西短大附が金足農を下し14年ぶりの甲子園白星~’24選手権大会




第106回全国高校野球選手権大会は大会3日目の9日(金)1回戦3試合が行われ、第二試合に登場した福岡県代表の西日本短大附は金足農(秋田)に6-4で勝利し、夏の甲子園で県勢として2年ぶり、同校としては14年ぶりの白星を手にしました。

【試合経過】—————————-
9回表の金足農の猛追を振り切った西日本短大附が、辛くも逃げ切った。

西日本短大附は初回、奥がレフト前に落として出塁すると、続く井上の時に暴投で一気に三進し、井上の左前打で先制のホームを踏んだ。2回と3回の二死二、三塁の好機は逃したが5回、井上が中前に落として出ると、古賀四球で無死一、二塁。暴投で無死二、三塁とし、高峰四球で無死満塁。続く村上の右犠飛でまず1点。なおも一死一、三塁から斉藤の左前打で古賀が還って2点目。安田四球で一死満塁とし、山下の右前打で2者を迎え入れてこの回4点を加えた。

1回裏西短大附無死三塁 井上が先制の左前打を放つ

8回は、この回から登板した2番手花田から奥が四球を選ぶと二盗を決め、井上の犠打で一死三塁。続く古賀がライト前に落として6ー0とリードを広げた。

8回まで4安打に抑えられていた金足農は9回、近藤が左前に落とし、薮田が三遊間を破って無死一、二塁。続く中嶋の右前打で1点を返した(中嶋もライト悪送球の間に二進)。なおも無死二、三塁から相馬の左犠飛で薮田が生還。代打菅原の時に暴投で一死三塁とし、菅原の三ゴロ失で3-6とした。

さらに一死一塁から代走佐藤涼が二盗を決め、武藤の中前打で4点目。打者佐藤晃の時に村上の一塁けん制が乱れて一死二塁。佐藤三振、那須四球で二死一、二塁、長打が出れば同点の場面を迎えたが高橋が二飛。猛追もあと一歩及ばなかった。

第106回全国高校野球選手権大会1回戦
(2024年8月9日・金/阪神甲子園球場)
チーム名 一二三四五六七八九 計HE
金足農  000000004 482
西短大附 10004001x 6104
 金足農  年 打安点  西短大附 年 打安点
(中)高 橋③ 500 (中) 奥 ② 410 
(右)近 藤③ 420 (遊)井上蓮② 431
(左一)薮田② 410 (一)古 賀③ 311
(一)加 藤③ 300 (三)高 峰③ 300 

左 中 嶋③ 110 (投)村 上③ 301
(捕)相 馬③ 101 (右)斉 藤② 421
(投)吉 田② 300 (左)安 田② 200 
投 花 田③ 000 (捕)山 下② 432
打 菅 原③ 101 (二)荒 木③ 400
走 佐藤涼③ 000
(遊)武 藤① 411
(三)佐藤晃② 410
(二)那 須③ 320
振球犠盗残       振球犠盗残
63026       262110
—————————————
投 手 回 安球振責 投 手 回 安球振責
吉田  8 9525 村上  9 8364
花田  1 1101
———————————————-
▼試合時間:2時間17分/観衆:19,000人

—————-

8回までは西日本短大附の完勝ペースだった。初回、奥がレフト前に落として出ると暴投で一気に三進し、井上の左前打で生還。足を絡めた理想的な攻撃で先制点を挙げた。2回、3回も制球に苦しむ吉田から安打・四球をからめて二死二、三塁とプレッシャーをかける。得点こそできなかったが、吉田は4回までに81球を投げることになった。

そして5回。井上がセンター前に落とすと古賀、高峰がいずれもフルカウントから四球を選んで満塁とし、村上が直球に振りまけずライト後方へ大きな犠飛。斉藤も追い込まれながら中に入ってきた直球を叩き、サード右を破った。山下はチェンジアップを一二塁間に運んで、この回一気に4点をあげて突き放した。

西日本短大附・奥(写真は福岡大会)

1番奥は8回にも四球で出るとすかさず二盗を決め、犠打で三進。古賀のタイムリーで生還した。福岡大会でもそうだったように、俊足の彼が出塁すると得点の確率が高くなる。2番井上、8番山下は猛打賞、6番斉藤も2安打。6点のうち4点を3人であげた。中軸3人は1安打に終わったが古賀は初回にスライダーをセンター右に飛ばし、相手に強打の印象を植え付けた。高峰は2つの四球を勝ち取りチャンスメイク。村上は直球をライト後方まで運ぶ2点目の犠飛を放った。無安打に終わった安田も2つの四球を選び、荒木はセカンドの守備で送球ミスが1つあったものの、6つのゴロ・飛球を確実にさばいた。

風も西日本短大附に味方した。5回井上の中前打、8回の古賀の右前適時打はいずれも凡飛だったが、風に押し戻されて外野手の前に落ちたものだった。

金足農の先発吉田は立ち上がりから140キロ超(この日最速145キロ)の力のある直球を投げ込んできた。ただ、そこは福岡大会で佐藤(東海大福岡)、柴田・平川(福岡大大濠)ら140キロ台半ばの直球を投げる投手たちを打ち崩してきた西日本短大附打線。ファールで粘りながら徐々に球速に順応し、3巡目を迎えた5回に一気に攻略した。吉田は直球に力はあったがスライダーで制球が定まらず、5回まで5四球に暴投3つ。球数も増え、疲れが見え始めたところを捕らえられた。

西短大附・村上(写真は福岡大会)

投げてはエース村上が直球、変化球をテンポよく投げ8回まで4安打、三塁を踏ませなかった。特に直球と同じ軌道からスッと沈むカットボール、フォークと見まがうような落差のあるスライダーが冴えた。カットボールは120キロ前後。この球があるから直球は球速差の少ない130キロ前半(この日最速で137キロ)程度の方が効果的なのかもしれない。

ところが9回、状況が一変する。先頭からの三連打で1点を返され、このあたりから球場の雰囲気が金足農一色となっていく。金足農の粘りもさることながら一塁側アルプスの応援にあわせて手拍子が起き、西日本短大附に相当な重圧がかかる。この回だけで3失策。制球のよい村上も暴投を出すなど、浮足立つナインの様子がテレビの画面越しにもうかがわれた。

それでも村上はギリギリのところで踏ん張った。2点差となって一死二塁の場面では佐藤晃をスライダーで三振。那須に四球を与え同点の走者を出したが、高橋を二飛に打ちとって逃げ切った。最後の場面は2点差あったことが大きく、結果的に8回裏の1点が貴重な追加点となった。アウェーの雰囲気のなかでのプレーは苦しかっただろうが、勝ち切れたことは今後の戦いにもつながってくるはずだ。

福岡代表が夏の甲子園で5点以上あげたのは2016年の九州国際大付以来、8年ぶりのこと。ここ数年の県勢は得点力不足に苦しんできたが、過去10年の県代表のなかで最高のチーム打率を誇る西日本短大附が、その呪縛から解き放ってくれた。

Pocket
LINEで送る

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*