【観戦記】筑陽学園7-6育徳館(選手権大会準々決勝)




【観戦記】筑陽学園7-6育徳館(選手権大会準々決勝)

序盤に長打攻勢でリードを許した筑陽学園が終盤に底力を発揮、逆転で育徳館を下してベスト4入りを決めた。

▼準々決勝(24日・北九州)
育徳館  231 000 000=6
筑陽学園 111 000 31x=7

【育】山口→馬場→藤本→山口【筑】木口
〈本〉高瀬、山口(育)

3点を追う筑陽学園は7回、この回先頭の2番網治がセカンド左への内野安打で出塁すると、矢野死球、小森の送りバントで一死二、三塁。木竹の遊ゴロで三塁走者が三本間で挟殺され、二死一、二塁となったが、代打・楠が一塁線を破って矢野が生還した。続く小野原の右前打で二塁から木竹が還って1点差とし、なおも二死一、三塁。小野原が二盗を決めたあと、8番上津原のショート右へのゴロで一塁送球がそれてファーストの足が離れ(記録は失策)、三塁から楠の代走・マハチが同点のホームを踏んだ。

7回裏筑陽学園二死一、二塁 楠が右前適時打を放つ

 

続く8回は一死後、網治、矢野が連続四球。小森の遊ゴロで二塁封殺を狙った送球をセカンドが落球して一死満塁とし、5番木竹が押し出しの四球を選び、これが決勝点となった。

先手を取ったのは育徳館。初回森友が左前打で出ると、中ノ上のセカンド前へのバントが内野安打となり無死一、二塁。高瀬三振、梅崎遊ゴロで二死一、三塁となったが山口四球で満塁とすると、6番信濃が一二塁間を破って2点を先制した。2回は8番田中が四球を選び、那賀のセカンド前への弱いゴロが失策を招き、森友四球で無死満塁。中ノ上の一ゴロでファーストがベースを踏んで本塁送球、三塁走者が三本間で挟殺されて二死二、三塁となった後、3番高瀬が右越え本塁打を放って3点を加えた。3回はこの回先頭の山口が右越え本塁打。3回までの6点をあげて試合の主導権を握った。

1回表育徳館二死満塁 信濃が右前適時打を放ち2点を先制

 

2点を追う筑陽学園は初回一死後、網治がファースト左へのドラッグバントを決めて出塁すると、矢野死球で一、二塁。続く小森の捕ゴロで、スタートを切っていた二走の網治が一塁送球の間に本塁を陥れて1点を返した。4点差となった2回は6番野田が中前打。小野原の投前バントは二塁封殺されたが、続く上津原の時にヒットエンドランが決まり(中前打)、センターが打球処理を誤る間に小野原が一気にホームイン。3回は一死から矢野が死球で出るとけん制悪送球で二進、続く小森の右中間二塁打で生還し、小刻みに得点を重ねた。

5回にも3つの四球で二死満塁、6回には一死二塁の好機をつくりながら得点できなかったが、先発の木口が4回以降は追加点を与えず流れを引き寄せ、終盤の逆転劇につなげた。

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筑陽学園・木口

育徳館の先制攻撃は見事だった。先頭の森友がカーブをレフト前に目の覚めるような当たりを放つと、中ノ上はセカンド前へのプッシュ気味のバント。これが内野安打となり、多くの学校関係者が詰めかけた一塁側の育徳館スタンドを沸かせる。高瀬、梅崎は凡退したが山口が四球でつなぐと、信濃(2年・左)がスライダーに泳がされながらもしぶとく一二塁間に運ぶ2点タイムリー。久留米商にタイブレークの末に逆転サヨナラ勝ちした5回戦の勢いを初回の攻撃につなげた。

2回は3番高瀬(3年・左)が走者2人を置いて右翼ポール際へ一発。小柄な選手だが筑陽学園・木口のスライダーをうまく体を反応させてバットに乗せた。3回には山口も高々と右翼席に打ち込んで6点目。筑陽学園も1~3回と1点ずつ返したが、序盤は伸び伸びとプレーする育徳館の独壇場だった。

6点を失いながらも筑陽学園ベンチは先発木口を代えない。ここまで全試合を一人で投げ抜いてきている木口はベンチの期待に応えて徐々に立ち直ると、4回以降は力のある直球(この日最速141キロ)に縦に落ちるスライダー、カーブ、スプリットをまじえて育徳館に二塁を踏ませず、反攻の舞台を整える。

育徳館・山口

育徳館の先発はエース山口(3年・右)。120キロ台半ば(同130キロ)の直球と100キロ台のカーブ、さらに80キロ台のスローカーブで緩急をつけながら筑陽学園打線に挑んだ。3回まで1点ずつ失ったが、よく最少失点で抑えたと言うべきか。4回は三者凡退で打ち取ったが、5回二つの四球と暴投で二死一、三塁となった場面でマウンドを2番手の馬場(2年・右)に託し、ライトにまわった。馬場も山口と似たタイプの投手で120キロ台(同128キロ)の直球にカーブを交えるスタイル。交代直後に四球を出し満塁とされたが、野田を三ゴロに打ち取ると、6回も一死二塁のピンチをしのぐ。

立ち直った木口からチャンスをつくれず追加点の気配のなくなった育徳館に対し、中盤チャンスをつくりながらも得点できない筑陽学園。3点差のまま迎えた7回、内野安打に死球をからめて一死二、三塁と絶好のチャンスを迎えた筑陽学園だったが、木竹の遊ゴロで三塁走者が飛び出して三本間で憤死。またしても…の雰囲気が漂った。二死一、二塁で打席に立つのは途中出場の横家。カウントが2-2となったところで、筑陽学園は代打に楠(3年・右)を送り込んできた。

育徳館・馬場

楠は昨夏4強進出した前チームにあっては正捕手として出場したが、春以降は控えに回ることが多くなった選手。それでも春の福岡大会4回戦の大牟田戦では途中出場して迎えた最初の打席で同点本塁打を放つなど勝負強い打撃を見せており、筑陽学園はここでその切り札を切ってきた。

たった一つのストライクで勝負をかけることになった楠は、初球ファールの後の2球目を叩くと、痛烈な一塁線への打球となってファーストの右を抜けていく。二塁から矢野が生還、この一打で筑陽学園は俄然、勢いがついた。小野原もタイムリーで続くと、上津原のショート右への当たりが送球ミスを誘って遂に追いついた。

こうなると筑陽学園に傾いた流れは止まらない。8回は3番手の藤本から2つの四球と敵失で満塁とし、木竹が押し出し四球を選んでノーヒットで勝ち越し。育徳館も9回一死から森友が内野安打で出塁して最後の粘りを見せたが、木口が最後の力を振り絞り、140キロ台の直球を連発して2人を連続三振に仕留めた。

2回表育徳館二死二、三塁 高瀬が右越え本塁打を放つ

育徳館の投手陣は、直球にスピードがあるわけでも多彩な変化球を誇るわけでもない。この日は2本の本塁打が飛び出したが、特別体格のよい選手がいるわけでもなく4回戦、5回戦は長打ゼロ。長打力があるチームでもない。それでもシード大牟田にサヨナラ勝ち、久留米商にはタイブレークで二度リードをゆるしながらの逆転サヨナラ勝ちを果たすなど見事な試合を演じ、ベスト8入りを果たした。強豪にも臆せず伸び伸びとプレーし、持っている力を存分に発揮した公立校は爽やかな印象を残して球場をあとにした。

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