’22選手権福岡大会を振り返る③~投手編




今年もスポーツ紙などで「プロ注目」とされる投手が多く登場しましたが、投手成績を振り返ってみたいと思います。

投手の成績をはかるデータとしては「自責点」がありますが全投手の自責点が公表されていないため、全ての数値が公表されている「被安打」を採用し、「被安打率」(1試合あたりの被安打)を算出しました。あわせて失点率(1試合当たりの失点)を出しましたが、こちらは味方の失策による失点も含まれている可能性があるため、参考程度の記録になります。

3試合以上で登板し、2試合分に相当する18イニングス以上を投げている投手を対象に、被安打率の低い順に並べてみました。

選手名 学年 校名 試合 回数 被安打 被安打率 失点 失点率
田端 類 折尾愛真 29 17 5.28 1.24
堂満遼太郎 東筑 4 18 11 5.50 2.00
山口 颯斗 育徳館 4 26 18 6.23 10 3.46
斎藤大輝トーマス 自由ケ丘 30 22 6.60 7 2.10
江川 颯太 西短大附 28 28 7.00 13 3.25
木崎 智也 明善 20 16 7.20 9 4.05
森本 光紀 福大大濠 4 21 17 7.29 6 2.57
野副 魁斗 高稜 21 17 7.29 11 4.71
山田 裕太 小倉工 36 30 7.50 15 3.75
池田 悠舞 九国大付 34 29 7.68 2.12
木口 永翔 筑陽学園 7 60 53 7.95 25 3.75
轟  晴斗 九産大九州 3 27 25 8.33 9 3.00
内田 海翔 福工大城東 29 27 8.38 2.79
中島  昴 久留米商 26 25 8.65 11 3.81
宇戸 大空 西南学院 3 35 34 8.74 13 3.34
山内 公介 香住丘 24 24 9.00 3.38
森安  匠 北筑 23 24 9.39 13 5.09
黒田 空零 戸畑 21 22 9.43 12 5.14
白浜 快起 飯塚 33 37 10.09 14 3.82
井手蒼一郎 福島 3 18 26 13.00 10 5.00

※選手名の太字はベスト8以上
※失点率=(失点/投球回数)✕9で計算。ただしイニング途中の交代の場合、観戦などによって確認できる場合を除き、その回の失点は途中降板の投手のものとして計算
※投球回数は「3分の1」は切り捨て、「3分の2」は切り上げ
※赤太字は部門トップ。赤字は上位5人

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折尾愛真・田端
被安打率・失点率とも最少は田端(折尾愛真)

被安打率で最少となったのは折尾愛真の左腕・田端投手の5.28。29イニングスを投げて被安打は17でした。田端投手は失点率も唯一の1点台。5回戦で筑陽学園に0-1で敗れベスト8を前に姿を消しましたが、もう少し見ていたかった投手でした。ついで東筑の堂満投手。普段は捕手ですが今大会は投手としてマウンドに上がる機会も多く、5回戦で福岡大大濠を5安打完封した試合が光りました。18イニングスと投球回数は少なかったものの、失点率も2.00と優秀な結果を残しました。育徳館の山口投手は直球は120キロ台ながら緩急をつけた投球で被安打率6.23。ベスト8入りの原動力となりました。

失点率で田端、堂満の両投手に続くのは自由ケ丘・斎藤、九州国際大付・池田、福岡大大濠・森本の各投手で、いずれも失点率2点台。斎藤投手は飯塚・白浜投手との投手戦に敗れ、森本投手は強打東筑を3点に抑えましたが打線が堂満投手に完封を喫するなど、好投も報われませんでした。

今大会でもっとも多く投げたのは、打者1人以外をのぞいて全て一人で投げ切った筑陽学園・木口投手の60イニングス。前回大会の最多投球回数は真颯館・松本投手の55イニングスでしたが、それを上回りました。登板数は松本投手と同じ7試合でしたが、今大会の筑陽学園はコールド勝ちが1試合だったこともあり、投球回数が伸びる結果となりました。

