
驚異的な粘りを見せて終盤に6点差を追いついた久留米商が、延長タイブレークまでもつれた激しい点の取り合いを制した。
久留米商はタイブレークの10回無死一、二塁から、持地の投前バントで一塁送球が乱れる間に二塁から稲用が生還。なおも無死一、三塁から瀬戸島の一塁線へのセーフティスクイズが内野安打となり2点目。加藤が送って一死二、三塁から早川の左前打で持地が生還した。なおも一死一、三塁から津福の右越え二塁打で4点目。納村の中前打、岩丸の左犠飛でさらに2点を加えて勝負を決めた。

前半は東筑紫学園が優位に試合を進めた。初回四球で出た小野を送り、九木田の左前適時打で先制。さらに九木田が二盗、岡野の右前打で一、三塁とし岡野も二盗を決めたあと、佐藤の二ゴロの間に九木田が生還した。
3回は与田四球、九木田左前打のあと岡野の投前バントが内野安打となって無死満塁とし、佐藤の中犠飛でまず1点。なおも一死一、二塁から中東が送り、城丸の中前打で2者が生還した。さらに城丸が二盗を決め、平良の右前打でホームを踏み、この回4点を加えた。5回には先頭の城丸が左越え本塁打を放ってリードを広げた。

久留米商は2回、四球で出た古賀を加藤が送り、早川の左前打で1点を返した。3~6回まではノーヒットに抑えられていたが7回一死から加藤が左翼線二塁打で出ると早川右前打、津福死球で一死満塁とし、納村が押し出しの四球を選んでまず1点。岩丸は三振に倒れたが稲用が左越えに満塁本塁打を放って1点差とした。
9回は先頭の早川がレフト左への二塁打で出塁。津福の右直で三進し、納村の一ゴロで飛び出した早川を刺そうとした三塁送球が野選となって一死一、三塁。ここで岩丸が左前打を放ち同点に追いついた。
その裏、東筑紫学園も先頭の九木田の左越え二塁打を皮切りに二死満塁としたが無得点。久留米商が10回に突き放し、その裏の東筑紫学園の反撃を小野の中前適時打による1点に抑えて振り切った。
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第156回九州地区高校野球福岡大会 準々決勝 (2025年4月2日・水/北九州市民球場) |
チ 一二三四五六七八九十 計 HE 久留米商 0100005016 13110 東筑紫学 2040100001 8142 久留米商 年 打安点 東筑紫 年 打安点 (中)津 福➂ 511 (中)小 野➂ 521 (遊)納 村② 412 (左)与 田② 200 (右)岩 丸➂ 512 投 渡 邊➂ 100 (一)稲 用➂ 624 左 伊 東➂ 100 (三)平 田② 400 (一)九木田➂ 641 (打 松 下➂ 100 (二)岡 野➂ 430 (三 森 山➂ 000 (捕)佐 藤➂ 302 (左)松 尾② 200 (遊)中 東② 400 (投 菰 原➂ 000 (右)城 丸➂ 433 (投 江 口➂ 000 (三)平 良➂ 311 (打 石 橋② 100(投左投)津田➂ 410 (投 持 地➂ 200 投 森 元② 000 (投)古 賀② 000 打 黒 木② 100 (打左瀬戸島➂ 311 (左 中 野➂ 000 (捕)加 藤② 310 (二)早 川➂ 542 球犠振盗残 球犠振盗残 54928 645312 —————————————- 投 手 回 安球振責 投 手 回 安球振責 古賀 3 8206 津田 7 5586 菰原 1.2 3101 渡邉 1.1 1001 江口 0.1 0010 津田 1 4003 持地 5 3340 森元 0.2 1010 ———————————————— ▼試合時間/12:50~16:01 ※公式記録ではありません ※打者名の下線は左打ち、投手名の下線は左投げ |
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6回を終えて7-1。東筑紫学園は毎回の12安打、かたや久留米商はわずかに2安打。コールドゲーム寸前の展開から、久留米商が大逆転をすることを球場にいた誰が予想できただろうか。

逆転の潮流をつくったのは6回裏から登板したエース持地だろう。持地は前チームから主戦として活躍、秋もベスト8入りの原動力となった大型右腕だ。右サイドハンドから力のある直球、スライダーをコーナーいっぱいに決める制球力にすぐれる。ただ久留米商は今大会「持地だけに頼らないチーム作り、試合運び」をテーマの一つに掲げている。そのため持地以外の投手が登板することも多く、3回戦の春日戦でも13ー9という打撃戦を展開した。
この試合は先発の2年生右腕・古賀、救援した左腕の菰原が東筑紫学園打線につかまり6点のリードを許してはいたが、終盤での反攻を見据えて久留米商ベンチはエースを送り込んだ。持地は九木田に内野安打を許したが岡野を二ゴロ併殺打に打ち取り、佐藤は137キロの外角直球で見逃し三振。球速も最速141キロを計測、中軸を三人で退けて流れを引き寄せる。

