スポ―ツ新聞などで「プロ注目」と言われる投手が例年になく多かった今大会ですが、彼らの活躍を数字の面から振り返ってみたいと思います。
投手の成績をはかるデータとしては「自責点」がありますが全投手の自責点を把握できないため、「バーチャル高校野球」などで公表されている情報で確認できる数字として被安打を採用し、これをもとにした「被安打率」(1試合あたりの被安打)を算出しました。
あわせて失点率(1試合当たりの失点)を出しましたが、こちらは味方の失策による失点も含まれている可能性があるため、参考程度の記録になります。
3試合以上で登板し、2試合分に相当する18イニングス以上を投げている投手を対象に、被安打率の低い順に並べてみました。
トップは星琳のアンダーハンド上村投手。初戦の小倉南戦では8回1安打、3回戦の大和青藍戦では4回1安打、そして4回戦の香椎戦では8回3安打。3試合20イニングスで、わずか5安打しか許しませんでした。
ベスト16以上の投手に絞ると沖学園・水崎、飯塚・白浜、真颯館・松本の各投手が5本台。春日・飯田、香椎・小中、西日本短大附・大嶋、筑陽学園・藤田の各投手が6本台で続きます。
一方で、前評判の高かった投手のうち、福岡大大濠の毛利投手は準々決勝の筑陽学園戦で11安打を浴びたことが響き、被安打率は8.14。九州国際大付の山本投手も、準々決勝の飯塚戦で4回途中8安打を許して降板を余儀なくされ、被安打率9.00と低い数字となりました。ただ、毛利投手は2回戦3回戦での登板がなく、山本投手も3回戦で1回を投げただけ。対戦相手が強化された県大会以降になって本格的に登板しているため、少し厳しい数字になっている側面もあります。
失点率では、4試合で失点4の香椎・小中投手が1.20でトップでした。強打の東福岡を3点に抑え、5回戦の柳川戦で延長10回に1点を失った以外は得点を許しませんでした。さらに真颯館・松本、福岡大大濠・毛利、飯塚・白浜の各投手が1点台で続いており、準々決勝以上に勝ち残ってのこの成績は、強豪相手にも得点を簡単に許さなかったことを裏付けています。
また、今大会でもっとも多く投げたのは、全7試合に登板し、うち6試合で完投した真颯館・松本投手でした。前回大会(2019年)は30イニングス以上投げた投手が9人いましたが、今年は5人に留まり、複数投手制がさらに進んだことが見て取れます。
選手名 | 学年 | 校名 | 試合 | 回数 | 被安打 | 被安打率 | 失点 | 失点率 |
上村 爽真 | Ⅲ | 星琳 | 3 | 20 | 05 | 2.25 | 5 | 2.25⑤ |
水崎 康平 | Ⅲ | 沖学園 | 4 | 27 | 16 | 5.33 | 7 | 2.33 |
久我 遥希 | Ⅱ | 福大若葉 | 4 | 21 | 13 | 5.57 | 9 | 3.86 |
白浜 快起 | Ⅱ | 飯塚 | 5 | 33④ | 21 | 5.73 | 7 | 1.91④ |
松本 翔 | Ⅲ | 真颯館 | 7 | 55➀ | 36 | 5.89 | 9 | 1.47⓶ |
飯田 泰成 | Ⅱ | 春日 | 4 | 28 | 19 | 6.11 | 9 | 2.89 |
小中 稜太 | Ⅲ | 香椎 | 4 | 30⑤ | 21 | 6.30 | 4 | 1.20➀ |
大嶋 柊 | Ⅲ | 西短大附 | 7 | 48⓶ | 35 | 6.56 | 13 | 2.44 |
藤田 和揮 | Ⅲ | 筑陽学園 | 4 | 29 | 22 | 6.83 | 10 | 3.10 |
竹下 和希 | Ⅲ | 戸畑 | 4 | 27 | 21 | 7.00 | 10 | 3.33 |
佐保 友健 | Ⅲ | 祐誠 | 4 | 23 | 18 | 7.04 | 9 | 3.52 |
古川 雄大 | Ⅲ | 九産大九州 | 3 | 25 | 20 | 7.20 | 7 | 2.52 |
松尾 蓮 | Ⅲ | 柳川 | 5 | 38③ | 32 | 7.58 | 12 | 2.84 |
稲川 竜汰 | Ⅲ | 折尾愛真 | 3 | 21 | 19 | 8.14 | 11 | 4.71 |
毛利 海大 | Ⅲ | 福大大濠 | 3 | 21 | 19 | 8.14 | 4 | 1.71③ |
井生祥太朗 | Ⅲ | 北筑 | 4 | 26 | 24 | 8.31 | 11 | 3.81 |
野副 魁斗 | Ⅱ | 高稜 | 3 | 25 | 24 | 8.64 | 10 | 3.60 |
山本 大揮 | Ⅲ | 九国大付 | 4 | 18 | 18 | 9.00 | 6 | 3.00 |
小土井颯汰 | Ⅲ | 小倉東 | 3 | 22 | 25 | 10.23 | 13 | 5.32 |
古舘 徹也 | Ⅲ | 玄界 | 3 | 18 | 25 | 12.50 | 13 | 6.50 |
※選手名の太字はベスト16以上
※失点率=(失点/投球回数)✕9で計算。ただしイニング途中の交代の場合、観戦などによって確認できる場合を除き、その回の失点は途中降板の投手のものとして計算
※投球回数は「3分の1」は切り捨て、「3分の2」は切り上げ
※赤太字は部門トップ。赤字は上位5人
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限られた人数にはなりますが、登板した試合での与四死球および奪三振の数を確認できた投手について「与四死球率」「奪三振率」(1試合当たりの与四死球、奪三振)をまとめました。
その結果、与四死球率(1.96)・奪三振率(9.33)とも真颯館の松本投手がトップでした。2019年は九州国際大付の下村投手が与四死球率0.90、奪三振率10.5(投球回数=30)、優勝した筑陽学園の西舘投手が与四死球率2.30、奪三振率10.47(投球回数=43)という数字でしたが、松本投手は55イニングスを投げての成績ですから、彼らにも十分匹敵する内容だと思います。
こうした数字を総合的に勘案して「今夏の県下ナンバーワンの投手」を勘案すると、55イニングスを投げながら各部門で上位の数字を残した真颯館・松本投手といってよいと思います。
選手名 | 高校名 | 試合 | 回数 | 与四死球 | 与四死球率 | 奪三振 | 奪三振率 |
松本 翔 | 真颯館 | 7 | 55 | 12 | 1.96 | 57 | 9.33 |
大嶋 柊 | 西短大附 | 7 | 48 | 19 | 3.56 | 43 | 8.06 |
白浜快起 | 飯塚 | 5 | 33 | 16 | 4.36 | 26 | 7.09 |
藤田和揮 | 筑陽学園 | 4 | 29 | 11 | 3.41 | 30 | 9.31 |
古川雄大 | 九産大九州 | 4 | 25 | 10 | 3.60 | 12 | 4.32 |
野副魁斗 | 高稜 | 3 | 25 | 8 | 2.88 | 15 | 5.40 |
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