福岡の高校野球

「九国大付 秋の全国制覇」を振り返る①

第156回明治神宮野球大会で九州国際大付が初優勝を飾りました。このサイトを立ち上げた時の願いの一つが「福岡県の高校のよる全国制覇」でしたので、感慨深いものがあります。記念すべき「全国制覇」ですのでその戦いぶりを振り返りつつ、来年の展望も行ってみたいと思います。

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「九州大会は苦戦」と予想も…
正直なところ、九国大付の九州大会については「(センバツ選考の目安となる)4強以上は厳しいかも」と見ていました。最大の理由は投手陣の不安定さでした。九州大会以降は岩見投手が先発として定着するわけですが、福岡大会では1年生左腕の山口投手が先発、そこから継投でしのぎ最後にエース渡邉投手で締めるパターンで勝ち上がってきました。

九国大付・山口

九州大会が懸かった準決勝の大牟田戦も先発は山口投手でした。そこから縄田~渡邉とつないでしのぎ、最後はサヨナラ勝ち。東海大福岡戦で5失点、福工大城東戦では7失点と少し失点の多さが気になったので過去10年の記録を調べてみると「福岡大会優勝校のうち20失点以上の場合は九州大会で8強止まり」ということがわかりました(下表)。そして、今年の九国大付は22失点でした。

さらに九国大付は東海大福岡、福工大城東、大牟田など強豪との対戦が続いたこともあり、1点差勝利が3試合もありました。接戦が多かったことで得失点差は32。「九州大会4強以上に残るには福岡大会での得失点差が40点以上」というデータもあり、九国大付が準決勝まで勝ち上がるのは微妙だと見ていたわけです。

▼過去10年の秋の福岡大会優勝校と得点,失点,得失点差

年度 優勝校 得点 失点 得失点差 九州大会
’25 九国大付 54 22 32
’24 西短大附 54 11 43 4強
’23 東海大福岡 58 16 42 4強
’22 西短大附 48 23 25 8強
’21 九国大付 73 7 66 優勝
’20 福大大濠 82 17 65 準Ⅴ
’19 福岡第一 59 26 33 8強
’18 筑陽学園 57 9 48 優勝
’17 東筑 53 9 44 4強
’16 福大大濠 58 11 47 優勝
’15 九産大九産 35 9 26 8強

「組合せ」+「岩見覚醒」~九州大会V
その九国大付が九州大会で優勝します。まず、組み合わせに恵まれました。初戦が杵築(大分2位)。準々決勝は唐津商(佐賀1位)―長崎西(長崎2位)の勝者でいずれも公立校。各校とも九州大会に出てくる力があるチームなのですが、それでも準決勝まで沖縄尚学、明豊、神村学園など甲子園常連校との対戦がなかったのは大きかったといえます。

さらに福岡大会では目立った活躍のなかった岩見投手が〝覚醒〟しました。「楠城徹前監督のアドバイスで腕を少し下げたところスピードがアップした」(朝日新聞)影響かもしれません。杵築戦では6回11奪三振で被安打1の無失点。続く長崎西戦でも6回を投げて6四球を与えながら被安打1の無失点で、まずは4強入りを決めました。ただ、繰り返しになりますが、ここまでは相手に恵まれた印象があったのも事実です。

真価が問われた準決勝の神村学園戦では岩見投手が6四球と乱れて4回で降板しましたが、打線が12安打を放って援護。5回から登板した渡邉投手が2点を失いながらも1点差を守りきり5-4で勝ち、センバツ出場を確実にしました。

決勝の長崎日大戦は苦しい試合でした。7回まで看板の打線が1安打に抑えられ0-2。それでも8回に2安打で1点、9回に3安打を集めて2点を奪って3-2で逆転勝ち。走者を出しながら失点を最小限に抑えた岩見~渡邉の両投手、粘り強い攻撃をみせた打線がうまく噛み合い、4年ぶりに秋の九州大会を制しました。

過去の不利なデータ(福岡大会で20失点以上、得失点差が40点未満のチームは九州大会で8強止まり)を跳ねのけるほど、福岡大会からチーム力が大きく進化した(特に岩見投手の急成長)と言えそうです。

乱戦を制する逞しさ~明治神宮大会V
明治神宮大会でも九国大付の上位進出は疑問視していました。九州大会では2試合で完封勝ちしたとはいえ、1試合当たりの与四死球は6.35個。この数字では九州大会では勝てても、全国大会では厳しいだろうと思ったからです。岩見投手が先発した山梨学院戦では9四死球に2失策もからんで5失点。連戦のため山口投手が先発した準決勝の花巻東戦でも9四死球に5失策で6失点。この数字だけを見れば惨敗でもおかしくありませんが、打線が奮起して乱戦を制しました。

優勝の原動力となった打線については3試合で3本塁打を放った長打力より、勝負処でのしぶとい打撃が印象的でした。山梨学院戦では2点を追う4回一死一、二塁からヒットエンドランを仕掛け、これがショートの逆を突いて三遊間を破るタイムリーに。5回の吉田の同点打も右方向への一打でした。

九国大付・牟禮

花巻東戦でも2点を先制されましたが、3回に単打3本で満塁として押し出しと犠飛で同点。4回は一死一、三塁で柴原は二ゴロに倒れましたが俊足を生かして併殺は阻止しての勝ち越し。つなぐ打撃と足を使ってチャンスを広げ、四死球や相手のミスを誘って得点につなげていきました。

明治神宮大会のスコアを見て感じたのは「夏の大会のようだ」ということ。6-5、8-7というスコアは、投手陣が疲れのピークを迎える夏の大会の準々決勝、準決勝などで見かけるもの。四死球を乱発し失策が出て失点を重ねても、最後は勝つ。夏の大会ではそうしたタフさがなければ優勝できません。九国大付はそれを秋の段階で、しかも全国の舞台で成し遂げました。この経験は来年夏に向けて大きな財産になるはずです。

3試合で23四死球・7失策という粗削りのチームで全国優勝を果たしただけに、岩見・山口の1年生2人がさらなる成長を遂げていけば、再来年にかけて黄金時代を築く可能性を感じさせます。一方で全国から目標にされる存在になったことで研究もされ、「勝って当たり前」という重圧とも戦っていかなければなりません。福岡のチームが付け込む隙は、そのあたりにありそうです。

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