
第106回全国高校野球選手権福岡大会は西日本短大附が3年ぶり7度目の優勝を飾り、幕を閉じました。今大会の軌跡をデータなどをまじえながら振り返ってみたいと思います。
福岡県などでインターハイ(北部九州総体)が行われる関係で、例年より早い6月29日(土)に開幕した今年の福岡大会。5年ぶりの開催となった開会式は「参加は希望性」「1校ずつの入場行進なし」というこれまでにない形で行われました。開会式には81校が参加し、主催者・来賓挨拶、優勝旗返還、選手宣誓など約30分で終了。関係者からは熱中症対策として評価する声があった一方、式開催の意義を問う声も聞かれました。

今年も開幕翌日から3日連続で順延となる試合がでるなど、雨の影響を受けました。ベスト16が激突する5回戦に入ってからも3日連続で順延され、準々決勝の東海大福岡—西日本短大附が継続試合になるなど、大会後半にかけても降雨に見舞われました。
シード校が相次いで敗れた昨年に比べると、今年は有力校が堅調に勝ち上がりました。南部ではシード8校のうち5校、北部では7校が県大会に進出。初めて県大会に出場したチームはありませんでした。
ベスト8には春夏連続出場を目指す東海大福岡や夏3連覇を狙う九州国際大付のほか、西日本短大附、福岡大大濠の実力校、春の優勝校・春日、昨秋準優勝の飯塚など前評判の高かったチームが顔を揃えました。そのなかで唯一ノーシードから勝ち上がったのが創部5年目の福岡大若葉。シード校の九産大九産、東筑を破って旋風を巻き起こしました。

雨の影響で一日に同じ会場で4試合実施という、異例の日程が組まれた準々決勝では九州国際大付が近大福岡・田邊投手に完封を喫し、初の甲子園を目指した春日も福岡大若葉の勢いに飲まれて敗退。福岡大大濠は飯塚を逆転で破り、西日本短大附は継続試合の末に東海大福岡を下しました。
近大福岡、福岡大若葉は初めて夏の準決勝に進出しましたが、両校の快進撃もここまで。福岡大大濠と西日本短大附、南部の両雄が決勝で相まみえました。柴田、平川という右本格派2人を擁して優勝を目指した福岡大大濠でしたが、昨秋・今春の雪辱を期した西日本短大附に屈し、35年ぶりの夏の甲子園出場はなりませんでした。
低反発バット導入の影響?
「投高打低」の傾向が顕著
今年からいわゆる「低反発バット」が導入されました。ベスト16のチーム成績(表1)を見るとチーム平均打率は.287と3割を切り、昨年の.321から大きく下がりました。このほか得点(481→441)長打(177→144)と打撃に関する数値は昨年から軒並み下がり、低反発バット導入の影響が想像されます。一方で盗塁数(111→126)と犠打数(184→186)は増加。安打数の減少を機動力でカバーした影がうかがわれます。
失点(213→170)、チーム平均防御率(2.68→1.88)と守りに関する数値は大きくアップ。少なくともベスト16のチーム成績からは、例年にも増して「投高打低」の傾向が顕著となっています。

ベスト8のチーム成績(表2)では、打撃部門におけるすべての項目で平均以上の数字を残し、4つの項目でトップをたたきだした西日本短大附の攻撃力の高さが目を引きます。守備部門でも失策以外で高い数値を示しており、投打のバランスの良さが際立っています。
守備部門では福岡大大濠、近大福岡、九州国際大付がすべての項目で平均以上の数字を残しました。福岡大若葉は盗塁を除いてすべて平均以下の数字でしたが、その盗塁が1試合当たりの数値でトップ。「足攻め」が躍進の背景にあったことが、数字でも裏付けられています。

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