第108回全国高校野球選手権福岡大会の開幕まで約1カ月となりました。集大成となる夏の大会に向けて最後の仕上げに汗を流す各校の〝今〟を紹介する特集「夏への現在地」を今年もお届けします。初回は城南です。
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春の大会で初の県ベスト8

1964(昭和39)年に開校、県内屈指の進学校として知られる。60年以上の歴史を刻む同校だが野球部の活動は1994(平成6)年になってから。当初は同好会としてスタート、翌年部に昇格した。南部大会ベスト8が一度あるだけで大会では1つ勝つのがやっとだったが、2019年に中野雄斗監督が就任し力をつけてきた。2023年春に2勝すると、2025年は春秋とも2勝。そして今春、創部以来初の県ベスト8入りを果たした。
傑出した選手がいるわけではない。エースの堀江悠真(3年)は球速120キロを少し超える程度。強豪校と比べると選手たちの体格も劣る。それでも春の大会では九産大九州、筑陽学園と甲子園出場のある私立校を連破。いずれも終盤の逆転勝ちだった。「強豪相手でも後半勝負に持ち込めば十分に通用する」。自信がチームに芽生えた。

ここ数年は対戦相手を分析すること、自分たちの戦術を磨くことに力を注いできた。バッテリーは各打者のデータをもとに配球を組み立て、野手は連動してポジションを変える。結果として、芯で捕えられても打球が野手の守備範囲に飛ぶことが増えた。
堀江は「球種・球速・高低・コースと打者に与える選択肢が増えれば増えるほど、打ちとれる確率が高くなる」と様々な角度から打者を揺さぶる。昨夏までは外角中心の配球だったがリスク覚悟で内角も攻めるようになり、クイックモーションを交えながら投球リズムも変える。「打者ごとに打ち取るストーリーを描いている」と細心の投球を続ける。

戦術面では、走塁に力を入れる。「サッカーで言うところの〝シュートを打って攻撃を終える〟」(中野監督)ことを重視し、二死からでもセーフティバントや本盗などを仕掛ける。「意表をつくことができれば相手にミスが生まれる。アウトになっても次の攻撃の布石になる」。中盤まで最少失点で耐え、終盤に相手の隙をついて逆転する。そんな戦い方ができるようになった。田中太朗主将は「秋は守りが崩れてしまったが春は前半しっかりと耐えることができ、後半自分たちの土俵で戦えた」と胸を張る。
成長を遂げたチームは、初めてシード校として夏を迎える。
チームに根付く主体性
福岡市城南区茶山の住宅街に学校がある。1年生24人を迎え部員は54人。平日の練習は16時30分から始まる。グラウンドはサッカー、ラグビー、ソフトボール、陸上など各部との共用だ。19時には練習を終えてグラウンドを整備し、ミーティングをして19時30分には校門を出る。限られた時間と空間を無駄なく使い切り、メリハリのある練習を行う。

練習は主将の田中、副主将の尾崎謙一、バッテリーリーダーの堀江、野手リーダーの脇山吏紀(いずれも3年)の4人が中心となって仕切る。直近の試合での課題などをもとにメニューを考え、前日までにSNSで部員全員に共有。他の部員から意見が出ることも多いため、翌日の昼休みに4人と中野監督で話し合い、そこで最終決定する。尾崎副主将は「全員が練習メニューづくりに関わることで、チームのことを全員が考えるようになった。練習にも問題意識を持って取り組め、課題克服への意欲も高い」と語る。

前年までは中野監督が練習メニューを作っていたが「今年のチームは考える力、コミュニケーション力に加えて野球に対する熱量が高い」ことから方針を転換。試行錯誤を経て「自分がグラウンドにいてもいなくても練習の濃度は変わらない」までになった。佐賀北と練習試合を行った際には、試合後に部員数名が相手ベンチを訪れて話し込んでいたという。「同じ進学校でありながら全国優勝した高校ということで、いろいろ質問していたようです」。
勝つために何をすべきか。主体性を身に付けた3年生を中心に、チームは加速度的に成長している。
監督はサポート役に徹する
もちろん部員の主体性だけでここまで来れたわけではない。基盤を整えたのは高校生に劣らない情熱と飽くなき探求心を持つ中野監督だ。
着任当初は野球に本気で向き合えていなかった部の雰囲気を熱血指導で変えながら、強化策を次々と講じていった。グラウンド施設の拡充。中学生を対象にした練習見学会の企画。外部コーチやパーソナルトレーナーの招聘。県外も含めた強豪校との練習試合。環境が整うと自らはフォローする側にまわって部員の自立を促した。こうした一連の取り組みが、ようやく今年の春に花開いた。

「生徒たちは今、時間を忘れてゲームに熱中するように野球に没頭している。彼らの試合をベンチで見ていると最近は目頭が熱くなるんです。私自身、もう一度高校生に戻れるならここで野球がしたい」。監督自ら惚れ込む今年のチームは、城南で7年間にわたって追い求めてきた姿なのかもしれない。
本気で目指す日本一
昨年11月の沖縄遠征では夏の甲子園優勝投手・新垣有絃が登板した沖縄尚学を相手に接戦を演じた。全国レベルの高校とも戦える手応えを得て、チームは「日本一」を目標に掲げた。「県内の強豪校に勝つ」から「全国レベルの強豪に勝つ」へ意識が変わり、5月の合宿では「本気」という言葉を付け加えた。
「一人ひとりに力があるわけではない。ただ、勝つためにどうすればいいか考えることに関してはどこにも負けない」(田中主将)。熱い心を持つ36歳の青年監督に見守られ、熱量全開の部員たちが一丸となって日本一を目指す。



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