2014年7月28日 九州国際大付16-0北筑②

観戦レポート/第96回全国高校野球選手権大会 決勝 (2014年7月28日・月/北九州市民球場)

TEAM   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10   R  H E  
九国付        
  16 19 
北 筑           0  5 
【九】富山、滝、安藤ー清水(三)岩崎(二)山本、岩崎、富山、手塚、古沢、中谷、清水
【北】平川、桜井-吉田 (三)稲毛

 北筑にとって九州国際大付は、これまで対戦してきた相手とは勝手が違った。
 今大会、北筑が県大会以降、戦ってきた相手は久留米学園、折尾愛真、東筑。どちらかといえば、投手を中心に守りを固め、手堅い攻めを見せるチームだった。そういうチームには足でかき回し、序盤から勢いに乗って攻め立てる攻撃が決まれば、エースを欠く北筑投手陣であっても何とか相手の反撃をしのぐことができた。だが決勝の相手・九州国際大付はこれまで対戦する機会が少なかった打撃のチーム、それも超がつく強力打線である。得意の先制攻撃で機先を制し、少しでも相手の焦りを誘いたかったが、これまでと同じような戦い方では通用しなかった。

 北筑にとっての唯一の見せ場は初回だった。先頭の日永が2球目をライト前にクリーンヒット。上野が初球で送りバントを決めて一死二塁。わずか4球で先制機を作った。ここまでは「速攻の北筑」らしい鮮やかな攻撃だ。打席には北筑打線のキーマン・稲毛。是が非でも先制点が欲しい場面。稲毛の打球はショートへ。二塁走者・日永は迷わず三塁に突っ込むが、ショート・古澤の冷静な守備で三塁タッチアウト。セオリーでは二塁走者はゴロが左方面に飛べば帰塁だが、北筑はこうした積極的な走塁で勝ってきたチームだ。ここを自重するようでは、ここまで勝ち上がってこれたか疑問だ。

北筑・平川
北筑先発の平川投手

 それでも一塁に快足・稲毛が残った。九州国際大付のマウンドは左腕の富山。初球を投げる前に3度牽制。初球を投げた後も、もう一度牽制を入れる。バッテリーに警戒され、投手も左。不利な条件ではあったが、稲毛はそれでも走った。盗塁を十分に想定していた清水は二塁にストライク送球を行ってこれを刺す。
 稲毛にしても、ここで走ることはある意味必然だった。得点圏に稲毛が進んで、ヒット1本で本塁を陥れる。それが北筑の得点パターンでもある。結果はアウトになったが、日永にしても稲毛にしても決勝の舞台に萎縮することなく、これまで通りの積極的なプレーを見せてくれた。

 九州国際大付の攻撃に関しては、残念ながら平川投手の球威とコントロールでは通用しなかった。2回は二死からの5連打で4点。4回は四球と犠牲フライを挟んだ7連打で7点。中軸は言わずもがな、今大会初出場となった投手の富山も2打数2安打3打点。この数字が九国打線の凄味を象徴している。1打席目は先制タイムリーとなるセンター前ヒット、2打席目はカーブをおっつけてレフトへの犠牲フライ、3打席目も無理に引っ張らずに流してレフト線上に落ちる二塁打。野手顔負けの打撃を見せた。途中出場の中谷も2打席目でセンター頭上を越える大きな二塁打。これが九州国際大付の打線の厚みだ。
 投手陣も初登板となった富山が好投を見せた。強力打線に3人の左腕を擁し、全国でも十分に上位を狙えるだろう。

 北筑の2番手・桜井も4回途中でリリーフに立ち猛攻にさられたが、5回以降はカーブを効果的に使って立ち直った。九国大付打線を4イニングス連続で0点に抑えたのは自由ヶ丘・安武と、この桜井だけ。準決勝の好投がフロックでないことを証明した。初回に盗塁を刺された稲毛も4回に左中間を破るヒットを放つと快足を飛ばして一気に三塁を陥れ、球場を沸かせた。
 16失点は福岡大会決勝での最大失点となったようだが、疲れがピークに達する決勝は他地区でも大差がつくケースは珍しくない。この大敗で北筑のこれまでの健闘が色あせるものでは、まったくない。むしろ一つの”勝ちパターン”を示してみせたその戦いぶりは、特に公立校にとっては今後の戦い方の参考になるに違いない。

北筑整列

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