’22選手権福岡大会を振り返る①~総括編




第104回全国高校野球選手権福岡大会は九州国際大付の6年ぶり8度目の優勝で幕を閉じました。今大会の軌跡をデータなどをまじえながら振り返ってみたいと思います。

 

 

今年の夏の大会は全校が一堂に会した開会式こそ見送られたものの、昨年のような入場制限がなくなり、ブラスバンドの演奏も認められるなど、コロナ以前の風景が少しずつ戻ってきました。
大会は今年も3回戦まで南北に別れて行われれました。今大会は連合チームがなく、7年ぶりに出場校全てが単独チームとなりました。春の大会は部員不足で不出場だった輝翔館は1年生だけでチームを結成して初戦を突破し、話題を呼びました。試合途中で雨に見舞われた小倉西—福岡魁誠、小倉商—鞍手竜徳の2試合で、選手権福岡大会では初の継続試合が適用されました。3回戦ではシード柳川が西南学院に敗れる波乱があったほか、春のベスト8の福岡工は福工大城東に、好投手吉川を擁した小倉も飯塚に敗れました。

県大会行きを決めた32校の中には、平成16年の学校統合後初の進出となった門司大翔館(統合前の門司商としては平成元年に出場)のほか、昭和55年以来となる明善、昭和57年以来となる西南学院、昭和62年以来となる早良、平成6年以来となる香住丘など久々に夏の県大会進出を果たしたチームも多くみられました。シード校は柳川を除く15校が顔を揃えました。

4回戦では春の大会4強の東海大福岡が久留米商・中島に5安打2点に抑えられて敗退、春の筑後地区大会を制したシード大牟田も育徳館にサヨナラ負け。春日はエース飯田を熱発で欠きながら春8強のシード真颯館に打ち勝ちましたが、新型コロナ感染者が部内で広がったことを受けて5回戦の福岡第一戦を辞退。残念ながら今年もコロナに青春の1ページを奪われた球児を生んでしまいました。

シード校同士の対戦が始まった5回戦では、見応えのある試合が続きました。九州国際大付ー福工大城東、東筑ー福岡大大濠、飯塚—自由ケ丘、筑陽学園ー折尾愛真の試合では投手戦が繰り広げられ、いずれも1点差で決着。福工大城東・内田、福岡大大濠・森本、自由ケ丘・斎藤、折尾愛真・田端などの好投手がベスト8を目に姿を消しました。ノーシードで勝ち上がってきた西南学院も0-0で迎えた9回、小倉工にサヨナラ負け、東海大福岡を破った久留米商も延長14回タイブレークの末に育徳館に逆転サヨナラ負けを喫し、涙をのみました。

【飯塚-筑陽学園】8回裏筑陽学園一死満塁 高倉が逆転本塁打を放ち生還

ベスト8には春夏連続出場を狙う九州国際大付をはじめ春の優勝校・西日本短大附、準優勝校・小倉工、春の地区大会を制した東筑筑陽学園、秋の準優勝校・福岡第一、同4強の飯塚といった実力校が名を連ねたほか、ノーシードから育徳館が進出しました。

準々決勝では九州国際大付が東筑との打撃戦を制し、小倉工は福岡第一に快勝。昨夏準決勝の再現となった一戦は飯塚が西日本短大附に雪辱を果たし、筑陽学園は育徳館の長打攻勢の前に序盤リードを許しましたが終盤に逆転し、それぞれ準決勝に進出しました。

準決勝では、九州国際大付が序盤に今大会初めてリードを許しましたが、中盤以降に小倉工のエース山田を攻略し、野田が好救援を見せて逆転勝ち。筑陽学園は5点差を追う8回裏に満塁本塁打などで一挙7点をあげて逆転すると、同点に追い付かれた9回裏にはサヨナラ3点本塁打が飛び出す劇的な勝利を収めて決勝へ進出しました。決勝は一転、投手戦となり7回まで両校ゼロ行進が続きましたが8回に九州国際大付が決勝点をあげて筑陽学園を下し、春夏連続出場を決めました。

