【観戦記】福大大濠5-3祐誠(選手権福岡大会5回戦)




◇福大大濠5-3祐誠(選手権福岡大会5回戦)

前半は祐誠が優位に試合を進めたが、福大大濠が終盤に逆転。苦しみながらも準々決勝進出を果たした。

▼5回戦(17日・久留米)〔試合記録
祐  誠 110 010 000 =3
福大大濠 100 010 12x 
=5
【祐】椎葉→沖田→坂田
【福】柴田→平川

同点で迎えた8回、福大大濠は二死から2番豊田が右前打で出ると大神も中前打で続き二死一、三塁とし、高田が右前打を放って勝ち越した。なおも二死一、三塁から柴田申告敬遠で満塁。続く永田が押し出し四球を選んでこの回2点をあげて、逃げ切った。

8回裏福大大濠二死一、三塁 高田が決勝の右前適時打を放つ

先手をとったのは祐誠。初回一死後、樋口が捕前内野安打で出ると、大嶋三振の時に二盗を決め、4番吉原の左中間二塁打で先制のホームを踏んだ。同点とされた直後の2回は6番坂井が左前打で出塁し、打者清水の時に捕逸で二進し、清水が送って一死三塁。8番井手の投ゴロで本塁を突いた坂井が捕手の落球で生還、勝ち越した。5回は井手が中前打、椎葉はスリーバント失敗、靍田右飛で二死となったが、打者樋口の時に井手が二盗を決め、樋口の右前適時打で3-1とリードを広げた。

福大大濠は初回一死後、豊田が中前打で出ると打者大神の時に暴投で二進。さらに大神の右飛で三進し、高田の中前打で同点とした。2点を追う5回は大神が中前打で出塁し、けん制悪送球で二進。ここで登板した2番手の沖田から高田が四球を選び、柴田三振のあと二死一、二塁から永田の中前打で1点差とした。7回は四球で出た大神を送り、柴田申告敬遠、永田中飛のあと平川の中前打で追いつき、8回の勝ち越しにつなげた。

投げては5回途中から登板した2番手の平川が一人の走者も許さず、祐誠に追加点を与えなかった。

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祐誠は春の大会3回戦で福大大濠と対戦、柴田に9回途中まで5安打に封じられ完封負けを喫していた。その打線が初回から柴田の直球、変化球をとらえた。

福大大濠・柴田

柴田は6日の3回戦(福岡工戦)以来の登板。140キロ台の直球(この日最速146キロ)にスライダー、カーブを交え調子は普段と変わりなさそうだったが、先頭の靍田にいきなりスライダーを痛打される。自らのグラブをはじいた打球を拾ってアウトにはしたが、この一打で祐誠打線が勢いづく。内野安打で出た樋口が二盗を決め、4番吉原が145キロの直球をショート頭上にはじき返し、わずか11球で先制した。

柴田は2回も先頭の坂井に143キロの直球を三遊間に運ばれ、一死三塁から打者井手の時にヒットエンドランの奇襲を受ける。井手の当たりは投ゴロ、柴田は本塁送球しタイミングはアウトだったが、法村のミットからボールがこぼれてセーフ。5回は井手の中前打から二死二塁とされ、樋口には詰まらせながらも右中間に落とされて3点目。打ち込まれた感じではなかったが、1-3となったところで福大大濠ベンチは柴田を諦めて平川を投入する。

福大大濠・平川

平川は140キロ超(同147キロ)の直球に加え、落差の大きなスライダーが武器。右打者に当たるのではないかというところから、大きく軌道を変えてストライクゾーンに落ちてくる。祐誠の右打者はこのスライダーを引っかけてのゴロ、あるいは直球に差し込まれての凡飛を重ねて、一人の走者を出すこともできなかった。

それでも祐誠は5回表までに2点をリードを奪い、願ってもない展開となった。このまま逃げ切りたかったが、好調の福大大濠打線がそれを許さなかった。

祐誠・椎葉

先発の右腕椎葉は今大会初登板。満を持してこの一戦にぶつけてきた。130キロ超の直球(同135キロ)にスライダーを交えて福大大濠打線に挑んだが、初回から毎回安打を許す苦しい投球。ただ初回こそ1点を失ったものの要所ではスライダーを低めに決め、2回二死一、二塁、3回二死満塁、4回二死一、三塁と再三のピンチをしのいでいく。5回大神に中前打を浴び、自らのけん制悪送球で二進を許したところで降板したが、粘り強い投球で先発の役割を果たした。

祐誠・沖田

2番手は沖田。プレートの一塁側に軸足を置き、そこからさらにインステップしてくる変則左腕。春の大会の福大大濠戦では先発し、3イニングスを無失点に抑える投球を見せている。直球は120キロ台(同124キロ)だがスライダー、カーブ、チェンジアップと多彩な変化球を使って打たせてとっていく。登板直後の5回は永田に変化球を中前に運ばれて1点を失い、なおも二死二、三塁とされたが平川、立川をチェンジアップで連続三振。6回は一死から菅野に右前打を浴びたが、自らのけん制で刺してピンチの芽を摘む。ただ7回は四球から得点圏に走者を背負い、平川に中前打を浴びてついに追いつかれると、8回は二死から3連打を浴びて力尽きた。

福大大濠は15安打。1~4番で10安打と上位打線がよく当たっている。祐誠投手陣の粘り強い投球、懸命な守備に手を焼いたが、それでも焦ることなく毎回のようにチャンスをつくり続け、終盤ついに捕らえた。

1回表祐誠二死二塁 吉原が先制の左中間二塁打を放つ

最後は福大大濠打線の力に屈したとはいえ、祐誠には打倒大濠の執念を至るところで感じた。好調の5番柴田には三度の申告敬遠を行い、徹底して勝負を避けた。7回同点に追いつかれなおも二死一、二塁の場面では、立川の右前打で逆転のホームを狙った二走の柴田をライト吉原が好返球で刺した。8回一死一塁では大神の中前打で三塁を狙った豊田に対し、センター坂井が三塁へダイレクトでものすごい送球をみせた。間一髪でセーフにはなったが、その強肩で球場を沸かせた。

0-7で5安打完封負けを喫した相手に鮮やかな先制攻撃をくらわせ、必死のディフェンスで僅差の試合に持ち込んだ祐誠。その夏は、春からの大きな成長を存分に示して終えた。

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