
大会8日目に入った第106回全国高校野球選手権大会は14日(水)2回戦4試合が行われ、第四試合に登場した福岡県代表の西日本短大附は菰野(三重)に13-0で大勝し、3回戦進出を決めました。夏の甲子園で県勢が2勝をあげるのは2015年以来9年ぶり、同校が2勝以上をあげるのは全国制覇した1992年以来となりました。3回戦は大会11日目(17日・土)の第二試合で京都国際と対戦します。
【試合経過】—————————-
12安打7四死球に相手の4失策をからめて13点を奪った西日本短大附が、村上~中野の継投で菰野を4安打完封して快勝した。
西日本短大附は初回先頭の奥が四球で出ると、続く井上の時にバスターエンドラン。これが三塁線を破る二塁打となって先制した。
3回は一死後、井上四球、古賀右前打で一死一、三塁。高峰死球で満塁とし、村上の左前打でまず1点。なおも一死満塁から斉藤の右犠飛で古賀が還り、安田の右越え三塁打で2者を迎え入れて5-0とリードを広げた。ここで登板した奥野から山下が四球を選んで二死一、三塁とし、三笘の投ゴロが一塁悪送球を招いて6-0。一、三塁から三笘が二盗を決めたあと奥のショート前へのゴロが内野安打となり山下が生還(バックアップしたセカンドが三塁送球する間に奥も二進)。二死二、三塁から井上の遊ゴロで一塁送球が乱れる間に2人が還って、この回8点をあげた。

7回は村上が遊ゴロ失で出塁。斉藤四球、暴投で無死二、三塁とし、安田の二塁強襲安打で無死満塁。山下の右犠飛で1点を加えた。9回は3番手の栄田から高峰が右前打を放ち村上が送った一死二塁から、斉藤の一塁線を破る二塁打で高峰が生還。なおも一死二塁から中野の右前適時打で1点を加え、続く山下の左翼線への飛球をレフトが落球し一死二、三塁。阪東投ゴロのあと、奥が三塁前にセーフティバントを決めて中野が還り、この回3点を追加した。
菰野は初回一死後、菊地が遊ゴロ失で出塁、加瀬の右前打で一死一、二塁としたが、森が二ゴロ併殺打。5回は先頭の松山が中前打で出たが後続が凡退。6回は一死から中川四球、菊地三振のあと、加瀬の一打はマウンド後方の散水栓の蓋に当たって右前に転がる幸運なヒットとなって二死一、三塁としたが森が右飛に倒れ得点できなかった。7回以降は2番手の中野に1安打に封じられて完封を喫した。
第106回全国高校野球選手権大会2回戦 (2024年8月14日・水/阪神甲子園球場) |
チーム名 一二三四五六七八九 計HE 西短大附 108000103 13121 菰 野 000000000 044 西短大附 年 打安点 菰 野 年 打安点 (中) 奥 ② 522(三)中 川② 300 (遊)井上蓮② 411(左)菊 地② 300 (一)古 賀③ 410 打 山 口③ 100 (三)高 峰③ 410(遊)加 瀬② 420 (投左)村上③ 411(投一)森 ② 400 (右)斉 藤② 312(中)松 山② 310 (左)安 田② 322(右)梶 谷② 310 (投 中 野② 111(捕)栗 本② 300 (捕)山 下② 321(一)野 田② 000 (二)三 笘③ 300 投 奥 野③ 200 (打 井 上③ 100 投 栄 田② 100 (二 阪 東③ 100(二)小 山② 300 振球犠盗残 振球犠盗残 37326 51014 ————————————— 投 手 回 安球振責 投 手 回 安球振責 村上 6 3140 森 2.2 5405 中野 3 1010 奥野 4.1 3330 中野 3 1010 栄田 2 4002 ———————————————- ▼試合時間:2時間6分/観衆:12,000人 |
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菰野の先発は左腕エース栄田ではなく、普段は一塁を守る右サイドハンドの森。三重大会では登板がなく、春の東海大会以来の公式戦のマウンドとなった。9番に右の三苫を先発起用、左対策投手を講じていた西日本短大附は肩透かしをくらった格好となった。
森は110キロ前後の緩いスライダーを低めに集めてゴロを打たせてとるのが持ち味。初回、奥が低めの球をよく見極めて四球を選ぶと、井上のときに1-1からバスターエンドラン。これが三塁線を抜けて、スタートを切っていた奥が生還。わずか9球で先制した。
その裏の守りでは、先頭の中川が放った一塁線を抜けようかというゴロをファースト古賀がよく反応して好捕。その後、菊地の遊ゴロ失と加瀬の右前打で一死一、二塁とされたが、森の強打はセカンド正面をついて併殺。村上は立ち上がり直球が高く、スライダーを捕らえられていただけに、先頭打者の出塁を阻んだ古賀のプレーが大きかった。
西日本短大附は2巡目に入った3回、2つの四死球と古賀の右前打で満塁とすると村上、斉藤、安田の適時打・犠飛で4点を追加して森をノックアウト。さらに相手のミスも重なって9-0とし、早くも勝負を決定づけた。
4~7回は2番手奥野の伸びのある直球(この日最速138キロ)とスライダーの緩急をつけた投球に2安打、敵失がからんでの1点に抑えられた。結果論だが、奥野先発ならもう少し競った試合になっていたかもしれない。8回からは左腕栄田が登板。8回は三者凡退だったが、9回に4安打を集めて3点を奪った。福岡大会で対戦機会の少なかった左投手からの3得点は、左腕2人のいる次の京都国際戦に向けて自信と勢いをつける意味でも貴重な得点となった。

大量得点を背景に村上はテンポよく投げ、6回まで散発3安打無失点。130キロなかばの直球も2回以降は低めに集まるようになり、スライダーで打たせてとっていった。10-0となった7回からは2年生右腕の中野がマウンドへ。130キロ前後(同133キロ)の直球にスライダー、カーブが安定して決まった。特にスライダーにキレがあり、3イニングスを被安打1。村上の陰にあって目立たないが、ここまで10イニングスを投げて自責点ゼロと好投を続けている。
西日本短大附はこの日も守備が冴えた。初回の古賀の好守に加え、左投手対策として起用されたセカンド三笘も2回、正面の難しいバウンドのゴロをうまくさばき、3回は一・二塁間を抜けようかという当たりを追いついてアウトにした。7回はサード高峰が三遊間、高いバウンドのゴロを軽快なダッシュで処理、9回には三遊間へのゴロをショート井上がスラディングしながらキャッチ、そのままノーステップ送球で刺した。強打と走力ばかりが注目されがちだが、堅守でリズムをつくれるところも西日本短大附の強さの一つだ。
点差だけを見れば完勝という結果だが、初回をゼロに抑えたことで投打ともにリズムをつかみ、自分たちのペースで試合を運べた結果の大勝だと感じた。敢えて課題を挙げるなら2番手の奥野を打ちあぐんだことだが、これは奥野の好投を褒めるべきだろう。
3回戦の相手は京都国際。ここからは投打ともさらにレベルの高い相手との対戦が続いていく。1点を争う試合が予想されるが、西日本短大附は福岡大会でも準決勝、決勝としびれるような試合をものにしてきた。強打のチームにありがちな脆さはなく、むしろ競り合いで力が発揮できるチームだけに、期待が膨らむ。
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