【観戦記】大分商5-2福岡第一(秋季九州大会準々決勝)




【大分商5-2福岡第一(秋季九州大会準々決勝)】

 相手の守備の乱れに乗じて終盤に突き放した大分商が、エース川瀬の力投で福岡第一の追い上げを振り切り、逃げ切った。

4回表大分商一死二塁、岩崎の中前打で渡邊が先制のホームイン

 3回まで無安打の大分商は4回、先頭の渡邊(温)が三ゴロ失で出ると、井田はスリーバント失敗に終わったが、打者岩崎の時に渡邊が二盗を決めて一死二塁とし、岩崎の中前打で先制のホームを踏んだ。7回は2番井田が中前打で出ると、岩崎が送り、ここで登板した福岡第一の2番手久場から4番末田が四球を選び一死一、二塁。続く川瀬の右前打で井田が本塁を突いて憤死したが、二死一、二塁から6番三代のファースト後方への飛球が幸運なヒットとなり末田が生還。さらにライトから三塁への送球が逸れる間に川瀬も還って2点を追加した。
 8回は8番上野がショート右への内野安打で出ると、神田の投手右へのバントも内野安打となり、渡邊が送って一死二、三塁。続く井田の1-1から試みたスクイズは外され、三走が三・本塁間で挟殺され二死三塁となったが、井田が中前打を放って1点を追加した。なおも二死一塁で井田がけん制で飛び出したが、ファーストからの二塁送球が乱れる間に三進し、岩崎のショート前への内野安打で生還して、リードを5点に広げた。

 福岡第一は2回一死後、6番池田四球のあと、石井が左前打を放って一死一、二塁と先制機を迎えたが後続が凡退。その後は二塁を踏めず、7回まで散発3安打に抑えられていたが、8回先頭の9番伊藤が中前打で出ると二つの内野ゴロで三進し、和間のニゴロ失で1点を返した。9回にも代打安永が左前打で出ると、武内三振、石井三ゴロ(二塁封殺)で二死一塁となった後、代打の金城が右中間を破る三塁打を放って3点差に詰め寄ったが、反撃が遅かった。

▼準々決勝(21日・みどりの森)
大分商  000 100 220 =5
福岡第一 000 000 011 =2


 4失策のうち3つが失点につながるなど手痛いミスが出た福岡第一が、終盤の勝負処で自ら流れを手放す結果となった。

好投を見せた福岡第一の先発・石橋

 6回までは福岡第一・石橋、大分商・川瀬の息詰まる投手戦が繰り広げられた。右サイドハンドの石橋は120キロ台の直球に100キロ台のスライダーを低めに集めて好投。緩急をうまくつけることでスライダーで泳がせ、あるいは直球で詰まらせて凡飛や内野ゴロに打ち取り、3回まで自身のエラーによる走者を出したのみだった。外野にライナー性の当たりも飛んだが、体が泳ぎバットの先に当たっている分、野手の間を抜くような打球にはならなかった。
 唯一の失点は4回。先頭打者を三ゴロ失で出した後、井田はスリーバント失敗の三振に仕留めたが渡邊に二盗を許し、岩崎にはスライダーをセンター右に落とされた。二盗を警戒して石橋も執拗に一塁けん制を送ったが、その警戒網をかいくぐって二盗を決めた渡邊の足が勝った。岩崎もスライダーをしっかりとためて右方向へ合わせる打撃で、ここは大分商の攻撃が見事だった。

大分商・川瀬

 一方、大分商の本格派右腕・川瀬は130キロ台後半(この日最速144キロ)の直球に、落差あるカーブとキレのあるスライダーを駆使した投球。初回と2回に四球を与えたが尻上がりに調子を上げ、6回まで散発3安打。特に100キロ台前半のカーブの制球がよく、140キロ近い直球との緩急が効果的だった。得点圏に走者を背負ったのは2回裏のみで、7回までまったく危なげない投球だった。

