夏を駆ける’25➀【浮羽究真館】~過去最強チームで新たな歴史を創る夏




第107回全国高校野球選手権福岡大会の開幕まで1カ月を切りました。今年で3回目となる夏の大会直前特集「夏を駆ける」。南部・北部から数校ずつをピックアップし最後の仕上げに励む各チームの様子をお届けします。初回は浮羽究真館(うきは市)です。

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秋春ともベスト16入り
過去最高成績でチームに勢い

2005(平成17)年4月に浮羽と浮羽東が統合して開校した県立校。ラグビー部は今年1月の県新人大会で4強入りするなど強豪として知られる。野球部も昨秋に過去最高の県ベスト16入り。今春もベスト16進出を果たし、秋の成績がフロックでないことを証明した。

藤田監督は祇園北~広島大で野球部。祇園北、瀬戸内でコーチを務め、2018年から浮羽究真館で指揮を執る

浮羽究真館となってからは3回戦の壁を破れなかったが、2018年4月に藤田真平監督が着任したのが転機となった。当時は部員も少なかったが「年間60回も中学生を見に行く年もあった」という熱心な勧誘によって徐々に部員も増え、2021年秋に初めて4回戦に進出した。その時の3年生と入れ替わる形で入ってきたのが今の3年生だ。前チームでも8人がレギュラーとして出場し、試合経験を積んできた。

安定した制球力が持ち味のエース國武

チームの中心となるのはエース國武一聖(3年)。右サイドハンドから130キロ台なかばの直球にチェンジアップ、スライダーを投げ込む。2年生だった5月に横手投げに替えてから急成長。夏は初戦で香椎工に敗れたものの8回被安打3、失点2と好投した。秋は3回戦で大牟田から10三振を奪って3失点完投するなど初のベスト16入りに貢献。春は投手力の底上げを図るため國武の登板を制限し、制球のよい右腕の朝倉康平(3年)や普段は外野を守る出利葉大地(同)、捕手の楢橋廉人(同)らを登板させながら再びベスト16入りを果たした。

4番濱野。二人の兄は広島の強豪・瀬戸内でプレー。藤田監督が同校でコーチをしていた縁もあり浮羽究真館へ

打線は濱野櫂(3年)、井上樹(同)の中軸が得点源。濱野は広角に強い打球を打てる打者、井上は春の大会の筑紫台戦で久留米市野球場の場外に運んだパワーが魅力だ。ウエイトトレーニングの効果で特に春以降はチーム全体で飛距離が出るようになった。「レギュラーは全員が本塁打の経験がある」(藤田監督)と上位から下位まで長打力を秘める。

春の大会は5回戦で、筑後地区大会は初戦でいずれも久留米商に敗れたが、筑後地区大会では1点差の接戦を演じるなど実力はシード校と遜色ない。初の県大会出場、さらに秋春に成し遂げたベスト16を上回る最高成績の更新を目標に掲げる。

フィジカル強化で打力向上
〝チーム広島〟の指導支援

チームの大黒柱・國武。「自信がある球は三振が取れる直球とチェンジアップ。夏は球数を減らしながら一球一球丁寧に投げたい」

筑後平野の東端、大分県日田市に接するうきは市。背後に耳納連山の雄大な景色が広がるグラウンドで部員34人が汗を流す。授業が6限で終わる水、金曜日は16時30分からシート打撃など実戦形式のメニューをこなす。練習終了は19時だが電車が1時間後にしかないため、それまで居残り練習を行う部員も。朝は7時45分からのフリー打撃が日課となっている。

多くの種類の器具が並ぶウエイトルーム

7限目まである火、木曜日はウエイトトレーニングに励む。ラグビー部と共用のウエイトルームには同窓会や地場企業の支援を受けて器具が充実。藤田監督の小・中学時代の同窓である柳田悠岐(ソフトバンク)の自主トレ帯同トレーナーを務めた刎田(はねだ)康太朗氏の出張指導を受けながらフィジカルを強化してきた。2年前からは投手コーチ、昨年からは部活指導員による技術指導も始まった。いずれも藤田監督が広島時代から知る指導者で〝チーム広島〟と呼んでいる3人も躍進を支える。

冬は竹バットで打ち込み振り切る力、芯で捕らえる感覚を身につけ、春の大会では4試合で34得点をあげた。春の大会後はさらなる打力向上のためヒットエンドラン、スクイズを封印して試合にのぞんできたが5月末に解禁し、得点力の積み上げを図っている。今年に入って県外遠征も積極的に行っており、創成館、海星(長崎)広陵(広島)有田工(佐賀)など甲子園実績校の胸を借りて自信をつけた。

3年生部員は監督がクラス担任
守りを見直し、狙うは8強

長打力が持ち味の井上はチームのムードメーカー。「夏はホームランを2、3本打ちたい」

3年生部員のほとんどが1年生の頃から藤田監督のクラスに所属。一日の大半を共に過ごすことで相互理解が進み、冗談を言い合える関係を構築している。ここ数年は大学や社会人でも野球を続けたいという部員が増え、練習に取り組む姿勢が変わってきたことも全体のレベルアップにつながっている。

浮羽究真館は全校生徒約350名の小規模校。加えて野球経験のある同校周辺の中学生は、久留米市や隣接する大分県の強豪校に進むケースも多い。「うちに入ってくるのは9人揃わない野球部にいた生徒や、クラブチームで補欠だった生徒がほとんど。まずは彼らに野球をさせてあげたい、という思いが第一にある」と藤田監督。部員たちは試合に出る喜びを知り、上達する楽しさに気づきながら、少しずつ力を付けてきた。

二塁手の田中主将は守備の要。「守備位置の確認など野手への声掛けを徹底したい」

田中創大主将(3年)は「秋と春のベスト16を超えるのが目標」と夏の大会を見据える。「打力はついてきたが自分たちはあくまで守りのチーム。守備での〝あと一歩〟をチーム全体で意識していきたい」と最後の仕上げにのぞんでいる。「ラグビー部はひと足早く強豪校の仲間入りを果たし部員たちも刺激を受けている。次は野球部の番」と藤田監督も選手たちの奮起を期待する。

中学時代、日の当たらない場所を歩いてきた部員たちが大自然に囲まれた環境で伸び伸びと野球に取り組み、強豪校と互角に渡り合うまで力をつけた。7年間にわたって指導に心血を注いできた藤田監督の集大成ともいえるチームが、初の県大会出場・県ベスト8という新たな歴史に挑む。

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