【観戦記】近大福岡1-0九国大付(選手権福岡大会準々決勝)




◇近大福岡1-0九国大付(選手権福岡大会準々決勝)

近大福岡のエース田邊が九州国際大付を2安打完封して夏の福岡大会3連覇を阻止、夏の大会で初となるベスト4進出を決めた。

▼準々決勝(20日・北九州)〔試合記録
九国大付 000 000 000 =0
近大福岡 100 000 00x
=1
【九】松元→山田→田端【近】田邊

近大福岡は初回二死後、坪根が左前打で出塁。続く4番河村が左越え二塁打を放ち、先制した。その後も3回二死満塁、4回一死二塁、7回二死三塁、8回一死二塁と再三にわたって得点圏に走者を進めながら追加点が奪えなかったが、先発の田邊が九州国際大付に得点を許さず、初回の1点を守り切った。

1回表近大福岡二死一塁 河村の左越え二塁打で坪根が生還

九州国際大付は初回、先頭の秀嶋が四球。平間の送りバントが三邪飛となったあと牟禮が中越え二塁打を放って一死二、三塁と先制のチャンスをつかんだが、三宅の二直で牟禮が飛び出して併殺。先制機を逃した。3回は四球で出た8番内山を中上が送り、秀島中飛で二死三塁。その後、平間四球、牟禮死球で二死満塁としたが三宅が一ゴロに倒れて得点できなかった。

5回は二死から秀嶋が四球を選び、捕逸で二進したが平間が三振に倒れた。8回は一死後、秀島が左前打を放ち平間が送って二死二塁としたが、牟禮が三振。3人の継投で近大福岡を1点に抑えた投手陣の力投に応えることができず、夏の大会では3年ぶりに黒星を喫した。

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近大福岡・田邊は結果だけでみれば2安打完封だったが、その道のりは決して平たんなものではなかった。

近大福岡・田邊

この日の田邊は、130キロ台なかば(この日最速138キロ)の直球が序盤から高く浮いた。先頭の秀嶋にいきなり四球を出し、一死後、ここまで大会2本塁打の牟禮にカーブをセンター後方に運ばれる。内角を直球を突いた後のカーブだったが、牟禮は変化球がくると読んでいたか、しっかりと振り切った。一死二、三塁から続く三宅にもスライダーをとらえられたが、これがセカンド正面へのライナーとなり、飛び出していた二走の牟禮が戻れずに併殺。辛うじてピンチをしのいだ。

3回は先頭の内山に死球。犠打と中飛で二死三塁から、平間に四球、牟禮に死球を与えて二死満塁とされるが、三宅には直球2つを低めに決め、最後はスライダーで一ゴロに打ち取って、ギリギリのところで踏ん張る。

直球の制球がままならないなか、カーブでストライクがとれるようになったのが大きかった。4回以降はカーブでカウントを整えながら、切り札のスライダーで打ち取っていく投球が続いた。ただ、九州国際大付の各打者は追い込まれてからもファールでついていく。そのため球数は増えたが根負けして四球を出すこともなく、辛抱強く投げて4、6、7回は三者凡退。流れをガッチリと維持する。

最後の山場は8回。一死から秀嶋に左前打を許すと九州国際大付は平間に送らせ、牟禮の一打に期待をかける。牟禮には1-1からスライダーで空振りを奪うと、内角を直球で突いて2-2。初回はここで外へのカーブを打たれていたバッテリーは、直球勝負を選択。ここも変化球を待っていたか、牟禮のバットは空を切った。

九国大付・松元

九州国際大付の先発は、今大会初登板の2年生・松元。120キロ台後半(同132キロ)の直球にチェンジアップを交える左腕。初回は二死をとったあと坪根に直球を左前に運ばれ、河村には2球続けたチェンジアップを左越えに運ばれた。3回二つの四死球で一死一、二塁となったところで降板した。

救援に立ったのも同じ2年生の右腕山田。引き継いだピンチを二つの二ゴロでしのぐ。4回も先頭打者を味方の失策で出したが、120キロ台後半(同131キロ)の力のある直球とスライダーで後続を断ち、5回は三者凡退と好投を見せた。

6回表の攻撃を3人で終えた九州国際大付は、流れを打開すべくエース田端をマウンドへ送り込む。ただ、この日の田端の調子は今一つのように映った。一死から中川に四球を与えると二盗は内山の強肩が阻止したが、続く下見にも右前に運ばれる。7回は先頭の橋本に三遊間を割られ、犠打2つで二死三塁とピンチを背負う。9回も先頭の坪根に四球を与えて犠打で二塁へ進められた。いずれも後続は断って得点こそ許さなかったが、チームの攻撃に勢いをつけるには至らなかった。

九国大付・田端

九州国際大付は春の福岡大会でも準決勝で春日の前田に2安打に抑えられて敗退。田端という絶対的なエースを擁しながらも得点力不足に悩み、春の大会後は牟禮・平間・上岡ら1年生も起用しながら打線の活性化を図ってきた。今大会はその牟禮の活躍で勝ち上がり、この試合も先発メンバーのうち7人が2年生以下。ただ、2年生以下を主力とするチームではベスト8が限界だった。

昨夏は37イニングスを投げて大車輪の活躍を見せた田端は、今年はわずか10イニングス、自責点ゼロのまま大会を終えた。チームも5試合で失点2。ベスト4に進出したどのチームよりも少ない失点ながら、準決勝に進むことはかなわなかった。

9回表九国大付二死 田端の一ゴロでベースカバーに入った田邊がベースを踏んで試合終了

近大福岡は何といっても田邊の投球に尽きる。5回戦までをほぼ一人で投げ、球数は8強に残った投手のなかで最多の462球。直球が高めに浮き疲労の色も隠せなかったが、粘り強く投げ切った。5つのゴロを無難にさばいたファースト平田、三遊間の強い当たりを倒れ込みながら好捕したサード橋本、大きな飛球を快足を飛ばして抑えたセンター辰嶋、ライナー性の難しい当たりをスライディングキャッチでアウトにしたライト河村など、バックも無失策で盛り立てた。

昨年のベスト8を上回り、夏の大会で初めて準決勝に進出。また新たな歴史の扉を開いた近大福岡が次に挑むのは、強打の西日本短大附だ。

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