西嶋投手の「超スローカーブ」について考える




 1回戦で九州国際大付を下した東海大四が昨日の2回戦で山形中央に敗れました。0-0で延長に入る見応えのある投手戦だったと思います。そして東海大四の西嶋投手といえば、やはり話題になってしまった「超スローカーブ」。元フジテレビアナウンサーの岩佐徹さんが批判めいた発言をしてツイッターが炎上してしまいましたが、賛否両論という割には西嶋投手を支持する声が圧倒的なような気がします。ダルビッシュをはじめプロ野球選手が「立派な投球術」と肯定したことで、もはや批判は許されない雰囲気になっているようにも思います。

 そもそもこの投球、ルール上はまったく問題があるわけではないので、議論(?)になっているのはもはや感情的な部分がほとんどだと思います。だからいくら議論を戦わせても「ルールに抵触していないじゃないか。何の問題があるのか」「ルールのことを言っているのではない。あの舐めた態度が許せん」…というような、理屈と感情の対立になってしまい、いつまで経っても話は並行線でしょう。見方によっては相手打者をおちょくったふうにも取れる球を投げた西嶋投手が許せるかどうか。生理的に受け付けるかどうか。それだけの話だと思います。ただ、相手側(今回の場合は奇しくも九州国際大付になりましたが)からすると、穏やかな気持ちにはなれないでしょう。ましてや負けてしまったわけですから、尚更です。

 あの球を投げる目的はいろいろあるようですが、相手打者の気持ちの乱れ(つまりカッカさせる)を狙うことに有効性を見出しているように見えます。緩急をつけるのが目的であれば、もう少し速い(?)80~90キロ台のスローカーブもあるわけですし(「投球術」としてはよほどこちらの球の方が効果的だと思いました)、この球を投げた相手が3番・古澤選手、4番・清水選手という手ごわい中軸打者であることからも、そのことは想像できます。打者からすると、多少なりともおちょくられた気持ちになるでしょう。感情の乱れもあったかもしれません。しかも西嶋投手をなかなか攻略できずに焦りや苛立ちもある。応援する立場も含めて九州国際大付サイドからすると、カチンとくる。「舐めているのか」と。これは仕方ないことでしょう(まあ、その超スローカーブのあとに古澤選手は痛烈な二塁打を放ち、少しは溜飲を下げたのですが)。

 で、私の感情論からいくと、あの球を投げる目的が「相手の感情の乱れを狙ったもの」であるとするならば(「相手がイライラしていたので、さらにカッカさせる目的もあった」~日刊スポーツ、いくらルールに抵触していないとはいえ、穏やかな気持ちにはなれません。確かに野球にはきれいごとでは済まない、騙し合いという側面もあります。古くは「隠し球」であったり、二塁走者による打者への「コース伝達」(今は禁止されたのですかね)、明徳義塾が星稜・松井に対して行った徹底した「敬遠」など、勝つためにとった「ルールには抵触していない作戦」は過去にも多くありました。だから今回もその一つではないかというと、ちょっと違うように思います。「相手をおちょくって、カッカさせて打ち取る」作戦…。プロならともかく高校野球でそこまでやる必要があるのか…。それも含めて野球、という論もあるかもしれませんが、少なくとも私はそこまでして勝とうとする高校や球児を支持する気持ちにはなれません(ただ、甲子園という舞台でそれをやってのける度胸はプロ向きだとは思います)。

 2試合で投げたわずか5球の超スローカーブばかりが注目されていますが、西嶋投手のキレのある直球と、その外角低めへの絶妙なコントロール、そして鋭いスライダーはいずれも素晴らしいものでした。強打・九州国際大付が敗れたのは、わずか4球の超スローカーブに幻惑されたからではなく、それ以外の149球だったと私は今でも思っています。

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