福岡の高校野球

【観戦記】西短大附2-1福大若葉(選手権福岡大会5回戦)

終盤の福大若葉の追い上げを振り切った西短大附が1点のリードを守り切り、辛うじて逃げ切った。

▼5回戦(19日・久留米)⇒試合記録
西短大附 000 100 010 =2
福大若葉 000 000 010 
=1
【西】中野【福】浦野→井上

福大若葉の先発浦野の前に1~3回と走者を二塁に置きながら得点できなかった西短大附は4回一死後、6番山下がレフト右を破る二塁打を放ち出塁。湯山は三振に倒れたが、小川の中前打で先制した。8回は2番井上が左前打で出ると、ここで登板した福大若葉・井上から斉藤が送りバントを決め、佐藤がレフト左へ二塁打を放って2-0とした。

8回表西短大附一死二塁 佐藤がレフト左に適時二塁打を放つ

7回まで三塁を踏めなかった福大若葉は8回一死後、8番長がレフト前に落として出塁すると、井上の一塁強襲安打、櫛島の右前打で一死満塁とし、藤岡の右前打で1点を返した。なおも一死満塁と同点、逆転のチャンスが続いたが本夛が三振、佐藤が投ゴロで1点どまり。9回も5番湯脇が三ゴロ失で出塁し二死後、長が左前打を放って一、二塁としたが井上三ゴロ。優勝候補を相手に健闘を見せたが、あと1点が届かなかった。

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ロースコアの競り合いで終盤勝負に持ち込んだ福大若葉にとっては願ってもない展開となったが、西短大附のエース中野の投球が一枚上だった。

福大若葉・浦野

福大若葉の先発は1年生左腕の浦野。今大会もすでに2試合で先発している主戦投手だ。左打者が並ぶ西短大附打線に対してどこまで踏ん張れるかがこの試合の大きなポイントだったが、期待以上の投球を見せた。130キロ前後の直球に打者の外に逃げていくスライダーが武器だが、ここぞという場面では130キロ台なかばまでギアを上げてくる。

立ち上がりは我慢の投球が続く。初回は井上に中越え二塁打、2回も山下にレフト前に運ばれるなど、鋭い打球が再三、外野に飛ぶ。3回は奥のショート後方に落ちた当たりを二塁打にされ、井上が送って一死三塁で中軸を迎えた。しかしここでも斉藤をこの日最速の136キロの直球で見逃し三振に打ち取ると、佐藤も直球で押し込み中飛。堂々たる投球を見せて得点を許さない。

4回に1点は失ったものの、5~7回に許した走者は死球による一人だけ。味方の好守もあった。6回、佐藤の右中間への一打は完全に抜けたと思われたが、あらかじめ右中間を詰めていたライト佐藤が抑える。続く安田も痛烈なセカンドゴロを放ったが、長がしっかり腰を落として半身になりながら好捕し、出塁を許さない。8回先頭の井上に左前打をあびたところで交代となったが、大きな拍手を受けてマウンドを降りた。

福大若葉・井上

エース井上は130キロ台後半の直球(この日最速140キロ)を投げる右本格派。無死一塁から斉藤犠打で得点圏に走者を進められたあと、佐藤に高めの直球をレフト左に運ばれて2点目。さらに安田四球のときに捕逸がからんで一死一、三塁。このままズルズルと失点を重ねそうな雰囲気だったが、山下を直球で詰まらせて二飛、湯山を138キロの直球で遊ゴロに打ち取り、ギリギリのところで井上も粘る。

西短大附・中野

西日本短大附はエース中野が今大会初先発。120キロ台後半(同131キロ)の直球、スライダーをコーナーいっぱいに決め、3回まで一人も走者を許さない安定した立ち上がり。4回は2本の単打を許して二死一、二塁とされたが湯脇をスライダーで空振り三振、6回も一死一、二塁と得点圏に走者を背負ったが、本夛を三ゴロ併殺打に打ち取るなど要所を抑える。それ以外の回は三者凡退で福大若葉は三塁が踏めずにいた。

ただ、終盤になると不思議な力が沸いてくるのが福大若葉。この日は8回一死から長の詰まった当たりが左前に落ち、そのスイッチが入った。井上はファースト左への強いゴロ、これを佐藤がグラブに当ててはじき(記録は内野安打)、櫛島はスライダーを一・二塁間に運び一死満塁。ここでこの日2安打の藤岡がスライダーをうまくあわせて右前に運び1点差。一気に三塁側スタンドのボルテージも上がる。さらに本夛にボールが3つ続いたところがこの試合のクライマックスだった。

8回裏福大若葉一死満塁 藤岡が右前適時打を放ち1点差に

それでもさすがに西日本短大附の背番号1を背負う投手。直球でストライク、ファールを奪うと最後は129キロの外角直球で見逃し三振に打ち取ると、佐藤はスライダーで投ゴロ。最大のピンチを脱した。

9回も福大若葉は食い下がる。先頭の湯脇の一打は三塁線への弱い当たりだったが、これを名手小川がジャックル。高田右邪飛のあと、山本の一打はセカンド頭上へのライナー。これを湯山がジャンプしてグラブに当てながら後方に落球、それでも落ち着いて二塁で封殺して二死。長が再びレフト前に落として粘ったが、最後は井上が三ゴロに倒れて力尽きた。

勝利の瞬間、こぶしを突き上げる西短バッテリー

中野の直球は120キロ後半。スライダー、カットボールなどの変化球も驚くような球ではない。ただ、これらの球を外角低めに精密機械のように決めていく制球力が西短のエースナンバーを背負うゆえん。9安打は許しても四死球ゼロで無駄な走者を出さず、福大若葉の反撃を最少失点でしのいだ。

福大若葉は昨夏ベスト4の主力のほとんどが抜け、一からのチーム作りとなった。春までは結果を出せなかったが、浦野という好左腕を得て投手力が安定。この夏は競り合いをものにしながら上昇気流に乗り、4回戦では東海大福岡との延長12回に及ぶ熱戦を制して勢いをつけ、この試合に挑んだ。敗れはしたものの、終盤どちらに転んでもおかしくない展開に持ち込むなど優勝候補を相手に持てる力は発揮した。ダークホース的な存在から、実力校としての階段を着実に登りつつあるのを感じる。

浦野のほかショート櫛島も1年生、3番本夛など2年生にも好選手が多い。個を重視する指導スタイルは一体感を得る難しさと背中合わせだが、大きな潜在能力を秘めるだけに、秋以降も引き続き注目される。

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