夏を駆ける’24①【東海大福岡】~センバツの無念は甲子園で晴らす




選手権福岡大会の開幕まで3週間あまり。今年も夏の大会に向けた各校の意気込みを紹介します。

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センバツの無念は
甲子園で晴らす
【東海大福岡】(宗像市)


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大型右腕を強打で支え
春夏連続出場を目指す

昨秋の福岡大会を制し九州大会ではベスト4。7年ぶりにセンバツに出場した。エース佐藤翔斗(3年)は187センチの長身から投げ下ろす140キロ前後の直球に変化球で緩急をつける。三振の山を築くような派手さはないが、大きなカーブを効果的に交えて打たせて取るのが持ち味。走者を背負っても簡単に得点を許さないタフさもある。

東海大福岡・佐藤

打線は一発のある右の山本瑛太、左の藤本塁守(いずれも3年)の後に野上夕輔(2年)井上和翔(3年)ら勝負強い打者が控える。昨秋の県大会準決勝・福岡大大濠戦では9回裏に追いつき、九州大会初戦の九州学院戦では9回表に唐崎敦士(3年)の同点3ランが飛び出すなど土俵際での強さをみせた。敗れはしたがセンバツの宇治山田商戦でも3点差を追いつくなど、一気に畳みかける集中打もある。

不安があるとすれば守備面か。宇治山田商戦では記録に残らないミスも含めて守りが乱れ、接戦を落とす要因となった。新チームになって公式戦をほぼ一人で投げてきた佐藤に次ぐ投手の台頭も待たれる。ここにきて調子を上げているのが2年生の西村壮。昨秋の九州大会では明豊を5回2失点に抑えた右腕は「投げっぷりのよさが魅力」(中村謙三監督)で、140キロ前後の直球とスプリットで三振を狙う。

2番手以下の投手が奮起し、守りのミスなく戦えるかが春夏連続出場のカギを握りそうだ。

部員70人の大所帯
全員で競いながら成長

中村監督は東海大福岡~東海大を経て2009年に同校に赴任。穴見寛、杉山繁俊両監督のもとで指導経験を積み、2021年10月に監督就任

県内でも屈指となる70人の部員を抱え、そのうち32人が寮生活を送る。ナイター設備を備える専用グラウンドで平日は17時頃から練習を開始。6人1班となってフリー打撃、ティー打撃、バント練習などのメニューを消化していく。早く授業が終わる木曜日はシート打撃で実践力をつける。スクールバスで通学する部員の下校にあわせるため、19時15分頃には全体練習を終了。専用グラウンドを持っていることもあり、週末は県内外から練習試合の申し込みが絶えない。

井上和翔主将。「個性豊か」という今年のチームを副主将2人、部門リーダー7人と共にまとめる

1年生は体力づくりが中心だが、2・3年生は全員が同じメニューをこなす。「全員にチャンスを与えて競わせていく」のが中村監督の方針だ。全体の指導は﨑村諭部長と共にあたり、投手陣は2017年センバツ出場時のエースだった安田大将副部長に託す。

8年間コーチとして指導を共にした杉山繁俊前監督は「10安打許しても2点以内に抑える。2安打に抑えられても3点以上とる」野球をめざしてきた。中村監督もその理念をチーム作りの根幹に据える。

部員たちも練習後のミーティングに加え主将、副主将2人と7部門(投手・捕手・内野・外野・打撃・走塁・生活)のリーダーがミーティングを随時おこなって課題を共有。打撃と走塁は週・月ごとの目標を定め、練習に落とし込んでステップアップをはかる。

ベースランニングで汗を流す

走塁に磨きをかけ、
チャレンジャーとして夏へ

センバツ後のチームは精彩を欠いた。「打てない。守れない。送りバントは失敗するし、オープン戦2試合で11失策という日もあった。何をやってもうまくいかず、どん底だった」と中村監督。4月の九州大会では宮崎商に3-16と大敗した。「センバツ出場が決まって多くの取材を受け、注目されてきた。そのフワフワした気持ちがなかなか抜けきれなかった」。

エース佐藤は大会直前に肩を痛めた影響でセンバツでは納得のいく投球ができなかった。「少ない球数で打ち取れるよう制球力を磨いてきた。甲子園の借りは甲子園で返す」

そんな雰囲気が変わるきっかけになったのが、5月中旬の関西遠征で対戦したセンバツ準優勝の報徳学園(兵庫)と試合。ファーストストライクからスイングをかけてくる積極性。コンタクト率の高さ。好投手として注目される間木歩との対戦ではボール一つ分の出し入れができる制球力、打者に対する鋭い洞察力を目の当たりにした。「全国トップレベルの野球に触れ、大きな刺激を受けた」(井上主将)チームはさらなる高みを目指して再びスタートを切った。

中村監督がキーマンの一人に挙げる西村壮。「直球の質と速さにこだわり、三振をとれる投手をめざす」

低反発バットの導入を受け、重視するのが走塁への意識だ。走者二塁の場面では外野手が極端な前進守備を敷くことも増え、単打1本で本塁を狙うのは難しくなっている。無死一塁から二盗と犠打で一死三塁の形をつくることも視野に入れなければならない。センバツ決勝で報徳学園が1点を追う9回二死一塁で盗塁を決めたが「好投手相手の試合では、ああいう走塁ができないと勝てない」と中村監督。失敗を恐れずスタートを切る勇気を身につけるため、練習試合では出塁後3球以内の盗塁に挑んでいる。

センバツで初戦敗退の無念を味わい、その後はどん底を経験してきたチームが共有するのは「チャレンジャーの意識」。「夏は新たな気持ちでのぞみ、もう一度頂点をつかむ」と井上主将の言葉にも力が入る。夏の甲子園初出場を果たし、今年のチームスローガン「前人未到」の完結をめざす。

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