観戦レポート / 第96回全国高校野球選手権大会 5回戦 (2014年7月19日・土/筑豊緑地野球場) |
TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 R H E 西 短 0 0 0 0 2 0 1 3 6 0 12 9 1 東海五 0 1 0 0 0 1 0 0 2 4 8 2 【西】小野-高岩 (本)川路2(二)武富、高岩、川路 【東】粟田、大森、松尾、吉武-赤松、永富 (二)末松、岩城 4試合目にして初めて先制を許し、打線も4回までノーヒット。西短大付にとっては苦しい展開だった。そうした重苦しい空気を払しょくしたのが、8番・川路の一振りだった。 東海大五の先発・粟田の調子は決してよいわけではなかった。直球が高めに浮き、スライダーの制球も今一つ。ただ直球には力があったため、西短大付の打者は高めの球につられて空振りしたり、厳しいコースに手を出して詰まったりするケースが多かった。1打席目の川路は2球目に来た甘いスライダーを見逃し、外角直球の難しい球を引っかけて遊ゴロ。一死二塁の好機で迎えた2打席目、初球甘く入ってきたスライダーを今度は見逃さなかった。鋭く振りぬいた打球はライナーで左翼へ伸び、そのままフェンスオーバー。レフトフェンス奥にあるブロック壁に当たってグラウンドに戻ってきた白球を見て、川路自身がフェンス直撃と思って二塁ベース上で立ち止まった程の低い弾道で、そのパワーを見せつけた。 この当たりで″覚醒”した川路は、もう止まらない。同点で迎えた7回の第3打席、今度は直球をドンピシャのタイミングで前でさばき、再びレフトフェンスをオーバー。8回には三遊間を破るタイムリー、9回にはライトオーバーの二塁打を放って6打点の活躍。振ればヒットになる雰囲気だった。体格にも恵まれ、2、3回戦では5番に抜擢されていた力のある打者。無安打で4回戦から8番に降格していたが、タイミングが合えば大きな当たりを打てることを証明した。 もちろんそれを許さなかった小野を褒めるべきだろう。この日も小野は立ち上がり直球のスピードは抑え気味で、スライダーでカウントを整えるケースが目立った。だが先制を許してからは早くも”本気モード”となり、直球のスピードが見た目にも上がるのが分かった。そして鋭く切れるスライダーを使って2回、6回のピンチに追加点を許さなかった。東海大五打線は小野の直球に逆らわないバッティングで末松、岩城がライト方向に好打を見せたが、このスライダーにはまったく手が出なかった。 打線は粟田がマウンドを降りた9回に5本のヒットを集めて6点を奪ったが、次の試合に向けて大きな1イニングだったと思う。この試合、8回までに西短大付が放った安打は川路の3安打以外は、中島の送りバントが内野安打になった1本のみ。 大会が始まって以降、本調子でない小野と、4番打者としての小野を欠く西短大付だが、徐々に上昇気流に乗ってきた。次は九州国際大付との一戦。甲子園出場を目指すうえで、最大の山場が待ち受ける。 ▶前に戻る |