観戦レポート/第96回全国高校野球選手権大会 準々決勝 (2014年7月24日・木/北九州市民球場) |
TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 R H E 注目された西短大付の剛腕・小野と強打・九国大付打線の対決は、九国大付打線に軍配があがった。 ![]() この試合、小野はこれまでの試合のように、要所だけギアを上げる”省エネ投球”ではなく、最初から”全開モード”だった。初回から140キロ台を記録し、初回の最速は148キロ。さらにスライダー、カットボールも交えながらの投球となった。初回は結果的に三者凡退に退けたが、中尾の左飛と古沢の中飛は詰まらせた分ヒットにはならなかったが、いずれも大きな当たりだった。 4回表、西短大付の攻撃。武富の遊ゴロを古沢が一塁へ高投。高岩が送って、松見は四球を選び一死一、二塁。森上のセーフティバントは三塁で走者が封殺され二死一、二塁となったが、5回戦で2本塁打の川路が一・二塁間を破って満塁の好機を迎えた。ここで打席は小野。これまで何度も書いてきたが本来なら4番に座る小野は今大会はずっと9番。しかもほとんど打つ気配さえ見せない。相手もその辺りは承知しており、5回戦の東海大五バッテリーは打たないと踏んでどんどん真ん中に投げていた。この試合も2回二死二塁の場面で九国大付は8番・川路との勝負を避けて歩かせ「打たない」小野と勝負。小野は大きなスイングはしたものの、結局見逃し三振。1点を争う試合で、1人確実に打てない選手がいるのは辛い。スタンドではこれまでの試合でも「(テーピングをしている)左手は怪我しているのではないか」という声が囁かれていた。いくら”投球に専念する”ために9番に入ったとしても、まったく打つ素振りを見せないというのは、明らかにおかしい。 だが、この場面は2点をリードされた場面で二死満塁。ストライクを三つ見逃すにはあまりにも厳しい。どうするかと見ていたら、1-1からの3球目を打った! 打球は右中間に伸びる。逆転満塁本塁打か、と思った瞬間、打球は失速してフェンス手前でライトの河口が掴んだ。惜しい一打となったが、”小野は打てる”ということを示したこの一打で雰囲気が変わった。 ![]() そういう中で迎えた5回裏。8番・投手の安藤ということで、130キロ台後半の直球で一息を入れにきた直球を安藤が右前に痛打。犠打を挟んで1番・中尾も140キロの直球を右前にはじき返し一死一、三塁。140キロ前後の甘い球は上位下位と関係なく捕えるのが九国大付打線の凄まじさだ。ここでこの試合を左右したプレーが出る。河口の三ゴロは5-4-3の併殺コースと思われたが、飛び出した三塁走者が目に入ったか、サード・上村は本塁に投げて三本間での挟殺プレーとなった。だが三塁方面に深追いしすぎで走者を生かしてしまう。これで一死満塁。打席には前の試合でサイクル安打の古沢。 九国大付は中軸だけでなく、8番の投手・安藤が2安打したように、また途中出場の手塚がタイムリーを放ったように、中軸以外でも強い当たりを打てる打者が揃う。本当に1番から9番まで息がつけない。150キロを投げる小野も全員に全力投球はできない。どこかで力を抜いて体力を温存しなければならないが、九国大付打線はそれを許さなかった。少しでも直球のスピードが落ちて140キロ台前半くらいになると痛烈にはじき返してくる。スピードだけでは抑えられない打線だ。 西短大付打線も小野を援護できなかった。2番手として2回途中から登板した左腕・安藤のカーブに手を焼いた。特に外に逃げていく形になる左打者はタイミングが合わなかった。九国大付の強力打線が相手であることを考えると5点は取らなければ厳しそうだったが、大曲の本塁打で1点を返すのがやっと。安藤の一塁牽制で走者が二度も刺されるなど、攻撃のリズムもつかめなかった。 ◀前に戻る |