2021選手権福岡大会を振り返る①~総括編




第103回全国高校野球選手権福岡大会は27日(火)、西日本短大附の11年ぶりの優勝で幕を閉じました。2年ぶりの開催となった選手権福岡大会の軌跡を、振り返ってみたいと思います。

 

前回大会から県大会は南北の各16校の32校で行われるようになりました。今大会はシード校16校のうち11校が県大会に進出、北部で八幡・東筑紫学園・嘉穂が、南部では東福岡と久留米商が地区大会で敗れました。

4回戦(県大会初戦)で敗れたチームの中にも好チームが多くありました。九産大九州は好左腕・古川を擁して九州国際大付と終盤まで接戦を演じました。自由ケ丘は4番冬木を軸とした強打で勝ち上がり、シードの九産大九産とも激しく打ち合いました。初戦でシード八幡を下した小倉工・笠継、香椎を3安打に抑えながら敗れた星琳のアンダーハンド・上村の好投も印象に残りました。高稜は右腕・野副を中心とした堅い守りでシード嘉穂、北九州を連破して、2年前に1年生だけで初めて夏の大会に参加した福岡大若葉は創部3年目にして、それぞれ初めての県大会出場を果たしました。八女は3回戦の福岡中央戦で9回5点差を追いつく驚異の粘りを見せました。

ベスト16(5回戦)にも、シード校11校がそのまま勝ち上がりました。
ノーシードでは、春日が2年生左腕・飯田を中心に福岡大大濠と互角の投手戦を演じましたが、終盤の一発に泣きました。香椎は3回戦でシード東福岡を撃破、5回戦の柳川戦では0-0から延長サヨナラ負けで敗れましたが、エース小中を中心にした堅守が光りました。祐誠はシード校の久留米商に打ち勝ち、折尾愛真もエース稲川の力投でシード東筑紫学園を破ってベスト16にコマを進めましたが、5回戦では投手陣が打ち込まれて涙をのみました。
5回戦からはシード校同士の対戦も始まりました。近藤、吉川の継投で勝ち進んできた九産大九産、エース水崎が好投を見せた沖学園、秋春とも8強に進出した福工大城東は、真颯館・松本(翔)、九州国際大付・山本、飯塚・白浜といった好投手を打ち崩せずここで敗退。エース井生が投打に活躍した北筑は終盤、筑陽学園の一発攻勢に沈みました。

ベスト8(赤字はシード校) 地区大会
西短大附 4強 16強 優勝 優勝
真颯館 2回戦 準優勝 (九州大会) 準優勝
飯塚 8強 16強 準優勝 4強
筑陽学園 3回戦 16強 優勝 4強
戸畑 4回戦 4強 準優勝 8強
柳川 2回戦 2回戦 8強 8強
九国大付 準優勝 優勝 (九州大会) 8強
福大大濠 優勝 (選抜) (九州大会) 8強

ベスト8に進出した8校のうち7校までがシード校。センバツ出場校の福岡大大濠、春の福岡大会優勝の九州国際大付、準優勝の真颯館、さらに春の地区大会を制した筑陽学園、西日本短大附など前評判の高かったチームが勝ち上がり、準々決勝では実力校同士の激突が始まりました。
福岡大大濠は筑陽学園・藤田に完封を喫し、春夏連続出場の望みを絶たれ、九州国際大付もエース山本が飯塚打線につかまって敗退。優勝候補の双璧と見られていた両校がそろって姿を消しました。ノーシードから勝ち上がってきた柳川は真颯館に完敗しましたが、古豪復活を予感させる今大会の躍進でした。8強の中で唯一の公立校だった戸畑は西日本短大附の大嶋に2安打完封を喫しましたが、強打の西日本短大附を1点に抑えた善戦が光りました。

準決勝では、チーム打率4割超を誇る筑陽学園は、真颯館・松本に2点に抑えられて惜敗。2本塁打の向井らが強打の片鱗をのぞかせましたが、及びませんでした。飯塚は序盤6-0とリードしながら投手陣の制球難もあって西日本短大附に終盤追い付かれ、9回サヨナラ負け。それでも中山、芳賀、松尾らを中心とした打線は、大会随一といってよい迫力でした。

