2020年の注目選手たち①~投手編




九州国際大付・酒井

 筑陽学園が春夏連続出場を果たした2019年も残すところ、わずかとなりました。来年の観戦時の忘備録の意味も込めて、今年印象に残った1、2年生の選手たちをまとめておこうと思います。まずは投手編として11人(北部3人、南部8人)を挙げてみました。

【北部】

◆酒井 教平(九州国際大付=2年/右
 2016年夏を制した時のエース・藤本海斗投手(現JX-ENEOS)、1学年上の下村投手と、ここ数年九州国際大付が輩出してきた右本格派の系譜を継ぎ、140キロ超の直球や鋭いスライダーを使って三振が取れる右腕です。チームがベスト4に進出した今夏も、エース下村投手に次ぐ2番手のポジションを掴み3試合で先発。4試合19イニングスを投げて27個の三振を奪うなど、高い奪三振率を記録しました。期待された秋は準々決勝でタイブレークの末に福岡第一に敗れましたが、県下屈指の右腕として引き続き来年の活躍が期待されます。

◆濵本 建(八幡南=2年/右)
 秋に見た中では、北部でいちばん印象に残った右腕でした。上背に恵まれているわけではありませんが、柔らかなフォームから放たれる135キロ前後(確認した最速=137キロ/北九州市民)の直球は伸びがあり、低めに制球された内角球で詰まらせる場面がしばしば目に付きました。これに縦に落ちるスライダーを使った投球が冴え、準々決勝までの試合は全て2点以下に抑えてきました。三振の山を築くタイプではありませんが四死球も少なく、強打の久留米商を6安打1失点に抑えた準々決勝は圧巻の投球でした。

◆中村 浩輝(宗像=2年/右
 秋ベスト4進出の原動力となった右サイドハンドの好投手です。投手としては小柄で、直球は120キロに届くかどうかというところですが、抜群の制球力を武器に東海大福岡、九産大九州などの強豪を抑えてきました。一度浮き上がってから沈むような100キロ台のスライダーできわどいコースを突き、内野ゴロを打たせてとる投球が見事でした。走者を出してからも大きく崩れない粘りも持ち味。右のサイドハンドの中で安定感は県下屈指と言えるでしょう。各チームとも打力をあげてくる来春以降、どのような投球を見せてくれるか注目されます。

【南部】

◆山城 航太郎(福岡大大濠=2年/右
 印象の強さという点では、この秋一番でした。1年夏からレフトやショートで公式戦に出場し、秋からは中軸に座る好打者ですが、秋の大会初戦・筑陽学園戦の7回にリリーフのマウンドへ上がると、いきなり140キロ台を連発(確認した最速=143キロ/久留米市野球場)直球で押してくるタイプですが、120キロ台のスライダーもキレがあり三振が取れます。福岡大大濠には右の山下、左の深浦、毛利と豊富な投手陣が揃いますが、球威と制球力を兼ね備えた抑え役の出現で、さらに投手陣の層が厚みを増しそうです。

◆野田 壮吾(九産大九州=2年/左
 何といっても夏の大会5回戦・筑陽学園を8回まで無失点に抑えた投球が光ります。一度打者に背を向けるようにして始動し、右足を大きく一塁側に踏み込んで投げる変則気味の左サイドハンドで、直球は110キロ後半ですが、直球・スライダーを内外角のコースいっぱいに集めてきます。ポンポンとストライクを取ってくる中で左打者は外に逃げていく低めのスライダーを打たされ、右打者はクロスファイヤーに詰まる場面が目立ちました。その投球フォーム、投球スタイルと、2015年のセンバツに出場した同校の先輩・岩田投手(現九州産業大)を彷彿とさせます。秋は準々決勝で宗像に0-2で敗れましたが、その投球術は来年も期待できそうです。

◆安徳 駿(久留米商=2年/右
 前チームでも主に救援でたびたび登板していましたが、新チームではエースナンバーを背負い、南部を代表する右本格派の一人に成長しました。130キロ中盤から後半にかけての直球に伸びがあり、スライダー、カーブと緩急を使いながら三振が取れる投手です。秋は準々決勝で八幡南・濵本投手との投げ合いに敗れましたが、後半の5イニングスを投げて5連続を含む8奪三振。先発完投型というより中盤あたりから出てくることが多く、序盤でリードを奪って安徳投手につなぐことが久留米商の勝ちパターンとなりそうです。

◆石橋 辰宣(福岡第一=2年/右
 福岡第一の主戦投手として、秋の福岡大会優勝に貢献しました。サイドハンドながら120キロ台後半の直球に力があり、100キロ台のスライダーとのコンビネーションで打たせていきます。県大会準決勝・決勝は力みもあったか、微妙な制球に苦しんで失点を重ねましたが、延長14回までもつれた準々決勝の九州国際大付戦では2失点完投。敗れはしたものの、九州大会準々決勝の大分商戦も緩急を使って好投しました。余裕のある時には90キロ台のスローカーブを投げることもあり、この球が好調のバロメーターと言えるかもしれません。

◆山下舜平大(福岡大大濠=2年/右
 やや細身ながら長身からの威力ある直球が持ち味です。夏、秋とエースナンバーをつけましたが先発を他の投手に譲ることも多く、まだ発展途上といった印象です。今春以降、球速は130キロ後半を記録していましたが、秋の大会で140キロ台(確認した最速=144キロ/久留米市野球場)を安定的に出すようになりました。ただ、直球が高めに抜けることも多く、制球力が大きな課題です。春の九州大会では2回戦の球磨工戦で8回1失点と好投するなど大きな舞台の経験も十分。制球が安定してくると、さらに上を目指せる投手になりそうです。

◆久場 香徳(福岡第一=2年/左
 秋の大会ではたびたび先発の石橋投手をリリーフ。優勝の立役者の一人です。左上手からの角度ある直球は120キロ台後半ながらキレがあり、これにチェンジアップや100キロ台前半の大きなカーブを使ってきます。準決勝の宗像戦では0-4の3回途中から救援して8回まで追加点を許さず、逆転勝ちを呼び込みました。この試合では7イニングスで3連続を含む9つの三振を奪う一方、四死球も5つ与えるなど、まだまだ力強さと粗さが混在している印象です。直球との緩急差の大きなカーブが安定して決まるようになると、キレのある直球の威力も増してきそうです。

◆水崎 康平(沖学園=1年/右
 今夏は多くの1年生投手がマウンドに立ちましたが、その中で一人挙げるとすればこの投手でしょうか
。まだ体の線は細いですが、なかなかのスピードボールを投げてきます。縦に落ちてくる変化球もあり、緩急をつけた投球ができます。夏の大会の初戦となる九産大九州では大切な先発のマウンドを任されましたが、7回途中まで投げて6失点。6点を奪われた3回は素直にストライクを取りに行きすぎたきらいもあって集中打を浴びてしまいましたが、4~6回は三者凡退に抑えるなど非凡なところを見せました。投球術、打者との駆け引きを身に付け、体ができてくると楽しみな投手です。

◆花田 夢海(大牟田=2年/左
 前チームでもたびたび登板していましたが、エースナンバーを背負うのは秋から。やや上半身に頼ったフォームながら、切れのある直球を投げ込んできます。秋はパート決勝で福岡第一打線に痛打を浴びましたが、この試合ではスライダーが決まらず直球を狙い打たれた感じでした。スライダーの精度を上げるなど武器になる変化球が一つ二つ欲しいところ。そうすることで、威力ある直球が生きてきそうです。


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