【観戦記】飯塚7-3西日本短大附(選手権大会準々決勝)




【観戦記】飯塚7-3西日本短大附(選手権大会準々決勝)

2回に集中打で大きくリードを奪った飯塚が、西日本短大附の反撃を中盤の3点に抑えて逃げ切り、準決勝進出を決めた。

▼準々決勝(24日・北九州)
飯  塚 050 000 011=7
西短大附 000 030 000=3

【飯】白浜→中村【西】江川

飯塚は2回、この回先頭の4番白浜が死球で出塁(臨時代走・吉村)すると、嶋田が送り一死二塁。6番田中がショート左を破るヒットを放って、1点を先制した。なおも、中嶋三振のあと8番福田の左前打で二死一、二塁から河村の右中間二塁打で二者が生還して3-0。五島四球で二死一、二塁となり2番縄田の左前打で河村が生還。吉村の右前打で五島も還って、この回一挙に5点をあげた。

2回表飯塚一死二塁 田中が先制の左前打を放つ

3回以降は西日本短大附・江川の前に抑えられてきたが8回、田中がセカンド左への内野安打で出ると安河内が送って一死二塁。福田四球のあと河村の一ゴロで二塁封殺を狙った送球が乱れ、一死満塁。五島三振のあと、打者縄田の時に暴投で三塁から田中が生還した。9回は二死から田中が中前打で出塁すると、続く安河内の右翼線二塁打で一気に生還してリードを広げた。

西日本短大附は初回、先頭の江口が初球を中前に運ぶと穴井が送って一死二塁。今田の左前打で江口が本塁を狙ったがタッチアウト、先制はならなかった。5点を失った直後の2回も二死一、二塁の好機を得たが江川が三振に倒れ無得点に終わった。

ようやく5回、8番山口(琉)が遊内野安打で出ると、江川の右前打とライトの失策がからんで無死二、三塁とし、江口が右翼フェンス直撃の三塁打を放って2者が生還。続く穴井の右犠飛で江口も還り、2点差とした。続く6回は一死後、6番和田の三ゴロで一塁送球がそれて出塁(記録は悪送球)すると、轟木のセカンド前へのプッシュバントが内野安打となり、山口死球で一死満塁と同点機を迎えたが、江川が遊ゴロ併殺打に倒れた。

7回も先頭の江口が中前打で出ると、穴井の時にバスターエンドランをかけ(遊ゴロ)一死二塁としたが、後続が凡退して追加点を奪えなかった。8回も一死から和田が左前打を放つが轟木が三ゴロ併殺打に終わると、9回は2番手中村の前に三者凡退に抑えられ、昨夏準決勝で6点差を逆転した試合の再現はならなかった。

———————————

西短大附・江川

この試合、最初のポイントは2回飯塚の5得点。飯塚の下位打線に並んだ左打者が江川攻略の先鞭をつけた。一死二塁で6番田中は141キロの直球をコンパクトにはじき返し、ショート左をライナーで破る先制打。中嶋三振で二死となったが福田が同じく141キロの直球をレフト前に打ち返すと、9番河村は追い込まれながら粘り、チェンジアップを右中間へ運ぶ2点タイムリー。これが大きかった。1番五島も粘って四球を選ぶと、縄田が2球目の直球を叩いてショート左を破り河村が生還。吉村は初球のチェンジアップを逆らわずに一二塁間に運ぶ。四球を挟む4連打で、あっという間に5点を重ねた。

ただ、江川も3回以降はチェンジアップに代えてスライダーを多用、回を重ねるごとに体重の乗った直球にも伸びが加わった。躍動感あふれるフォームから140キロ前後(この日最速143キロ)の直球が内外角にビシビシと決まり、3~7回はすべて15球以内でテンポよく抑えてゼロを並べ、味方の反撃を待った。