 後攻の福岡第一としては、何とか1点差のまま食らいつき終盤勝負をかけたかったが、緊迫した試合展開の中で先に崩れたのは福岡第一の方だった。
 7回、一死二塁となったところで好投の石橋に代えて、左腕久場をマウンドへ。四球で一、二塁となったあと、久場の直球に押された川瀬の打球はセカンド右への小飛球となったが、セカンドが追い付けずヒットに。これを見た二塁走者が本塁を突いたが余裕をもって本塁タッチアウトとなり、流れは福岡第一に傾いたかに思われた。続く二死一、二塁から、三代も久場の力のある直球に差し込まれてファースト後方に上がる平凡なフライ。しかしセカンドが回り込むか、ファーストが下がって捕るか、その判断が両者の間で一瞬遅れた(ように見えた)。ファーストが下がりながら捕球を試みたが風にも流されたか、そのまま後方に落ちてしまい、二塁から末田が生還。さらに三塁を狙った一走を刺そうとしたライトからの送球が大きく逸れてしまい、一走までホームイン。凡飛でチェンジかと思われた一打でまさかの2失点。川瀬の出来を考えると、福岡第一にとって厳しい失点となった。

福岡第一・井川

 7回裏、福岡第一は三者凡退。こうなると流れはさらに大分商に傾く。上野の投手足元への当たりは決してよくなかったが、ショートが追い付くも投げられず内野安打に。神田のバントも投手右への小飛球となったが飛んだコースがよく、結果的にプッシュバントのような形になって一、二塁に。渡邊が送り一死二、三塁となり、井田の3球目のスクイズは福岡第一バッテリーが外して三走を挟殺。二死三塁まで漕ぎつけたが、井田につまりながらセンター前に落とされ4点目。ここで登板した井川の一塁けん制で井田が飛び出したが、ファーストからの二塁送球が乱れて三進を許し、岩崎のショート前へのゴロが内野安打となって決定的な2点を失った。

 福岡第一投手陣は8安打を許したが、その大半は詰まった当たりが外野の前に落ちたものや、緩いゴロが内野安打になったもの。長打はおろか、芯で捕えられた当たりも岩崎の4回の先制打くらい。先発の石橋は言うに及ばず、5安打を許した久場も打たれたという感じではなく、3番手の右サイドハンド・井川も130キロ台の直球で押していた。それだけに失点に絡んだ失策が目立つ形となった。

9回裏福岡第一 二死一塁、金城の右中間三塁打で石井が生還

 「攻めた結果の失策は仕方ない」とよく言われるが、この試合では大事に行こうとしたプレーが結果的に失策につながってしまった印象だ。先制点につながった4回の三ゴロ失は待って捕ろうとした分、難しいバウンドとなり、はじいてしまった。7回のファースト後方への飛球も、難しいところに飛んだ飛球ではあったが、野手の間で一瞬の躊躇があったように見えた。けん制で飛び出した走者を刺そうとした二塁送球も大切に行こうとしたためか、ワンバウンドになってしまい、5点目となった遊内野安打も待ってしまった分、一塁が間に合わなかった。
 強打のチームといっても毎試合打ち勝てるわけではない。また、守りは攻撃のリズムも作る役割も果たすことを考えると、強打を生かすためにも守備が大切であることを改めて感じる。

 140キロ前後の直球と落差ある変化球を持ち、制球力もすぐれる川瀬投手を攻略するのは、福岡第一打線といえども難しかった。ただ、センバツへの最終関門ともいえる準々決勝を乗り越えるには、こうした好投手に勝たなくてはならない。昨年は筑陽学園が宮城投手擁する興南をタイブレークの末に振り切った。2年前は東筑が神村学園との競り合いを2-0で制した。3年前には福岡大大濠が鹿児島実に2-0で競り勝ったが、この試合で福岡大大濠が放ったのはわずか3安打。東海大福岡も0-4から最後は逆転サヨナラでれいめいを下すなど、いずれも競り合いに耐えた末にベスト4進出を果たし、センバツへの扉を開いた。
 この日の試合もセンバツ出場校としての「資格」を問われるような試合展開となったが、攻守であと一歩及ばなかった。

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