今日から福岡、筑後地区で熱戦がスタート~がんばれ福岡2020




2019年選手権福岡大会開会式での入場行進

 7月4日(土)、第102回全国高校野球選手権大会福岡大会の代替大会「がんばれ福岡2020」の福岡地区高校野球大会、筑後地区高校野球大会が開幕します。
 新型コロナウイルスの感染拡大がなければ、今日この日は福岡大会の開会式でした。曇り空ではあるものの、北九州市民球場で全出場校の選手たちの堂々たる入場行進が見られたことでしょう。残念ながら今年は開会式だけでなく甲子園への道も閉ざされてしまいましたが、3年生にとって今年最初の、そして最後の大会が紆余曲折の末に何とか開催されることになりました。一般の高校野球ファンの観戦はかなわず、日程・会場非公表のため選手たちがいつどこで試合するのかさえ分かりませんが、遠くから球児たちの健闘を祈りたいと思います。

 例年であれば大会展望や注目選手の紹介を行ってきましたが、今年はそれもできません。そこで記録の意味も込めて、昨年末の時点でまとめた南部地区の注目選手たちを再掲しておきたいと思います(学年および「今年→昨年」などのみ修正)。

【投手】

◆山城 航太郎(福岡大大濠=3年/右
 印象の強さという点では、昨秋一番でした。1年夏からレフトやショートで公式戦に出場し、秋からは中軸に座る好打者ですが、秋の大会初戦・筑陽学園戦の7回にリリーフのマウンドへ上がると、いきなり140キロ台を連発(確認した最速=143キロ/久留米市野球場)直球で押してくるタイプですが、120キロ台のスライダーもキレがあり三振が取れます。福岡大大濠には右の山下、左の深浦、毛利と豊富な投手陣が揃いますが、球威と制球力を兼ね備えた抑え役の出現で、さらに投手陣の層が厚みを増しそうです。

◆野田 壮吾(九産大九州=3年/左
 何といっても昨夏の5回戦・筑陽学園を8回まで無失点に抑えた投球が光ります。一度打者に背を向けるようにして始動し、右足を大きく一塁側に踏み込んで投げる変則気味の左サイドハンドで、直球は110キロ後半ですが、直球・スライダーを内外角のコースいっぱいに集めてきます。ポンポンとストライクを取ってくる中で左打者は外に逃げていく低めのスライダーを打たされ、右打者はクロスファイヤーに詰まる場面が目立ちました。その投球フォーム、投球スタイルと、2015年のセンバツに出場した同校の先輩・岩田投手(現九州産業大)を彷彿とさせます。秋は準々決勝で宗像に0-2で敗れましたが、その投球術は今年も期待できそうです。

◆安徳 駿(久留米商=3年/右
 前チームでも主に救援でたびたび登板していましたが、新チームではエースナンバーを背負い、南部を代表する右本格派の一人に成長しました。130キロ中盤から後半にかけての直球に伸びがあり、スライダー、カーブと緩急を使いながら三振が取れる投手です。秋は準々決勝で八幡南・濵本投手との投げ合いに敗れましたが、後半の5イニングスを投げて5連続を含む8奪三振。先発完投型というより中盤あたりから出てくることが多く、序盤でリードを奪って安徳投手につなぐことが久留米商の勝ちパターンとなりそうです。

◆石橋 辰宣(福岡第一=3年/右
 福岡第一の主戦投手として、秋の福岡大会優勝に貢献しました。サイドハンドながら120キロ台後半の直球に力があり、100キロ台のスライダーとのコンビネーションで打たせていきます。県大会準決勝・決勝は力みもあったか、微妙な制球に苦しんで失点を重ねましたが、延長14回までもつれた準々決勝の九州国際大付戦では2失点完投。敗れはしたものの、九州大会準々決勝の大分商戦も緩急を使って好投しました。余裕のある時には90キロ台のスローカーブを投げることもあり、この球が好調のバロメーターと言えるかもしれません。

◆山下舜平大(福岡大大濠=3年/右
 やや細身ながら長身からの威力ある直球が持ち味です。夏、秋とエースナンバーをつけましたが先発を他の投手に譲ることも多く、まだ発展途上といった印象です。昨春以降、球速は130キロ後半を記録していましたが、秋の大会で140キロ台(確認した最速=144キロ/久留米市野球場)を安定的に出すようになりました。ただ、直球が高めに抜けることも多く、制球力が大きな課題です。昨春の九州大会では2回戦の球磨工戦で8回1失点と好投するなど大きな舞台の経験も十分。制球が安定してくると、さらに上を目指せる投手になりそうです。

