【観戦記】九州国際大付1-0筑陽学園(選手権大会決勝)




【観戦記】九州国際大付1-0筑陽学園(選手権大会決勝)

両校とも走者を出しながら決定打を欠いたまま終盤に入ったが、8回に決勝点をあげた九州国際大付が筑陽学園を振り切り、6年ぶりに夏の福岡を制した。

▼決勝(28日・北九州)
筑陽学園 000 000 000=0
九国大付 000
000 01x=1
【筑】木口【九】池田

両校無得点で迎えた8回、九州国際大付はこの回先頭の6番大島が左前打で出ると、続く浅嶋の時にヒットエンドラン(投ゴロ~一塁アウト)で二進。池田は三振に倒れたが、途中出場の9番白井が左中間を破る二塁打を放ち、これが決勝点となった。

8回裏九国大付二死二塁 白井が決勝の左中間二塁打を放つ

序盤から九州国際大付が押し気味に試合を進めた。初回三ゴロ悪送球で出た隠塚を中上が送り、黒田の一ゴロで二死三塁と先制機を迎えたが野田が三振。2回は二死から浅嶋が右前打、池田も左前打で一、二塁としたが尾崎が遊ゴロ。4回は野田が投手を強襲した打球が一塁側ファールグランドに転がる二塁打を放ち、佐倉申告敬遠で無死一、二塁と絶好のチャンスをつくったが、6番大島の時に野田が捕手のけん制に刺され大島も三振。その後、連続死球で二死満塁としたものの尾崎が三振に倒れて得点できなかった。その後も5回と6回は二死一、二塁、7回は一死一、二塁と再三塁上を賑わしながら決定打を欠いてきたが、ようやく8回に決勝点を奪い、そのまま逃げ切った。

2回まで走者を出せなかった筑陽学園は3回、7番小野原がセカンド左への内野安打で出ると上津原が送って一死二塁としたが後続が凡退。4回は二死後、小森が遊ゴロ失で出ると木竹も四球を選んだが野田がニゴロ。6回は2番網治がファースト前にドラッグバント、これが一塁悪送球を誘って無死二塁(記録は内野安打と失策)としたが、矢野遊直のあと打者酒見(小森の代打)の時に網治が三盗に失敗してチャンスを逃した。

九州国際大付の先発池田は4度得点圏に走者を背負ったが、要所を締めて3安打完封。筑陽学園の木口も毎回のように訪れるピンチで決定打を許さなかったが、最後に力尽きた。

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筑陽学園を3安打に抑えて完封した九国大付・池田

準決勝の小倉工戦では野田が見事なリリーフを演じた九州国際大付。野田に代わってマスクを被った毛利にも一発が出た。そのため決勝も野田-毛利のバッテリーでくることも考えられたが、先発のマウンドに上がったのは4試合連続で2年生の池田だった。

準決勝の小倉工戦では4回6安打4失点で降板した池田だったが、この日はテンポよく打たせて取る持ち味を存分に発揮。120キロ台後半(この日最速131キロ)の直球でコーナーいっぱいをつき、チェンジアップを低めに集めて打たせて取っていった。いい当たりもされたが、高さ・コースがきわどいところに来ている分、野手の守備範囲に飛んだ。時折声をあげながらの投球で、気迫も十分だった。

筑陽学園の先発は、もうこの人しかいない。エース木口。ここまで打者一人を除いて全て一人で投げてきているだけに疲労も相当たまっているだろうが、そんな様子をおくびにも出さず初回から快調に飛ばしていった。130キロ台後半(同140キロ)の力強い直球で内外角を突き、一度浮き上がって落ちてくるスライダーを外角低めに投じる、絶好調時に近い投球を見せた。内角を厳しく攻めた代償として3つの死球を与えたが、その効果はてきめんで、外角の直球やスライダー、スプリットなどが生きた。幾度となくピンチを背負ったものの、池田とは対照的に表情を変えることなく打者に向かって行った。

