【観戦記】育徳館10-9東福岡(秋季大会準決勝)




育徳館が終盤に驚異的な粘りを見せて二度の逆転を果たし、初の九州大会出場を決めた。

1点を追う育徳館は9回裏、山下が左前に落として出塁すると、打者隅田のとき捕逸で二進。隅田申告敬遠で無死一、二塁とし島、奥家が連続三振で二死となったが、荒津が右中間を破って二者が生還、逆転サヨナラ勝ちをおさめた。

9回裏二死一、二塁 荒津が右中間に逆転の適時二塁打を放つ

中盤までは東福岡が優位に試合を進めた。3回、二塁内野安打で出た大木を山本が送り、大坪の三塁線を破る二塁打で先制。4回は一死後、近藤が左中間三塁打で出塁し、辻生の一塁線を破る二塁打で生還。さらに大木の右飛で二死三塁とし、山本の左前打でこの回2点をあげた。

6回は吉田左前打のあと近藤投飛、辻生中飛で二死となったが、大木の左翼線二塁打で二、三塁。ここで山本がレフト左を破る二塁打を放って2点を追加し、5-1とリードを広げた。

育徳館は4回一死後、隅田がライト右への二塁打、島も右前に落として一死一、三塁。梅村一直のあと荒津の右前打で1点を返した。4点差で迎えた7回は荒津が三前セーフティバントを決め一塁送球が乱れる間に二進。村上の三ゴロで飛び出し一死一塁となったが、山辺の時にヒットエンドランが決まり(右前打)山辺も送球間に二進して一死二、三塁。高瀬の右前打で1点を返すと、続く小森が左越えに3点本塁打を放って追いついた。

7回裏育徳館一死一、三塁 小森が左越え本塁打を放ちナインに迎えられる

さらに山下が左前に落とし、隅田の時に捕逸で二進。隅田は中飛に倒れたが、島申告敬遠で二死一、二塁から代打山口の右越え二塁打で2人が還って逆転。荒津の一ゴロ失で二塁から代走奥家も生還して8-5とした。

逆転された東福岡は直後の8回、代打草場の右前打、谷の左前打で無死一、二塁。辻生はスリーバント失敗、大木も左飛に倒れたが、山本がセンター右を破る三塁打を放ち2者が生還、さらに外野からの本塁送球が逸れ、バックアップしていた島がオーバーランしていた山本を刺そうとした三塁送球が乱れる間に山本も生還、同点に追いついた。9回は四球で出た瀧川を菅が送り、山下のセンター左を破る二塁打で勝ち越した。

9回表東福岡一死二塁 山下が中越え二塁打を放つ

しかしその裏、あと1球で勝利という場面から2番手・谷が荒津に痛恨の一打を浴びて涙をのんだ。

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第155回九州地区高校野球福岡大会 準決勝
(2024年10月12日・土/小郡市野球場)
チ   一二三四五六七八九 計HE
東福岡 001202031 916
育徳館 000100702x 1013
  東福岡 年 打安点   育徳館 年 打安点
(二)大 木② 530 (遊)高 瀬② 511
(中)山 本
② 435 (中)小 森⓶ 513
(右)大 坪② 411 (右)山 下② 520
(三)瀧 川② 310 (捕)隅 田② 420

(一) 菅 ① 410 (投) 島 ② 310
(捕)山 下② 511 (一)梅 村② 300
(左)吉 田② 310  打 山 口① 112
打左 草場② 210  走三 奥家② 100

(投)近藤結② 320 (二一)荒津② 543
投  谷 ② 110 (三二)村上② 200
(遊)辻 生② 411 (左)山 辺② 310

球犠振盗残         球犠振盗残
32417           54169
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投 手 回 安球振責 投 手 回   安球振責
近藤結 6.2 11374 島   9 16348
谷   2 2142
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▼試合時間/9:58~12:39 ※打者名の下線は左打ち

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6回を終えて5-1。東福岡は育徳館のエース島に毎回の12安打を浴びせて攻め続けており、育徳館は東福岡の先発近藤の前に5安打1得点。育徳館が4点を追いつくより先に、東福岡が3点を取ってコールド勝ちを決めかねない展開であった。

7回の育徳館は、先頭の荒津が三塁線へのセーフティバント。これがサードの一塁悪送球を誘って二進したが、続く村上の三ゴロで飛び出して二塁で刺され、反撃の機運が潰えたかと思われた。しかしここから、育徳館の怒涛の追い上げが始まる。

9番山辺の2-2からの一打はセカンドに転がったが、村上がスタートを切っており、二塁に入ろうとしていた大木が逆を突かれる形となってライト前へ抜け、村上は一気に三進。ライトから三塁への送球間に山辺も二進して一死二、三塁。1番にかえって高瀨が2球目の高めに浮いた直球を右前にはじき返して2-5。続く2番小森も2球目、130キロのやや内寄りの直球に体を預けるように振り切ると、打球は外野芝生席に飛び込んだ。山辺のヒットからわずか4球。あっという間の同点劇だった。