筑陽学園・木口

前評判の高かった飯塚・白浜投手は被安打率10.09。3回戦の小倉戦で12安打、準決勝の筑陽学園戦でも11安打を浴びるなど苦しい投球が続きました。失点率も3.82と投手としては今一つの結果に終わりましたが、打撃編で見たように打者として活躍を見せました。決勝では九州国際大付を相手に素晴らしい投球を見せた筑陽学園・木口投手も、大会を通してみると被安打率7.95、失点率3.75。準々決勝、準決勝と打線の援護を受けながらの決勝進出でした。

2枚看板を擁した東海大福岡は4回戦で敗れ、右腕の入江投手は10回3分の1、左腕の松山投手はわずか1回3分の2イニングスの登板に終わりました。昨夏活躍した春日の左腕飯田投手も2回戦、3回戦で15回を投げて2失点と好投しましたが、新型コロナという敵に登板の機会を奪われてマウンドを去りました。大型左腕の東筑・高﨑投手はわずか打者9人、1回3分の1イニングスの登板に終わりました。

前回大会では失点率1点台が4人いましたが今大会は1人だけ。被安打率を見ても前回大会は5点台以下の投手が5人いましたが今年は2人にとどまり、打撃編でも触れたように「打高投低」の大会であったことが裏付けられました。

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与四死球率最少は池田(九国大付)、奪三振率は森本(福大大濠)
福岡大大濠・森本

限られた人数にはなりますが、登板した試合での自責点・与四死球・奪三振数を確認できた投手について「防御率」のほか「与四死球率」「奪三振率」(1試合当たりの与四死球、奪三振)をまとめました。

防御率は失点率と同様、田端投手がトップ。育徳館・山口投手が続き、九州国際大付・池田投手までが1点台。池田投手は防御率もさることながら、与四死球率が0.79。1試合当たり1つの四死球を出すか出さないか、という抜群の制球力を見せました。

奪三振率は福岡大大濠・森本投手が13.74でトップ。2イニングスの記録が不明ですが、3回戦の修猷館戦で13個、5回戦の東筑戦でも12個の三振を奪うなど、19イニングスで29個の三振を奪いました。西日本短大附の江川投手、東筑・堂満投手も2桁に乗せました。三振数では木口投手が59個で、前回大会の最多奪三振(松本投手の57)を上回りました。

選手名 校名 試合 回数 自責点 防御率 与四死球 与四死球 奪三振 奪三振率
田端  類 折尾愛真 29 1.24 14 4.34 28* 9.69
山口 颯斗 育徳館 26 1.38 12* 4.91 5* 2.05
池田 悠舞 九国大付 34 1.59 0.79 14 3.71
堂満遼太郎 東筑 4 18 2.00 7 3.50 20 10.00
中島  昴 久留米商 4 26 2.42 4* 1.44 14* 5.04
轟  晴斗 九産大九州 3 27 2.67 8 2.67 22 7.33
江川 颯太 西短大附 36 11 2.75 16 4.00 42 10.50
山田 裕太 小倉工 36 11 2.75 10 2.50 29 7.25
木口 永翔 筑陽学園 60 20 3.00 34 5.10 59 8.85
白浜 快起 飯塚 33 14 3.82 17 4.64 24 6.55
内田 海翔 福工大城東 29 12 3.72 19 5.90
森安  匠 北筑 23 8 3.13 23 9.00
木崎 智也 明善 20 17 7.65 15 6.75
森本 光紀 福大大濠 21 29* 13.74

*田端投手の奪三振数は鞍手竜徳戦の3イニングは除く(記録未確認)ため、奪三振率は25イニングスでの記録
*山口投手の奪三振数、与四死球数は若松商戦の4イニングは除く(同上)ため、奪三振率・与四死球率は22イニングスでの記録
*中島投手の奪三振数、与四死球数は武蔵台戦の1イニングは除く(同上)ため、奪三振率・与四死球率は25イニングスでの記録
*森本投手の奪三振数は小郡戦の2イニングスは除く(同上)ため、奪三振率は19イニングスでの記録
*内田、森安、木崎各投手は自責点が一部の試合で不明のため未記載とした
*森本投手は自責点、与四死球数が一部の試合で不明のため未記載とした

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