九国大付を1点に抑える力投を見せた筑陽学園・木口

それでも押し気味に試合を進めたのは九州国際大付。7回まで放ったのは4安打にとどまったが、四死球や敵失をからめて3回を除き毎回のように得点圏に走者を進めた。ただ、木口も決定打を許さない。2回は二死一、二塁で9番尾崎を139キロの直球で詰まらせて遊ゴロ。4回二死満塁でも再び尾崎を内角直球・外角スライダーで揺さぶり、最後は外角直球で空振り三振に仕留めた。

この試合、九州国際大付は9番に好機で回ってくる巡り合わせで、6回も二死二塁で尾崎にまわってきた。二度の好機に凡退、この日も2失策と精彩を欠く尾崎に代えて、九州国際大付は代打白井を送り込む。木口は白井こそ四球で歩かせたが、好打者の隠塚を変化球で追い込み、最後は高めの直球を振らせて三振。7回一死一、二塁で迎えた佐倉に対してもスライダーを低めに集めたあと、139キロの直球でニゴロ併殺打。直球とスライダーを内外に散りばめた絶妙な配球と、そこにきっちりと投げ込む制球力で、強打の九州国際大付に得点を与えなかった。

筑陽学園は6回先頭の網治がドラッグバント。網治は左打席から一塁方向に走りながら引っかけるように打球を転がすドラッグバントの名手で、準々決勝、準決勝でも内野安打にしている。この時もファーストの佐倉が処理したが、自らも打球をさばこうと前進したセカンド隠塚のベースカバーも遅れ、悪送球を誘って一気に二進。筑陽学園にとっては願ってもないチャンスが訪れた。しかし、矢野は初球のバントをファールにしたあとバスターに切り替えたが、ショート正面のライナーとなり一死。続く小森が初球の変化球を空振りしたところで筑陽学園ベンチは代打に酒見を送って来たが、2球目の高めの直球を空振りし、スタートを切っていた網治も三塁アウト。エンドランのサインだったのかどうかは不明だが、筑陽学園は大きなチャンスを逃した。

ピンチにマウンドに集まる筑陽学園内野陣

7回は一死からマハチ棚橋がライト線に落として出ると小野原に送らせ、飯塚戦でのサヨナラ3ランを放った高木を代打に送り出す。池田は初球外角直球から入り、2球目でファールを打たせると、3球勝負に出て外角直球で空振り三振。バッテリーの強気の攻めで、筑陽学園の勢いを封じた。

そして8回、先頭の大島がバットの先ながらレフト前に落とすと、浅嶋の時にヒットエンドラン(投ゴロ)をかけて二塁に送る。池田は三振に倒れたが、白井は2-1から高めに入って来たスライダーを見逃さず、左中間を真っ二つに割る文句なしのタイムリーヒットで九州国際大付がついに均衡を破った。

9回表、これまで幾度となく驚異的な粘りを見せてきた筑陽学園だったが4球でツーアウト。5番木竹の打球はバックスクリーンに向かっていったが、あとひと伸びがなくフェンス際で黒田が捕球するとマウンドで九州国際大付の選手たちの歓喜の輪が広がり、1時間48分という短くも中身の濃い試合が終わった。

閉会式では優勝した九国大付に優勝旗、優勝盾、賞状が贈られた

池田は3安打に1四球、失策の走者を2人出しただけで三塁を踏ませなかった。3安打のうちまともに芯を食ってのヒットは、小野原のセカンド左を抜けようかという当たり(隠塚が飛びついて好捕し内野安打)だけ。直球は130キロ程度、これにチェンジアップとカーブという緩い変化球があるだけだが、コーナー低めに球を集めることがいかに大切なのかを教えてくれたような投球だった。ブルペンでは新型コロナ感染でベンチ入りを外れ、この日から再びベンチ入りしたエース香西も肩をつくっていたが、その香西に出番を与えなかった。

木口は準決勝までの6試合、打ち込まれる試合も多かったが、最後の舞台で最高の投球を見せた。筑陽学園は4回戦以降はすべて3点差以内の苦しい試合が続き、準々決勝・準決勝は終盤までリードを許す展開だったが最後まで衰えることのない闘志で食らいつき、勝利を掴んできた。選手のことを知り尽くした江口監督の選手起用もズバズバとあたり、ベンチと選手が一体となって決勝の舞台まで駆け上がったが、あと一歩及ばなかった。

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