【観戦記】折尾愛真12-9飯塚(選手権北福岡大会決勝)




 激しい打撃戦を制した折尾愛真が飯塚を破り、初優勝を飾った。
 折尾愛真は2回二死後、7番下柳が右中間二塁打で出塁すると、古野のニゴロ失、田島四球で二死満塁とし、1番長野が右越えに本塁打を放って4点を先制した。3回は、この回先頭の5番野元がセンター左に飛び込む特大の本塁打で1点。4回は9番田島の一塁前セーフティバントと長野の右前打で一、三塁とし、斉藤のスクイズでまず1点。松井の一塁右を破る二塁打で長野も生還し、飯塚先発の古屋をKOすると、代わった谷から4番上地も右中間へのヒットで松井も還り3点目。野元四球、岩見右飛で二死一、二塁から下柳が右越え二塁打を放って上地が生還、この回4点を奪って飯塚を突き放した。
 5点を返された直後の5回は一死から2番斉藤が死球、松井も四球を選んだあと、上地の右翼線二塁打で1点を追加。6回は一死から田島が四球で歩き、長野がこの試合2本目となる本塁打をセンター左に運んでリードを広げた。

 初回二死満塁、2回一死満塁の好機を逃した飯塚は3回一死後、4番片渕のレフト右を破る二塁打、大門の右前打で一、三塁とし、大坪の右犠飛で1点を返した。1-9となった5回は片渕の右翼線二塁打のあと、大門中前打、大坪左前打でまず1点。徳永も右前打で無死満塁とし、一死後、9番白木の右前打で2点を加えた。さらに一死一、二塁の場面で登板した3番手野元から高倉は一邪飛に倒れたが、2番矢野が左翼線二塁打を放って2者が生還、この回5点を挙げた。
 7回は白木が三塁前セーフティバントで出塁し、高倉四球、矢野三ゴロで一死二、三塁。野崎四球のあと登板した5番手山根から片渕は三振に倒れたが、大門が押し出しの四球を選んで白木が生還。さらに大坪の左前打で1点を追加、レフトが打球の処理をもたつく間に二塁から野崎も還って2点を加えた。しかし8回以降は、再登板した野元から得点を奪えず、16安打を放っての猛追もあと一歩及ばなかった。

▼決勝(23日・北九州)
飯  塚 001 050 300=9
折尾愛真 041 412 00x=12

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 打撃優位の今大会を象徴するような、激しく点を奪い合う決勝戦となったが、長打力に勝る折尾愛真が飯塚に打ち勝って北福岡の頂点に立った。
 序盤に折尾愛真に流れをもたらしたのは、投手陣の奮投だった。先発の小野は初回3つの四死球で二死満塁といきなりのピンチを背負うが、大坪を右飛に抑えて無得点でしのぐ。2回も3つの四死球で一死満塁となったところで、早くも小野を諦め、ここまで抑え役として登板してきた下柳を投入。下柳はその期待に応えて投ゴロ併殺で切り抜けて、1・2回と大量失点の危機をゼロで切り抜け、流れを引き寄せた。
 守りからつかんだ流れを、打線が得意の一発攻勢で大きく引き寄せた。相手のミスなどから得たチャンスで長野が2-0から直球に狙いをすまし、打った瞬間それと分かる大きな一発。その打球の速さ、しかも満塁弾という衝撃は一瞬にして、球場の雰囲気を折尾愛真一色にしてしまった。3回には野元がバックスクリーン左に、今大会6本目となるアーチをかけた。スタンド最上段、テレビ中継用のカメラの近くまで飛んでいくこちらも特大の一発だった。さらに続く4回には、「らしくない」バントを2つ使って得点につなげると、松井、上地の3・4番もタイムリーで続き、とどめは6回、長野の2本目の本塁打。2回から6回までは、折尾愛真の打者が振ればヒット、という印象だった。

 この試合、安打数は飯塚の16本を下回ったが、本塁打で7打点と効率よく得点を重ねた。猛打のイメージのある折尾愛真だが、4回戦の青豊戦、準々決勝の東筑紫学園戦、準決勝の北九州戦の安打数はいずれも1桁で相手を下回っている。それでも10本の本塁打で複数得点をかせぎ、何より球場のムードを一気に変え、相手に得点以上のダメージを与えた。

 先発はエース小野。疲れの色は隠せずに2回途中、6つの四死球を与えて降板。ここで折尾愛真は早くも抑えの下柳を投入、この判断が吉と出た。下柳は2回のピンチを併殺で切り抜けると3・4回と1失点でしのぎ、その間に打線がリードを広げることができた。5回以降は堀田、山根の救援陣にファースト野元、サード松井もつぎ込む総力をあげた継投で必死の防戦。最後は、8回から再登板した野元が130キロ後半の直球で押し切り逃げ切った。

 飯塚は序盤、流れに乗り損ねた。初回、2回と制球の定まらない小野から6つの四死球を得ながら無得点。先制点が入っていれば、試合の流れはまた違ったものになっていただろう。2回の守りでは簡単に二死を取った後、下柳に右中間を破られると、続く古野のゴロをセカンドがバウンドを合わせ損ねてしまう失策。田島にも四球を与えた後に、長野に痛恨の一発を浴び、これで折尾愛真打線が止まらなくなった。
 打線はその力を十分に発揮した。3回以降は毎回安打で、折尾愛真が繰り出す延べ7人の投手からヒットを連ねた。特に片渕、大門は右に左に打ち分けて猛打賞。外角球を右に逆らわずにはじき返す技術は目が引いた。7回には3点を返してなおも二死二、三塁と迫り、徳永のライトへの大きな一打は同点本塁打かと思われたが、フェンス前で失速。これが最後の見せ場となった。16安打で9得点を挙げたが、3点差は長打力の差が出た結果となった。

 折尾愛真の強力打線に対し、飯塚は中1日で古屋に託した。立ち上がり得意のスライダーの制球は悪くなかったが、2回は味方の失策が出る不運もあり、一発を浴びてからは伸び伸びと振ってくる折尾愛真打線を抑えきれなかった。頼みとしていた古屋が降板し、その後も谷、平山、長坂とつないだが、折尾愛真打線の勢いを止めることができなかった。打線が追い上げを見せていただけに無失点で切り抜けて反撃に勢いをつけたかったが、折尾愛真の打力が上回った。3点差となって7回裏から登板した左腕の原田は2回を無失点に抑える好投を見せたが、逆に打線が折尾愛真・野元に封じられた。

 昨年の東筑-福岡大大濠、一昨年の九州国際大付-福工大城東など、ここ数年の決勝は見ごたえのある投手戦が多かったが、スリリングな打ち合いで優勝校が決まったこの試合は、福岡にも打撃優位の時代の到来を感じさせた。

 


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