【観戦記】近大福岡1-0小倉工(選手権大会3回戦)




◇近大福岡1-0小倉工(選手権大会3回戦)

中盤以降、両校とも得点圏に再三走者を進めながら決定打を欠きゼロ行進が続いたが、近大福岡が9回に決勝点をあげて逃げ切った。

▼3回戦(11日・光陵GS)〔試合記録
近大福岡 000 000 001=1
小倉工  000 000 000=0
【近】田邊【小】竹山→森田

9回表 近大福岡 一死満塁 岩屋が決勝の左犠飛を放つ

0-0で迎えた9回表、近大福岡は7番上野が中前打で出塁すると、続く中川も追い込まれながら左前打を放って無死一、二塁。門司が送り、坪根四球で一死満塁から2番岩屋がレフトに犠飛を放ち、これが決勝点となった。

6回一死満塁のピンチをしのいだ小倉工はその裏、7番梅山が右前打で出ると二盗を決めて無死二塁とし、森田のバントが捕飛となった後、打者宇土の時に捕逸で二塁から梅山が一気に本塁を突いたが憤死。7回は一死から中前打で出た代打西村が二盗を決めて一死二塁。安田の三ゴロと梅崎四球で二死一、三塁としたが則末が三振。8回は遊内野安打で出た笹川を梅山が送り森田三振のあと、笹山が三盗を決めたものの代打黒田が三振に倒れ、本塁が遠かった。

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近大福岡の2年生エース田邊が序盤から堂々たる投球を見せた。力のある直球を中心に押し、高めのボール気味の釣り球に小倉工の打者のバットが空を切るシーンが相次いだ。4回まで一人の走者も許さず6奪三振。圧巻の投球を見せた。

近大福岡・田邊

昨夏、強打で4強入りした小倉工だがその時の主力が抜け、打線はスケールがひと回り小さくなった印象は否めない。その打力不足を埋めるため新チーム結成以来、足を使った攻撃に活路を見出そうとしているように見えた。昨秋4回戦の北筑戦では敗れたものの4つの盗塁を決めて得点につなげた。その足を絡めた攻撃をこの試合でも中盤以降、存分に見せつけた。

小倉工は5回一死後、則末がチーム初安打を放つと、すかさず盗塁を試みる。この時は失敗したがこれが足攻めの序曲となった。6回は先頭の梅山が右前打で出ると、次打者森田の時に二盗を仕掛けて成功。森田の送りバントが捕飛になったのは痛かったが、続く宇土の時、サイン違いか田邊の投球が門司のキャッチャーマスクを直撃、大きくバックネット方向に跳ねる間に梅山は三塁へ、さらに門司が球の行方を一瞬見失ったとみるや、一気に本塁へ突入。ここは門司が落ち着いてベースカバーの田邊に送球して失点は防いだが、迫力ある走塁を見せた。

6回裏小倉工一死二塁 打者宇土の時に捕逸で二塁走者梅山が一気に本塁を突くがタッチアウト

7回は一死から俊足の西村が代打で登場し、中前打で出塁。田邊もけん制球を送って警戒するが、その警戒網をかいぐくって西村が二盗を決め、安田の詰まった三ゴロで三進し得点をうかがう。8回は笹山が遊内野安打で出ると梅山が送り一死二塁。森田三振のあと、打者井桜の時に意表をつく三盗を敢行、タイミングはアウトだったがうまく回り込んで二死三塁とプレッシャーをかける。

しかしこうした足攻めにも、田邊―門司のバッテリーは落ち着いていた。7回は則末を高めの直球で空振り三振、8回は三盗を決められた直後に代打黒田が告げられる奇策を受けたが、やはり高めの直球で空振り三振を奪い、ピンチをしのいでいく。

一方、小倉工の投手陣も粘り強い投球を続けた。先発の竹山は、アウトステップ気味に踏み出す左のスリークォーター。手元でスッと沈む変化球、さらに右打者の外に逃げていくような直球を使いながら近大福岡打線を6回途中まで4安打に抑えた。

小倉工・竹山

2番手の森田は6回一死一、二塁のピンチでマウンドに上がり、いきなり宮本に左前打を許し一死満塁。しかし田邊を一邪飛、上野を投ゴロに仕留め決定打を許さない。2人への決め球は、手元で少し動いているようにもみえた。

両校とも一歩も譲らないまま迎えた9回、近大福岡は先頭の上野が直球を中前にはじき返し出塁。中川は送りバントが二度ファールとなった後、バスターで左前にうまく流して一、二塁。先制のチャンスが膨らむ。続く門司のバントの構えを見て、小倉工のサード、ファーストが猛烈なチャージをかけてきたが、門司はバットを引いて強打、打球は一塁線を襲うがファール。チャージが緩んだ次の球でバントを決めたかったがファールで追い込まれる。それでも最後はきっちりとスリーバントを決めて1番につないだ。

小倉工・森田

一死二、三塁で迎えた坪根に対し、小倉工バッテリーはスクイズを警戒してウエストしながら歩かせて一死満塁。続く岩屋は打席に入る前、タイミングを確認するように素振りを繰り返す。主審が打席に入るよう促すが、それでも岩屋はスイングをやめない。そうやって納得いくまでスイングのタイミングを確認した上で、ようやく打席に入った。この集中力を見て点が入る予感がしたといえば、結果論だと笑われるだろうか。2球目を叩いただ球はややこすった感じでレフトに上がったが、それでも犠牲フライには十分だった。

9回裏、小倉工も先頭の岩本がフルカウントから6球連続ファールで粘る。しかし田邊も根負けせずにストライクゾーンに投げ続け、遊ゴロに仕留めて勝負は決した。

両校あわせて入った得点は1点だったが、お互いが磨き上げた技術を存分にぶつけあい、しのぎを削りながら並べられた「0」に重みを感じさせる、そんな一戦だった。

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