東筑紫学園の先発はエース津田。津田も前チームから主戦を務める本格派で135キロ前後(この日最速141キロ)の速球にスライダー、カーブなど変化球も多彩。120キロ台の変化球はカットボールか。2回に早川にタイムリーを浴びたが、3~6回は四球の走者を一人出しただけ。三振も7つ奪い、久留米商打線に付け入る隙を与えなかった。
その津田に対し、久留米商は7回一死から加藤が三塁線を破る二塁打で反撃の狼煙をあげると、早川はスライダーを右前に運び、津福は死球。納村は追い込まれながら粘って押し出しの四球を選んで、まず1点。岩丸は三振に倒れたが、4番稲用が初球、136キロの直球を狙いすまして叩くと、左翼スタンド上段に飛び込む特大の一発。あっという間に1点差となった。

東筑紫学園は8回から津田をレフトに回し、渡邊をマウンドへ送り出す。渡邊も前チームからマウンド経験豊富で、ブレーキの利いたスライダーが武器だ。8回は3者凡退に抑え、継投が決まったかと思われた。
9回、先頭の早川はレフト左に打ち上げる。津田の足が止まりかけ、そこから慌てて追い始めたが捕れず二塁打に。レフト方向に吹いていた風に乗ったのかもしれない。津福のライト前へのライナーに城丸が飛びついて好捕、二走の早川はタッチアップで三塁へ。この時、東筑紫学園から二走のスタートが早い(タッチアップしていない)とのアピールがあったが認められなかった。
続く納村のファースト左へのゴロで三走の早川が飛び出したのを見て九木田は三塁に送球するが、早川はきわどくタッチをかわして帰塁。一死一、三塁で岩丸を迎えたところで、東筑紫学園は再び津田をマウンドへ送る。岩丸はここまで津田に対して2三振と合っていなかったが、2-1からの4球目の直球をサード頭上に運ぶ。執念とも言える一打で、遂に6点差を追いついた。

東筑紫学園もその裏、3番九木田が左越え二塁打を放ってサヨナラのチャンスを作る。久留米商は岡野を申告敬遠して塁を詰め、5番佐藤と勝負する。佐藤は送りバントを試みるが二度失敗。最後はバスターに切り替えたが外角直球に手が出ず三振。持地は中東を投ゴロに打ち取り二死二、三塁。城丸とは無理に勝負をせずに歩かせ、平良を二ゴロに打ち取ってピンチを脱した。
延長タイブレークに入ったが6回からの登板で余力のある持地に対し、東筑紫学園はリリーフの渡邊をすでにベンチに下げ、再登板した津田の投球数は140球近く。勝負はこの時点で見えていたのかもしれない。持地の投手前バントを処理しようとした津田がボールを握り損ね、慌てて投げた一塁送球が乱れて久留米商が1点を勝ち越すと、瀬戸島の一塁線へのセーフティスクイズが内野安打となって2点目。加藤が送ったあと早川、津福の短長打で津田を再びKOして勝負をつけた。

東筑紫学園は、ほぼ手中にしていた勝利がこぼれ落ちた感じだろう。敗因を探るのは難しいが、津田は6回まで好投を続けていたが球数が93球に達していただけに、7回から渡邊の起用はあったかもしれない。この日の渡邊のスライダーは低めによく決まっており、打者一巡は抑えられそうだった。
14安打を放った打線は活発だった。九木田は持地からも2安打するなど4安打1打点。追い込まれても簡単にはアウトにならない好打者だ。3安打の岡野は、バントなど小技も利くタイプの4番打者。本塁打を放った城丸も3安打3打点、1番小野も2安打1打点と、この4人が中心となった攻撃を見せた。
久留米商は何といっても稲用の特大の一発が強烈なインパクトを与えた。9番早川も4安打の活躍。攻撃の起点となり、チャンスでは効果的な一打を放って2打点をあげた。先発の古賀は120キロ台後半の直球(同133キロ)にスライダ―、カーブなどを交えたが、この日は厳しいコースでストライクが取れず、甘く入ったところを東筑紫学園打線に捕らえられた。2番手の菰原は110キロ台(同117キロ)の直球と90キロ台のカーブ、緩い球で勝負する軟投派。左腕独特の大きなカーブが低めに決まると、簡単に打てそうにない。
準決勝の相手は福岡大大濠。大会のテーマを貫いて持地以外の投手でスタートするのか、あるいは大一番にはエースをぶつけるのか。両校の投手起用も含めて、興味深い一戦となりそうだ。
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