2016年選手権福岡大会を振り返る

閉会式 2016年夏、第98回全国高校野球選手権福岡大会は、九州国際大付の3連覇で幕を閉じました。すでに各校は新チームが始動し、秋を目指していますが、熱い戦いが繰り広げられた今夏の大会を振り返っておきたいと思います。

 まず今年の特徴としては「打高投低」が挙げられます。県大会15試合を見ると「総得点」は昨年が93、今年が170。昨年は「投高打低」だった年だったこともあり、ほぼ倍増となっています。県大会前にも触れましたが、16強のうちチーム打率3割以上が昨年9校→今年13校、4割以上は昨年0→今年3校。2本以上の本塁打を記録しているチームも昨年2校→今年7校。県大会だけでなく、北部・南部大会から「打高」の傾向がみられました。
 この傾向に飲み込まれる形で、前評判の高かった好投手が次々と南北大会で姿を消していきました。福岡大大濠・濱地投手は不運なヒットもありましたが、制球力に苦しみ福岡第一の強打の前に敗れ去りました。九産大九産の梅野投手は初戦こそ突破したものの3回戦の福島戦では登板を回避、2点ビハインドの8回二死から打者1人だけに投げ、最後の夏を終えました。登板回避の理由は定かではありませんが、いずれにせよ体調が万全ではなかったのでしょう。九産大九州の岩田投手は4回戦で敗退。先発投手が1点を失ったあとマウンドに上がり、追加点は許しませんでしたが、今年も打線の援護がありませんでした。小倉・中野投手、西日本短大付・谷口投手なども本来の持ち味を出せず、打ち込まれて敗れました。

 こうしてみてくると、秋や春に好投した投手も、その調子や体調を夏まで維持・発展させることがいかに難しいかがわかります。優勝した九州国際大付も西日本短大付戦、自由ケ丘戦など打線が主役でしたし、ベスト4の真颯館や福岡第一、ベスト8の星琳や祐誠も強打で投手陣を援護してきました。前評判の高かった投手のうち、自らの力を十分に発揮できたのは先述の九産大九州・岩田投手と、準優勝した福工大城東・坂元投手くらいでしょうか。
 九州国際大付は春までの戦いぶりを見た限りでは、高い評価はできませんでした。秋春とも5回戦で敗退。投手陣はエース・藤本投手の調子が上向いてこず、打線も機動力はありましたが迫力という点で物足りませんでした。ところが、夏を迎えると打線に見違えるほど迫力が出てきました。春先までは自由ケ丘の各打者の打球の鋭さが目を引きましたが、同校に勝るとも劣らない打球の速さで、両校が対戦した準々決勝の打ち合いは壮絶でした。また9回に6点差を追いつかれた準々決勝、怒涛の猛追を受けた決勝と、厳しい状況の中でもしっかり守ることができるのも大きな強みでした。

 準優勝の福工大城東も秋は福岡大大濠に敗れ、春はベスト8まで進出したものの、前評判はさほど高くありませんでした。派手さはないものの、坂元投手の安定感を背景に堅実な試合運びが光ました。特別に速い直球を投げるわけでもなく、切れ味鋭く三振をとれる変化球があるわけでもありませんが、丁寧に粘り強くコーナーを突く投球は、高校生投手のお手本のようでした。ベスト4の福岡第一は、奔放な打線が魅力でした。濱地投手を打ち崩したのも、長打力と意外性にあふれたこの打線だからこそだと感じました。真颯館は組み合わせにも恵まれた感がありますが、1・2年生を中心とした打線が活発でした。エース・高木、1番・和知らが残る新チームも楽しみです。祐誠、星琳は評判通りの強打を発揮。筑前、八女工、香椎、北九州は投手を中心とした粘り強い戦いで強豪に競り勝ち、今年も公立校の躍進を印象づけました。



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