多くの好投手が出現した今大会でしたが、最後まで残ったのが真颯館・松本、西日本短大附・大嶋の両投手でした。試合は西日本短大附が制しましたが、ナンバーワンを決めるにふさわしい、ハイレベルな一戦で今夏を締めくくりました。

【ベスト8以上のチーム成績】

校名 試合 得点 打点 失点 打率 HR 盗塁 犠打 失策
西短大附 070 56(8.0) 53(7.5) 19(2.7) .340 3 09(1.3) 16(2.3)
05(0.7)
真颯館 7 37(6.2) 33(4.7) 09(1.3) .301 3 06(0.9) 18(2.6) 03(0.4)
飯塚 6 50(8.3) 45(7.5) 17(2.8) .343 4 09(1.5) 15(2.5) 03(0.5)
筑陽学園 6 45(7.5) 34(5.7) 15(2.5) .374
06(1.0) 26(4.3) 05(0.8)
戸畑 5 28(5.6) 25(5.0) 12(2.4) .278 3 09(1.8) 14(2.8) 11(2.2)
柳川 5 19(3.8) 17(3.4) 13(2.6) .236 0 05(1.0) 15(3.0) 03(0.6)
九国大付 5 34(6.8) 31(6.2) 18(3.6) .357 0 03(0.6) 13(2.6) 01(0.2)
福大大濠 5 27(5.4) 21(4.2) 05(1.0) .240 3 12(2.4) 11(2.2) 02(0.4)
平均値 46 37(6.4) 32(5.5) 14(2.3) .309 07(1.3) 16(2.8) 04(0.7)

(カッコ内は1試合平均の数字。赤字は各項目の最高値、青字は平均値以上を示す)

ベスト8以上のチーム成績を見ると、「打点」は西日本短大附飯塚が1試合平均7.5点とトップで、九州国際大付筑陽学園が続きます。「チーム打率」も筑陽学園の3割7分4厘を筆頭に、この4校が3割4分以上で上位を占めました。

ベスト8に進むようなチームには、たいてい好投手がいますが、決勝も含めた7試合すべてでベストピッチをするのは難しいものがあります。「エースが打たれた試合で打ち勝てるか」どうかは、福岡のような参加校の多い夏の大会を勝ち上がる一つのポイントであり「夏は打力」といわれる所以でもあります。
西日本短大附は4回戦の育徳館戦(10-7)、準決勝の飯塚戦(8-7)で投手陣の不調を打線がカバーし、準々決勝(2安打完封)決勝(3安打完封)での大嶋投手の好投につなげました。「エースが不調の中でも勝ち抜く力」にもっとも秀でていたのが西日本短大附だった、と言えます。

打力の高い飯塚、筑陽学園、九州国際大付にも優勝のチャンスはあったと思います。ただ、飯塚は準決勝の西日本短大附戦で14四死球を与えた投手陣の不調をカバーできませんでした。この試合だけを見れば「投手力で負けた」という見方もできますが、5回戦では白浜投手が福工大城東を1点に抑えて勝っていますので、ここは打ち勝たなければならない試合でした。
筑陽学園も5回戦の北筑戦こそ1-5から試合をひっくり返し、準決勝の真颯館戦でも一度は2点差を追いつきましたが、再び勝ち越されると逆転する力は残っていませんでした。九州国際大付も準々決勝では飯塚に打ち負けています。

一方「失点」は、福岡大大濠と真颯館の数字が断然で、いずれも1試合平均失点が1点台。福岡大大濠の毛利、森本投手、真颯館・松本翔投手の好投の跡がうかがわれます。ただ、両校とも数字上は「エースの好投頼み」という戦い方であり、彼らが打ち込まれた後に挽回することができず、敗れました。
両校が優勝するには「投手が最後まで一度も崩れないこと」が必要だったことになります。ただ、過去5年の優勝校6校(2018年は2校出場)のうち5校までが、4失点以上の試合を経験しています。そう考えると1試合あたり5点以上はとれる打力は欲しいところで、平均打点が4点台だった真颯館、福岡大大濠はこの点でやや足りませんでした。

好投手の存在は優勝に不可欠な条件ですが、点を取られる試合もあることを前提に、それをカバーできる打力があること。好投手が多かった今大会ですが、最低7試合を勝ち抜くためには打力も欠かせないことを改めて感じた大会でもありました。

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