【観戦記】西短大附5-2福大大濠(選手権福岡大会決勝)




◇西短大附5-2福大大濠(選手権福岡大会決勝)

決勝にふさわしい見ごたえのある攻防が展開された末、西日本短大附が福岡大大濠の誇る柴田、平川の2枚看板を攻略。3年ぶりの優勝を決めた。

▼決勝(24日・北九州)〔試合記録
福大大濠 100 010 000=2
西短大附 010 010 03x
=5
【福】柴田→平川
【西】村上

同点で迎えた8回、西日本短大附は4番高峰が遊内野安打で出塁。村上が送って、斉藤三ゴロのあと、安田が2-0となったところで申告敬遠。二死一、二塁から8番山下が右越えに3点本塁打を放ち、これが決勝点となった。

8回裏西短大附二死一、二塁 山下が右越えに決勝の3点本塁打を放つ

先手をとったのは福岡大大濠。初回先頭の大神が二ゴロ失で出塁し、菅野が送って一死二塁。高田三ゴロのあと4番柴田が右前打を放ち二塁から大神が生還した。同点で迎えた5回は中前打で出た9番法村を大神が送り、菅野の中前打で一死一、三塁から高田の左犠飛で勝ち越した。

追う展開となった西日本短大附は2回一死後、6番斉藤が右中間二塁打を放ち、続く安田の右越え二塁打で追いついた。再び勝ち越された直後の5回には9番荒木が死球で出ると奥の三前バントが内野安打となり、井上が送って一死二、三塁。3番古賀の中犠飛で追いついた。

同点になってからは西日本短大附が6回二死二、三塁、福岡大大濠が7回二死一、二塁、8回無死二塁と互いに好機をつくりながら決定打を欠いてきたが、8回裏に西日本短大附の山下がひと振りで試合を決めた。

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「昨秋・今春と敗れた宿敵を今度こそ倒す」「35年ぶりの夏の甲子園出場を今年こそ決める」—。 二つの強い思いがぶつかった2024年夏の決勝は、期待に違わぬハイレベルの激戦となった。

西短大附・村上

西日本短大附はエース村上が先発。初回先頭打者を味方の失策で出した走者を二塁に置き、4番柴田にスライダーをライト前に運ばれて先制点を許す。それでも2回以降は130キロ台前半の直球にスライダー、フォークをまじえて好投。4回には柴田の左前打をきっかけに一死一、二塁のピンチを背負うが、平川をこの日最速の138キロの外角直球で見逃し三振、続く立川は変化球を続けたあと外角直球で空振り三振。追加点を許さない。

福大大濠・柴田

福岡大大濠の先発は柴田。準決勝は登板なく20日の飯塚戦以来、中3日でのマウンドとなった。初回は一死二塁のピンチを背負ったが古賀、高峰をスライダーで連続三振。ただ、やや浮き気味だった直球を2回にとらえられる。斉藤に140キロを右中間に、続く安田には138キロを右越えに運ばれる。この日の直球は140キロ前後、最速も144キロ止まり。本調子ではなかったのかもしれない。

だが、その柴田を守備陣が支える。続く山下の右前打で二塁から本塁をついた安田をライト立川が好返球で刺すと、続く荒木の中前打で三塁を狙った山下をセンター大神が阻止。一気に流れを引き戻す。

2回裏西短大附一死二塁 山下の右前打で安田が本塁をつくがタッチアウト

ただ、柴田は3回も立ち直ることができず先頭の奥に140キロの直球をライト前に運ばれ、これで前の回から5連打。井上が送りバントを決めたところで、平川にマウンドを譲った。一死二塁で迎えた古賀の打球はショート正面への強いゴロ。三塁を狙った奥を高田が冷静に刺し、高峰の三遊間へのゴロはサード菅野がよく手を伸ばしてカットし一塁へ正確な送球。内野陣にも好プレーが出て勝ち越しは許さない。

福大大濠・平川

1-1のまま迎えた5回、福岡大大濠は2本のヒットなどで一死一、三塁とし、高田の左犠飛で勝ち越し。このとき、二塁を狙った一走を刺そうとしたショート井上の二塁送球が乱れ、菅野が一気に本塁をついたがタッチアウト。西日本短大附も最小失点で食い止める。

その裏、西日本短大附もすぐに反撃。荒木死球のあと奥の三塁前バントが内野安打となり、井上が送って一死二、三塁。ここで古賀が放ったセンター右への当たりは完全に抜けたと思われたが大神が俊足を飛ばして好捕。犠飛の1点にとどめる大きなプレーが飛び出した。

その後は両校によるしのぎあいが続く。6回福岡大大濠の攻撃では、永田のサード右への一打は難しいバウンドだったが高峰が柔軟なグラブさばきで処理。7回一死一塁では法村の三前バントを素早くダッシュして二塁で刺すなど、この日の高峰は守備でチームに貢献した。西日本短大附も6回二死二、三塁と迫ったが、平川は得意のスライダーで荒木を空振り三振に仕留め、7回は三者凡退と懸命の力投を続ける。

1回表福大大濠二死二塁 柴田の右前打で大神が先制のホームイン

8回表、福岡大大濠は先頭の高田が左越え二塁打。打席にはこの日2安打の4番柴田を迎えたが、このピンチでも村上は冷静だった。柴田を2球で追い込むとワンバウンドになるスライダーを振らせて空振り三振。ボールが先行した永田とは無理に勝負をせずに歩かせ、豊田・平川の右打者二人との勝負を選択。豊田はスライダー3つで三球三振、平川は遊ゴロに打ち取った。この日はスライダー、フォークとも右打者の外角低めいっぱいに決まっており、ここでもその威力を発揮した。

その裏、西日本短大附は高峰がショート左へ強打、飛びついた高田のグラブをはじく内野安打となって出塁。村上が初球で送りバントを決め、斉藤三ゴロで二死二塁。この日二塁打2本を放っている安田のカウントが2-0となったところで福岡大大濠ベンチは申告敬遠を選択、山下との勝負に挑む。

ただ山下も第一打席で柴田のスライダーをライト前に、第三打席では平川の直球を一二塁間に運ぶなど、よくバットが振れていた。2-1からファールで2球粘ったあと、6球目の高めスライダーを強振すると弾丸ライナーが右翼スタンドに吸い込まれたがポールのわずかに外。球場のどよめきが残るなかで再び投じられた130キロのスライダーを、今度はポールの内側に打ち込んだ。

8回裏西短大附二死一、二塁 山下が右越え本塁打を放ち生還

これまで柴田か平川、いずれかを打ち込んだチームはあったが、福岡大大濠に勝つには2人を1試合のなかで同時に打ち崩さなければならなかった。その極めて厳しい条件をクリアしたのが、西日本短大附だった。この日放った11安打は奥のバントヒット2本をのぞいて、すべて芯で捕らえた強烈な打球。「打ち崩した」といってよい内容だった。

福岡大大濠は4~5点は取って投手陣を援護したかったが村上の力投の前に2得点に終わり、最後は打力に勝る西日本短大附打線に屈した。5回戦以降、柴田が不調のときは平川が、平川が打ち込まれた時は柴田が、それぞれカバーしあうように好投を続け、この試合でも3回途中から登板した平川が1失点で耐えてきたが秋春と対戦のなかった山下に痛恨の一発を浴び、夏の甲子園出場の悲願はまたしてもならなかった。

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