【観戦記】九州国際大付10-4東筑(選手権大会準々決勝)




【観戦記】九州国際大付10-4東筑(選手権大会準々決勝)

両校合わせて25安打が飛び出す打撃戦となったが、九州国際大付が長打攻勢で東筑に打ち勝って準決勝進出を決めた。

▼準々決勝(23日・北九州)
東筑   000 200 200= 4
九国大付 301 300 12x=10

【東】藤井→堂満→松山→高﨑→尾形【九】池田→木塚
〈本〉佐倉、野田(九)

九州国際大付は初回、先頭の隠塚が遊内野安打で出ると中上が送り、黒田四球で一死一、二塁。野田は一邪飛に倒れたが、佐倉が右翼席上段への本塁打を放って3点を先制した。3回は遊内野安打で出た黒田を野田が送り、佐倉の中前打で1点を追加。2点差に迫られた直後の4回は、9番尾崎死球、続く隠塚も四球で歩くと、中上が送って一死二、三塁。黒田は遊ゴロに倒れたが、4番野田がレフト左への本塁打を放ち3点を追加。リードを5点に広げた。

4回裏九州国際大付二死二、三塁 野田が左越え本塁打を放つ

 

3点差となった7回は一死から6番大島が左前打で出ると、浅嶋もライト前に落として一死一、二塁。池田の送りバントは投邪飛となったが、尾崎の中前打で大島が生還した。8回はこの回から登板した高﨑から代打白井が四球を選ぶと、黒田死球で無死一、二塁。野田中飛、佐倉四球で一死満塁とすると、大島は二飛に倒れたが、7番浅嶋のレフト左へのヒットでダメ押しの2点を加えた。

東筑は4点を追う4回、3番堀田がセンター右への二塁打で出ると、藤井のニゴロで三進。吉川三振のあと、6番告坂の右前打で堀田が生還。堂満も左前打で続き二死一、二塁とすると、8番平山の右前打でこの回2点を返した。5点差に開いた7回は二死から2番佐藤が右前打で出ると、堀田の打球はセンターが打球を見失う幸運な二塁打となって佐藤が生還。さらに藤井の右前打で堀田も還って4-7とした。

しかしその後の二死一、二塁のチャンスを逃すと、8回は先頭の7番松山が遊ゴロ失で出たが、平山左飛、藤岡遊ゴロ併殺打。9回もこの回から登板した木塚から代打峯本が四球を選んだが、佐藤左飛、堀田は三ゴロ併殺打に倒れて試合終了。12安打を放っての追撃も及ばなかった。

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東筑先発の藤井

打力のある両校だけに、それぞれの先発投手が一つの焦点だった。

東筑はここまで3分の1イニングしか投げていない左腕エース高﨑の先発があるか否かが注目されたが、先発は藤井。優勝を目指す上で最大の山場となるこの試合に登板できない高﨑は、よほど状態が悪いのだろうと思われた。登板しない時はマスクをかぶる堂満もベンチスタート。投手としてスタンバイし、リリーフに備える総力戦への構えを見せた。

普段サードを守る藤井は130キロ台(この日最速135キロ)の直球、スライダーを低めに集めて打たせて取るタイプの投手。立ち上がり、隠塚の打ち取った打球が内野安打になると、犠打と四球などで二死一、二塁となり、迎えたのはこの日5番に打順を上げた佐倉。スライダーを見送った後の2球目、見逃せばボールかという135キロの高め直球を目にも留まらぬスイングで振り抜くと、ライナー性の当たりとなって右翼スタンド上段へ。この試合の前まで12打数7安打10打点と絶好調のスラッガーは、藤井の唯一ともいえる失投を見逃さなかった。佐倉は3回には堂満のスライダーを大振りすることなくセンター前に合わせ、3回までの全4打点を叩き出した。