数字で振り返るベスト8の戦いぶり

校名 試合 得点 打点 打率 HR 盗塁 犠打飛 失点 失策
九国大付 7 7.14 6.71 .356 0.86 0.57 2.71 1.43 1.0
筑陽学園 7 6.0 5.43 .271 1.00 1.43 3.43 3.57 0,71
飯塚 6 8.17 7.5 .367 0.83 1.83 3.17 3.83 1.0
小倉工 6 6.33 5.33 .376 2.0 2.5 3.17 0.83
東筑 5 8.40 7.6 .373 0.6 1.4 2.4 3.8 0.2
西短大附 5 6.8 6.6 .379 0.2 0.6 2.6 2.8 0.8
育徳館 5 7.0 6.6 .289 0.4 2.6 2.2 3.4 1.2
福岡第一 4.00 3.75 .258 0.75 1.0 2.0 2.75 1.0
平均値 6.73 6.19 .333 0.58 1.43 2.63 3.09 0.84

(1試合あたりの平均値。赤字は各項目の最高値、背景の色付きは平均値以上であることを示す)

ベスト8以上のチーム成績は上の表の通りです。優勝した九州国際大付は盗塁、失策以外の項目で平均を上回る成績を残していますが、中でも失点が8校中で唯一の1点台。エースへの依存度が高かった筑陽学園、飯塚、小倉工などに対し、エース香西がコロナ感染で離脱しながら池田、野田らがその穴を見事に埋めました。圧倒的な打力で九州の頂点に立った昨秋とは違い、今大会は投手陣の層の厚さで勝ち取った優勝と言えます。

九国大付・池田

筑陽学園はチーム打率2割台、平均失点は3点台半ばと平均を下回っていますが、チーム本塁打と犠打飛は8強の中で最多。走者を確実に送って得点につなげ、飯塚戦に代表されるような効果的な一発で勝利を引き寄せてきました。先制されることが多く苦しい試合が続きましたが、劣勢を跳ね返す粘り強さは8強の中で随一でした。江口監督最後の大会ということもあり、数字だけでは測れない力が作用したように思います。

打撃面では飯塚と東筑が高い数値を残しました。東筑は平均得点、平均打点でトップ。飯塚は攻撃に関する全ての項目で平均を上回りました。その強打で東筑は3試合連続2桁得点で勝ち上がると福岡大大濠の好投手・森本を攻略。九州国際大付・池田からも4点を奪いました。飯塚も小倉の好投手・吉川、春の優勝投手である西日本短大附・江口らを打ち崩してきました。
しかし最後は投手陣が踏ん張れませんでした。東筑はエース高﨑の調子が上がらない中で堂満、松山、藤井らの救援陣がチームを支えてきましたが、九州国際大付に10点を奪われて敗退。飯塚はエース白浜が降板した後の投手たちが、筑陽学園の勢いに飲み込まれてしまいました。準決勝で先発の池田が4点を失った後に登板した野田が得点を許さず流れを変えた九州国際大付と、このあたりで差が出たように感じます。

【育徳館-筑陽学園】3回表育徳館無死、山口が右越え本塁打を放ちホームへ

小倉工はチーム打率が3割6分7厘で、西日本短大附に次ぐ数字を残しました。8強の中で唯一ホームランは出ませんでしたが、準々決勝で福岡第一の3投手から8点、準決勝では九州国際大付・池田から4点を奪うなど打力のあるところを示しました。西日本短大附はチーム打率がトップ。初戦から4試合連続で2桁安打、準々決勝の飯塚戦でも白浜から9安打を放つなど打線は活発でしたが、同じ攻撃型チームの飯塚や東筑と比べると得点・打点で劣っており、得点に結びつける力がやや不足していたように思います。

育徳館は打率2割台ながら平均得点、打点が平均を上回っており、盗塁や四球、敵失などを得点に結びつけてきたことがうかがわれます。久保・前田・川波の継投で勝ち上がってきた福岡第一は失点が少なく、九州国際大付に次ぐ数字を残しましたが、4強以上を目指すには打力が不足してました。

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