◆久場 香徳(福岡第一=3年/左
 秋の大会ではたびたび先発の石橋投手をリリーフ。優勝の立役者の一人です。左上手からの角度ある直球は120キロ台後半ながらキレがあり、これにチェンジアップや100キロ台前半の大きなカーブを使ってきます。準決勝の宗像戦では0-4の3回途中から救援して8回まで追加点を許さず、逆転勝ちを呼び込みました。この試合では7イニングスで3連続を含む9つの三振を奪う一方、四死球も5つ与えるなど、まだまだ力強さと粗さが混在している印象です。直球との緩急差の大きなカーブが安定して決まるようになると、キレのある直球の威力も増してきそうです。

◆水崎 康平(沖学園=2年/右
 昨夏は多くの1年生投手がマウンドに立ちましたが、その中で一人挙げるとすればこの投手でしょうか
。まだ体の線は細いですが、なかなかのスピードボールを投げてきます。縦に落ちてくる変化球もあり、緩急をつけた投球ができます。夏の大会の初戦となる九産大九州戦では大切な先発のマウンドを任されましたが、7回途中まで投げて6失点。6点を奪われた3回は素直にストライクを取りに行きすぎたきらいもあって集中打を浴びてしまいましたが、4~6回は三者凡退に抑えるなど非凡なところを見せました。投球術、打者との駆け引きを身に付け、体ができてくると楽しみな投手です。

◆花田 夢海(大牟田=3年/左
 前チームでもたびたび登板していましたが、エースナンバーを背負うのは秋から。やや上半身に頼ったフォームながら、切れのある直球を投げ込んできます。秋はパート決勝で福岡第一打線に痛打を浴びましたが、この試合ではスライダーが決まらず直球を狙い打たれた感じでした。スライダーの精度を上げるなど武器になる変化球が一つ二つ欲しいところ。そうすることで、威力ある直球が生きてきそうです。

【野手】

◆深浦 幹也(福岡大大濠・外野手=3年/左
 1年夏から主戦投手としてマウンドに立つ一方で、打者としても1年秋から中軸として打線を牽引。「二刀流」として活躍してきました。スイングスピードが速く、一発も秘めるパワーに加えて柔らかさもあり、左打者では県内屈指の強打者と感じています。昨春は観戦した3試合で8打数3安打4打点で1本塁打。九州大会の大分戦でも一発を放ちました。ベスト8まで勝ち上がった夏は14打数2安打と不振でしたが、秋からは4番に。初戦の筑陽学園戦では5打数4安打2打点の活躍でした。この試合では登板がありませんでしたが、これまでのように二刀流を貫くのか、打者として専念するのか、その起用法も注目されます。

◆岸本 暖(福岡第一・捕手=3年/右
 前チームから3番打者として主軸を担っていましたが、新チームでは不動の4番に。パート決勝の大牟田戦で先制の3点本塁打を小郡市野球場の左中間最深部に打ち込み、準決勝の宗像戦でも追撃の狼煙となる2点本塁打を放つなど、ここぞの場面で結果を残して秋季大会の優勝に貢献。県を代表する右のスラッガーに成長しました。捕手としても投手陣を支え、ピンチになるとこまめにマウンドに足を運んで投手を鼓舞し、好投を導きました。32年ぶりの夏の甲子園を目指す同校にあって、攻守の要ともいえる存在です。

◆春木 太陽(大牟田・内野手=3年/左
 昨夏は2年生ながら4番に座り、チームも16強進出を果たしました。上背はそれほどありませんが、いかにもパワーのありそうどっしりとした体格を生かして鋭い打球を放ちます。遠くに飛ばすというよりもライナー性の打球や強い当たりのゴロが多い印象で、芯で捕らえた時の打球の球足の速さには目を見張るものがあります。

◆花田 夢海(大牟田・投手=3年/左
 投手編でも紹介しましたが、打撃でもセンスのあるところを感じさせます。1番センターで出場した昨夏は12打数3安打、打率.250とやや精彩を欠きましたが、観戦した春季大会4回戦の博多戦で5打数4安打、秋季大会パート決勝の福工大城東戦でも4打数2安打。センターから逆方向を中心に柔らかく打ち返しました。打撃の良い投手は例年見られますが、昨年はこの投手の打撃が目に留まりました。

 このほかでは昨夏、4番打者として16打数7安打6打点と活躍した堤廉汰内野手(久留米商=3年/左)の鋭いスイングも目に留まりました。強打で昨秋準優勝を勝ち取った福工大城東では、1年秋から中軸を担い、秋季大会準決勝で八幡南の好投手・濵本から本塁打を放った誉田貴之捕手(3年/右)、同じく1年秋からのレギュラーで昨夏は17打数9安打(.529)と打ちまくった松永陽介内野手(福工大城東=3年/右)などがいます。福岡第一で岸本選手の前を打つ和間竣亮内野手(3年/右)は、外角球を右方向に巧く合わせる技術もあり、つなぐ打撃もできる好打者です。
 


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