【観戦記】九州国際大付9-4小倉工(選手権大会準決勝)




【観戦記】九州国際大付9-4小倉工(選手権大会準決勝)

序盤リードを許した九州国際大付だったが、中盤以降に小倉工のエース山田を攻略。逆転勝ちで春夏連続の甲子園出場に王手をかけた。

▼準決勝(26日・北九州)
小倉工  201 100 000=4
九国大付 001 032 30x=9

【小】山田→渡辺→小畑【九】池田→野田
〈本〉佐倉、毛利(九)

3点を追う九州国際大付は3回、この回先頭の2番中上が二塁内野安打。黒田も中前打で続くと野田が送って一死二、三塁とし、5番佐倉のニゴロの間に中上が還って1点を返した。再び3点差となった5回は1番隠塚が左中間二塁打で出ると、続く中上の遊ゴロで三塁を狙い、これを刺そうとしたショートからの送球が乱れて無死一、三塁。3番黒田がライト右への二塁打を放ち隠塚が還ってまず1点(一走中上は本塁狙うも憤死)。なおも一死二塁から野田が左前打で続き、佐倉が左翼線二塁打を放って黒田が生還。一死二、三塁から大島の中犠飛で同点に追いついた。

6回は一死後、9番尾崎が右前打。隠塚の右翼線二塁打で一死二、三塁から中上のニゴロの間に隠塚が生還。ここで登板した渡辺から黒田も中前打を放って、この回2点を勝ち越した。7回にはこの回から登板した3番手小畑から佐倉が右越え本塁打。さらに中前打で出た大島を浅嶋が送ったあと、途中出場の8番毛利も左越え本塁打を放ってさらに2点を加えて突き放した。

7回表無死 九国大付・佐倉が右越え本塁打を放ちホームイン

序盤は小倉工が優位に試合を進めた。初回先頭の早川が中前打で出ると小野が送って一死二塁。梅沢の遊ゴロ失で一、三塁とすると、4番島田の左前打で早川が生還。さらに小畑の中前打で梅沢を迎え入れ、2点を先制した。3回は二死から梅沢がレフト右への二塁打で出塁し、島田の左前打で1点を追加。1点を返された直後の4回には5番小畑が左翼線二塁打で出ると、川江中飛のあと、柳之内の遊ゴロ失で小畑が生還。4-1と再び3点差とした。

しかし5回から登板した野田から得点を奪えず、中盤以降に頼みのエース山田が九州国際大付につかまり、序盤のリードを守れなかった。

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九国大付・池田

エース香西が体調不良でベンチを外れている九州国際大付は20日の福工大城東戦で完投(完封)し、23日の東筑戦でも8回116球を投げた池田をこの日も先発のマウンドに送ったが、立ち上がりから小倉工の強打にさらされた。

小倉工は初回一死一、三塁から島田が高く浮いた変化球を一二塁間へ運んで先制すると、小畑も変化球をセンター左にはじき返す。3回も3番4番の長短打で1点を加え、4回は九州国際大付の名手尾崎の失策で4点目。尾崎は初回にも正面のゴロをはじいて失策を記録。いずれも簡単な打球ではなかったが、いつもの尾崎なら軽快にさばくところ。体調が万全でないのかもしれない。

池田は味方の失策があったとはいえ4回までに被安打6。球威自体はこれまでと変わらなかったが甘く入る球も目に付き、痛打を浴びた。打線も3回まで4安打を放ちながら攻撃のリズムもいま一つだった。初回二死から黒田が死球で出ると野田はライト左を破る二塁打を放つが、三塁コーチャーとの連携がうまくいかず黒田が暴走気味に本塁突入して憤死。2回も一死一、三塁で無得点に終わると、3回の一死二、三塁でも佐倉の内野ゴロによる1点にとどまり、4回を終わって4-1と山田を攻めあぐねた。

九国大付・野田

だが、このまま終わる九州国際大付ではなかった。まず5回のマウンドに野田を送る。本職は捕手だが、140キロ超の直球にキレ味鋭いスライダーを操る本格派投手の顔も持つ野田は、昨秋は福岡大会決勝、九州大会でも登板。明治神宮大会準決勝では大阪桐蔭を相手に5回まで1失点で抑えた。ブルペンでは2年生の木塚も肩をつくっていたが、九州国際大付ベンチには相手を圧倒する野田の投球で流れを変えたいとの思惑もあったのだろう。投球練習で140キロの球速表示が出ると、球場がざわめく。その雰囲気を自分のものにした野田はヒットを1本許したが無失点で抑える。

すると5回裏、先頭の隠塚が左中間を真っ二つに割る二塁打で出塁。続く中上の遊ゴロで隠塚は三塁を狙う。暴走かと思われたが、ショートからの三塁送球が隠塚の背中に当たり、小倉工にとっては痛いプレーとなった。無死一、三塁とチャンスを広げた九州国際大付は、中軸の3連打と大島の犠飛で一気に追いついた。

小倉工・山田

後半は完全に主導権を九州国際大付が握った。6回短長打で一死二、三塁とチャンスをつくると中上の内野ゴロで勝ち越し、山田をマウンドから降ろす。7回には佐倉が小畑のスライダーを右翼席に2試合連発となる本塁打。5回には外角直球を左翼線にはじき返す巧打で打点をあげるなど、剛柔使い分けた打撃を見せている佐倉は、この試合を含めて21打数12安打17打点3本塁打。打率は6割に迫りチーム全打点の4割近くを叩き出すなど、手の付けられない状態だ。1番隠塚もこの日2安打でチャンスメイク。打率も5割を超え、佐倉と共にチームを牽引している。調子が今一つに見受けられた黒田もクリーンヒット3本を放つなど、打線はここにきて上向きになっている印象だ。

野田は6回以降も130キロ台半ばの直球(この日最速143キロの)にスライダーを交え、安定した投球を見せた。7回二死からイレギュラーバウンドによる内野安打と早川の右前打で一、二塁とされたのが唯一のピンチだったが、小野を直球で中直に抑えた。5イニングスを4安打に抑えて三塁を踏ませず、54球で投げ切った。野田に代わってマスクを被った毛利にも一発が飛び出すなど、選手層の厚さを見せつけて春夏連続出場に前進した。

3回表小倉工二死二塁 島田が左前適時打を放つ

小倉工の山田は序盤こそ、相手の走塁ミスにも助けられて1点でしのいできたが4回までに80球近くを要し5回以降、九州国際大付打線に捕まった。130キロ台の直球(同137キロ)を外角低めに集めたが、わずかに中に入ったところを九州国際大付の各打者は見逃さなかった。打線も序盤から力強いスイングで快音を響かせ池田を攻略したが、野田を打ち崩すことができなかった。

9回は途中出場の牧嶋(3年・左)が、7回の打席でも二度試みファールに終わっていたセーフティバントを三塁前に転がした。磨きに磨いてきたであろう技術でうまく打球を殺したがサード浅嶋が出足よく反応、惜しくも出塁はならなかった。それでも山田を中心とした堅守と積極的な打撃で春は準優勝、夏も55年ぶりに8強の壁を突破。その戦いぶりは同校の歴史に新たな1ページを刻んだ。

 

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