第102回全国高校選手権福岡大会中止、代替開催も見送り




 日本高校野球連盟と朝日新聞社は20日、新型コロナウイルスの感染リスクなどを理由に第102回全国高校野球選手権大会の中止を決定、発表しました。選手権大会の中止は過去に二度ありますが(1918年の米騒動、1941年の戦火拡大)、春夏の2大大会が中止となるのは初めてのこと。高校野球史上、歴史的な災難の年となってしまいました。
 この発表を受けて福岡県高校野球連盟は25日、選手権福岡大会に代わる大会の開催を行わないことを発表しました。「8月末まで県高野連主催の大会を開かない」とした22日の常任理事会の決定に伴うもの、ということです。各都道府県高校野球連盟の多くが独自大会の開催を模索し、長崎、佐賀、沖縄、岡山、愛知、千葉などが大会開催を発表する中で、独自大会を行わないことを決めた初のケースとなりました。

昨夏の福岡大会開会式

 選手権大会の中止決定後、代替大会について各都道府県の自主性に委ねられた今回は、各高野連(および教育委員会)の高校野球運営に対する考え方が、図らずも問われることになりました。そして福岡県高野連が出した結論は、独自大会の見送りでした。
 中止の理由についてはスポニチアネックスで詳しく報じていますので、抜粋します。

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(1)福岡県の新型コロナウイルス感染症は下火になっているが、終息は見通せないため。たとえ無観客試合とはいえ、感染防止対策を講じても本連盟加盟校の全部員・指導者・関係者の安全安心の確保に不安が大きい

(2)仮に大会を実施した場合、野球部員や指導者は試合後各学校に戻り各教室などに入ることとなり、審判委員は職場に戻ることとなる。万一選手・指導者・関係者に感染者が出た場合、本人の健康被害はもとより、学校・学校関係者・職場の方々などに多大な迷惑をかけ、さらには野球部員以外の方々に対しても誹謗中傷を助長するおそれがある

(3)検温の徹底などにより症状の見極めをしていくことになるが、練習不足から選手・審判委員に熱中症やケガが例年以上に多くなることが予想され、大会役員が熱中症による発熱か新型コロナウイルス感染による発熱かを見極めることなどには限界があることなどから、新型コロナウイルスへの感染はもとより、ケガ・熱中症により、医療現場に更なる負担をおわせ、その結果治療に遅れが生じる危険がある

(4)各校、学業遅れ挽回策やそれに伴う土曜授業、夏季休暇の短縮などが予想される中で、考査や資格試験などの受験は必須であり、授業日の公欠などが認められるかなど、学校教育上の課題が残る

(5)すでに多くの部活動が大会などの中止を決めており、本連盟としても県民や各校の生徒・教師のみなさんと協力してコロナウイルスと戦い、次の目標に立ち向かうことが、本県野球部員の矜持だと考えた
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 決定は尊重するにしても、素朴な疑問として残るのは「独自大会を開催する県が出ている中で、なぜ福岡県は開催しない判断をしたのか」ということです。他県での開催決定を目の当たりにした球児たちは、尚更その思いが強いでしょう。
 中止の理由として挙げた(1)~(4)は他県でも同じことが言えます。緊急事態宣言が発令された愛知県でも独自大会の開催を決定しており、感染者数が16000人を超える東京都も開催に向けた準備を進めています(福岡県の感染者は25日現在672人)。さらに言えば、中止の理由として挙げている「感染のリスク」は、経済活動や学校生活を行う上でも「ゼロ」にすることはできません。「他県との比較でなく、県の独自の判断」であるならば、その判断の根拠については具体的な数字の裏付けなどをもとに、もう少し納得のいく説明が欲しかったと感じました。

 すでに3カ月以上も先の8月末まで県高野連主催の大会は行われないことも決まっており、新人大会も中止、さらに秋季大会の開催も見通しがつきません。今回の決定が、福岡における高校野球の環境(中学生の進路、レベルの低下、球場に足を運ぶファンの減少…)に影響が出ないよう、祈るばかりです。


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