7回裏育徳館一死一、三塁 小森が左越えに同点本塁打を放つ

東福岡の近藤は6回までは130キロ前半(この日最速137キロ)の直球、落差のあるスライダーを武器に7つの三振を奪うなど危なげのない投球を続けていたが、球数が100球を超えたこの回、高瀬・小森と直球が甘く入ったところを痛打された。それでも、まだ同点。東福岡の打力を考えると優位の状況は変わらないと思われた。

東福岡・近藤

しかし育徳館の勢いは止まらない。凡飛と思われた山下の一打がレフト前に落ち、捕逸で二進。隅田を中飛に抑えて二死としたところで、東福岡ベンチは島を申告敬遠。次打者の梅村はこの日2三振と直球にタイミングがあっておらず、妥当な選択と思われた。

ここで育徳館ベンチは左の代打山口を送り込む。山口はスライダーを見送ったあとの2球目、高めに浮いたスライダーを叩くと、打球はライト頭上を越える二塁打となり、ついに逆転。近藤をノックアウトする。初見ではなかなか打つのが難しいと思われた近藤のスライダーだったが、切れ味も少し鈍っていたか。

さらに代わった谷から荒津はファースト左へのゴロ、これを菅が後逸、大木がバックアップして一塁ベースに入った谷に送ったがセーフ、その間隙をついて代走の奥家が俊足をとばして本塁を陥れ、その差を3点に広げた。

しかし東福岡も簡単に引き下がらない。8回、代打草場と前の回からマウンドにあがっている谷、初打席の二人の連打でチャンスをつくる。二死後、山本が3打席連続となる適時打を右中間に運び、相手のミスもからんで自らも生還し同点。9回は四球の走者を二塁に置き、ここまで先発メンバーで唯一ヒットのなかった山下がセンター左を破って勝ち越し。激しく試合が動くなかで1点を追って育徳館の9回裏の攻撃に入る。

東福岡・谷

背番号1をつける谷は120キロ台(同131キロ)の直球にスライダ―、カーブを交える長身右腕。8回は8球で三者凡退に打ち取っていた。この回先頭の山下も三塁後方への飛球に打ち取ったが、三遊左の3人が追う中間に落ちる。捕逸で同点の走者が二塁に進むと、隅田のカウントが3-1となったところで、東福岡ベンチは申告敬遠。この日2安打の4番相手とはいえサヨナラの走者を自ら背負い、東福岡も勝負に出る。島は1-1からバントをするがファール、強打に切り替えるも空振り三振。途中出場の奥家はスライダーを5球続けられ空振り三振。二死一、二塁となって荒津を迎える。

荒津はこの日3安打1打点。さらに前の打席は一ゴロが失策を誘い得点につながるなど、ラッキーボーイ的な活躍をしていた。谷はカーブでストライクをとると、スライダーで空振りをとり2球で追い込む。3球目もスライダーだったが、今度は荒津が逃さなかった。右中間を真っ二つに割り、二人の走者が相次いで生還して試合が終わった。

7回を除いて毎回安打の東福岡が試合を支配するなかで育徳館は7回の集中打で勢いに乗り、最後のチャンスでこの日絶好調の荒津が決めた。東福岡の二盗をストライク送球で二度阻止した捕手の隅田をはじめ、無失策(失策1は島の悪送球)で東福岡の猛攻を最小失点でとどめた粘り強い守備も勝利の遠因となった。

育徳館・島

九州大会に向けては課題も残った。島は130キロ超(同134キロ)の直球に厳しさを欠いて被安打16。後半は100キロ台のカーブを多投して目先を変えにかかったが、東福岡の猛攻を止めることはできなかった。4安打完封した常磐戦のような際どいコース・高さへの出し入れを、もう一度調整したいところ。

打っては4安打3打点と大活躍の荒津だったが、走塁では慎重さを欠くシーンも目についた。2回は捕手の一塁けん制に帰塁できず一・二塁間で挟殺された。4回は1点を返してなおも二死満塁の場面で二塁けん制に刺され、7回は無死二塁からの三ゴロで飛び出してしまった。ただ、これらのミスを引きずらず、バットで結果を出したのは見事だった。

東福岡は出場全員の16安打で9得点をあげ、投手陣も二人で11三振を奪うなど投打で育徳館を上回りながら無念の敗戦。二つの失策と捕逸が得点にからんだほか、外野の前に落ちる不運なヒットが続き、二度の申告敬遠が裏目に出るなど、勝負運にも見放されて涙をのんだ。

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