521  打 太 農 000 
(二)富 田 510  投 田 端 200 試合時間
(左一)池田 310  打 鷹 尾 000 8:57~12:30         
(遊)一 松 421 (三)新 井 430
(投)吉 本 100  走右 藤中 000
 投 坂 本 211  打 山 根 100
 投 松 井 200
振球犠盗残  打安点  振球犠盗残 打安点
185165  4195  11112016 4311
※公式記録ではありません
折尾愛真の先発・稲川

—————-
 安打数は折尾愛真11、東筑紫学園9。得た四死球は折尾愛真が11、東筑紫学園が5。いずれも折尾愛真が上回った。ただ、盗塁数は折尾愛真のゼロに対し、東筑紫学園は6。残塁数は折尾愛真16に対し、東筑紫学園が5。この2つの数字が勝利の行方を決定づけた。

 4回を終えたところでは折尾愛真が流れを掴んだかに見えた。3点を先行されながらも3回に2安打に4つの四死球を得て逆転。4回には3安打を集めて2点を奪って突き放す。ただ4回途中から登板した2番手の坂本を攻めあぐねた。5回一死二、三塁、6回二死二塁、7回二死二塁…。再三の好機にあと一本が出ない。チャンスを逃し続けるうちに7回に2番手の田端が坂本に1発を浴びて1点差とされ、8回は二死から四球、失策、暴投と無安打で逆転を許す。8回裏に今度は相手のミスに付け込んで追いつくが、続く二死満塁の勝ち越し機を逃し、9回には無死二塁とサヨナラの好機を得ながらも得点できない。11回、辛抱強く投げてきた田端が力尽きた。

東筑紫学園の先発・吉本

 対照的に東筑紫学園は効率よく得点を重ねた。初回はヒットで出た輪竹が二盗、三盗を決めると暴投で生還。2回は野田の一発のあと、富田が左前打で続き、池田が初球で犠打を決め、一松も初球を左翼線へ。わずか7球で2点を挙げた。4回は中前打で出た野田が二盗と内野ゴロで三進。打者一松の時、投球後のリードが大きいとみた捕手からの牽制に躊躇なく本塁へ突入、捕手からの三塁送球がやや逸れたことも幸いし、生還した。
 7回の坂本の左翼ポール直撃の一発は、打った本人も驚いた様子を見せた一打。直前に無死一塁が併殺で二死となり、9番の投手ということで田端も警戒が薄れたか。8回も簡単に二死となったあと、四球で出た藤田が野田の遊ゴロ悪送球で一気に生還。三塁まで進んだ野田も、低めの変化球を捕手が横にはじいたのを見逃さず、思い切ってスタートを切った。最後は、輪竹のライト頭上への当たりが風にも流されて伸び、試合を決めた。
 東筑紫学園もバント失敗や失策、投手陣の11与四死球、18三振を奪われるなど課題も残ったが、積極的な走塁で得点に結びつけていった。

東筑紫学園・坂本

 投手は両校あわせて5人が登板、それぞれ持ち味を発揮した。折尾愛真の先発稲川は堂々たる体格の大型右腕。力みのないフォームから直球が低めに決まる。2回こそ3安打で2点を失ったが、3回以降はスライダーを中心にした投球で三振を重ね、5回までに10個の三振を奪った。
 6回からは左腕田端にスイッチ。小柄ながら大きなフォームから縦に鋭く落ちてくるスライダー、チェンジアップを織り交ぜて投げ込んでくる。変化球をうまく使って三振を奪い、その数は6イニングスで8個にのぼった。5点は失ったが味方の失策や不運な当たりもあり、失点ほど打ち込まれたイメージはなかった。

折尾愛真・田端

 東筑紫学園は吉本が先発。右上手からの力のある直球に、直球と同じ軌道からストンと落ちるスライダーが武器。3回は直球が高めに浮いて4つの四死球に暴投もからんで逆転を許すなど乱れたが、球自体は悪くなかった。細かな制球力がつけば、攻略は容易ではなさそう。
 4回途中から登板した坂本は、謝名堂を詰まらせながら左前に落とされて1点を失ったものの、以降は粘りの投球で追加点を阻み、流れを引き寄せた。右サイドハンドからの直球に威力があり、内角球で詰まらせるシーンも多く見られた。適度に荒れていたことで、打者も狙い球を絞りづらかったのかもしれない。

東筑紫学園・松井

 8回裏に失策絡みで同点に追いつかれたあたりから、坂本はしきにり足を伸ばす仕草を繰り返すようになり続投を断念、3番手として2年生の松井がマウンドへ。同点でなおも二死一、二塁という場面だったが、ここを抑えると力のある直球で9~11回の3イニングスで5奪三振。特に9回は無死からサヨナラの走者を二塁に背負ったが、ひるむことなく1、2番を連続三振に打ち取ってみせた。

 2回戦ながら両校ともこの試合が今大会初戦ということもあってか、やや大味な試合となったが、力のあるところは随所に見られた。夏に向けての成長が期待される。

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