5回裏西短大附無死三塁 穴井の右犠飛で江口が生還

待望の反撃は5回。8番山口のショート前の弱い打球が内野安打になると、江川はバントの構えから強攻。右前にはじき返すと、ライトが打球を少し後ろにそらす間にそれぞれ進塁して、無死二、三塁。江口の右翼への飛球はあわやスタンドインという大きな当たりだったが、フェンスを直撃して2者を迎え入れた。穴井の右犠飛で江口も還り、3連打に犠牲フライで瞬く間に3点を返した。

5回を終えて5-3。試合の行方は一気に分からなくなってきた。前半大きくリードした飯塚が中盤以降に西短の追い上げを受けるのは、前年準決勝と同じ展開。その記憶がよみがえったファンも多かったかもしれない。

6回表、江川が後藤を141キロの内角直球で見逃し三振に打ち取り、最高の形で6回裏の攻撃に移る。一死となり和田も三ゴロ。あっけなく二死になると思われたが一塁送球がわずかにそれて出塁する。轟木はセカンド前にプッシュバント、ファーストが捕球してベースカバーに入った白浜に送るがヘッドスライディングした轟木の手が早くセーフ。山口は初球、背中に死球を受けると雄たけびを上げて一塁へ。これで一死満塁。

飯塚・白浜

打席には9番江川。ボールが2つ続いてスタンドがどよめく。3球目ファールのあと、4球目もボール。しかしここで白浜が踏ん張った。ファールでフルカウントに持ち込むと、フルカウントから投じた低めへの変化球で6-4-3の併殺に打ち取り、最大のピンチを脱した。

続く7回も西日本短大附は一死二塁と攻め立てたが、白浜は3番今田をスライダーで一邪飛、4番多久をフォークで中飛に仕留めて追加点を許さない。すると8回表、内野安打と四球、敵失で二死満塁から打者縄田の時、変化球がワンバウンドして大きく跳ね、バックネットまで達する暴投となって「次の1点」が飯塚に入った。これで流れが再び飯塚に傾く。8回裏西日本短大附は一死一塁から轟木の当たりは5-4-3の併殺となり、9回表に飯塚が二死から田中、安河内の短長打でダメ押し点を奪って勝負を決めた。

白浜はこの日、序盤は最速141キロを計測した直球で押し、3回までに6奪三振。中盤以降はスライダー、フォークを引くめに集めて打たせる投球が冴えた。4回途中までに6四死球を与えて降板した前年夏の失敗は繰り返さず、四死球も3つに抑えた。9安打を許したが我慢の投球で5回の失点だけにとどめ、前年の口惜しさを晴らした。

9回は2年生右腕の中村がマウンドへ。中村は昨夏、8回の登板直後に同点スリーランを打たれており、雪辱に燃える一人。140キロ超の直球で押す気合十分の投球で2つの三振を奪って3者凡退で締め、こちらも前年の借りを返した。

飯塚・中村

西日本短大附の江川は前述のとおり、3回以降のピッチングは圧巻のひと言。伸びのある直球はほとんどが140キロ前後で、これにスライダーを交えた投球はこれまで観戦した中で最高の投球だった。これまで何度も劣勢を跳ね返して来た打線はこの日も粘り強く追い上げたが、要所で白浜の冷静な投球にかわされた。

2回の西日本短大附の攻撃では和田が頭部死球を受けて、しばらく立ち上がれず心配されたが、次の回から無事にプレーを再開した。白浜は帽子をとったまま心配そうに様子を見守り、飯塚・吉田監督は3回表にキャッチャーの守備に就いた和田に声を掛け、和田も頭を下げて謝意を示した。吉田監督は試合後にも西短ベンチを訪れて、状況を再度確認。西村監督も帽子をとって応じるなど、スポーツマンシップに則ったやり取りが見られた。

実力伯仲の両校が持ち味を出し尽くし戦ったハイレベルで、強い気持ちがぶつかりあった好ゲーム。試合終了後、多くの観客で埋め尽くされたスタンドからは大きな拍手が寄せられた。

Pocket
LINEで送る

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*