東筑・堂満

3回を終えて4-0。東筑は3回まで1安打。九州国際大付がこのままリードを広げていくかと思われたが、東筑も黙っていない。4回、堀田がセンター右への当たりで躊躇なく二塁まで奪う好走塁を見せると、二死三塁から告坂が右前打を放って1点を返す。この一打が呼び水となり堂満が左前打で続くと、平山もスライダーをライト前に落として2点目。さらに藤岡もセンター前にクリーンヒットを放ち4連打で二死一、二塁。長打が出れば一気に同点という場面を迎えた。森木の一打もセカンド左を襲う強い当たりだったが、隠塚が確実にさばいた。

4-2となって流れは東筑に傾きかけたが直後の4回、2回途中から登板していた堂満が尾崎に死球を与えると、隠塚にスリーボールとなったところで、3番手の松山にスイッチ。松山も130キロ台半ば(同137キロ)の直球に力のある右腕だ。隠塚を歩かせ、犠打と遊ゴロで二死二、三塁。ここで迎えた4番野田に対し、内角低めの厳しいコースに直球を続けて2球で追い込む。3球目も同じように内角低めを突いたが野田は読んでいたのだろう、狙いすまして振り抜いた打球は左翼席に飛び込んだ。

東筑・松山

これで7-2。九州国際大付は6回裏にも尾崎、隠塚の長短打で無死二、三塁の好機を得る。ここで2失点するとコールドゲームが視野に入る場面だったが、松山も踏ん張って後続を断つ。

すると7回、またしても東筑の集中打が球場を沸かせる。二死から佐藤が右前打で出ると、堀田の当たりは平凡なセンターフライかと思われたが、ぎっしりと埋め尽くしていたバックネット裏の観客と白球が重なったか、黒田が打球の行方を見失って捕球できず(記録は二塁打)、二死ということでスタートを切っていた佐藤が生還。藤井も一二塁間を破って堀田を迎え入れると、吉川もショート左への内野安打。4連打で押せ押せムードの中、告坂の一打もセカンドへのいい当たりだったが、隠塚のグラブに収まった。

九国大付・池田

4回と7回の得点後、なおも続いた好機で一本が出ていればまた違った展開になっていたのは必至で、まさに紙一重の勝負だった。得点差が開いたにも関わらず最後まで緊迫した雰囲気が続いたのは、いつ爆発するともしれぬ東筑打線の破壊力があったからだろう。ベスト8に残ったチームの中で、九州国際大付と互角に打ち合えるのは東筑くらいかと思っていたが、その期待に十分応える打撃を見せてくれた。

九州国際大付の先発は5回戦に続いて2年生右腕の池田。5回戦を熱発で回避したエース香西は、この試合でもブルペンに入ることなくベンチを温めており*付記:この日香西選手はベンチ登録を外れていたとのこと。読者の方から情報をいただきました、この先の登板も微妙になってきた。福工大城東を完封した試合から中3日での登板となった池田は強打の東筑打線に12安打を浴びて4点を失ったが、130キロ前後の直球(同132キロ)を軸にスライダー、チェンジアップ、カーブなど多彩な変化球をコーナーに集め、堅守にも支えられて踏みとどまった。内野陣は3つの併殺でピンチを断った。ショート尾崎は6回、ショート左へのゴロを抑えると、片膝をつきながら二塁送球して併殺につなげる華麗なプレーを見せた。

東筑・高﨑

東筑は藤井、堂満、松山とつなぎ、どの投手もまずまずの内容だったが、九州国際大付の打棒が一枚上だった。藤井は佐倉に投じた唯一の失投を捕らえられ、堂満は佐倉の巧打で追加点を許した。松山は野田に同じ自信を持って投じた内角直球を読まれ、一発に泣いた。

8回裏、マウンドに4番手として高﨑が上がった。4-8の場面での登板がその状態を物語っているように思われた。130キロ台(同136キロ)の直球にスライダ―、カーブを交えながらの投球だったが三つの四死球で一死満塁。大島二飛のあと浅嶋にスライダーをレフト左に運ばれて降板した。もともと細かな制球力には課題のある高﨑だが、この日は追い込んでからの決め球に制球力を欠いた。打者6人に31球を投じて四死球3、被安打1というのが大型左腕が最後の試合で残した記録となった。

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