筑陽学園は延長戦で作新学院に惜敗、夏初勝利ならず




 第101回全国高校野球選手権大会に出場している福岡代表の筑陽学園は、11日に初戦(2回戦)を迎え作新学院(栃木)と対戦。9回裏に2点差を追いつく粘りを見せましたが3-5で敗れ、今春センバツに続く勝利はなりませんでした。

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【試合経過】
 足を絡めた攻撃で小刻みに得点を重ねた作新学院が、粘る筑陽学園を延長戦の末に振り切った。
 同点で迎えた延長10回、作新学院は先頭の福田が左前打で出るとすかさず二盗を決め無死二塁。さらに松尾三振の時に三盗も決めて一死三塁から、中島が前進守備のセカンド左を破って勝ち越し。さらに石井のニゴロで二死二塁とし、横山の左前打で石井も生還して突き放した。
 試合は序盤から、作新学院のペースで進んだ。初回福田中前打、松尾右前打のあと中島の遊ゴロ失で無死満塁とし、石井の右犠飛で先制。3回は福田が左前打で出ると二盗を決め、松尾の遊ゴロが一塁低投となり無死一、三塁。中島の中犠飛で1点を追加した。6回は石井が四球で出ると横山の送りバントが内野安打となり無死一、二塁とし、大河内の右前打で石井が生還、リードを広げた。
 筑陽学園は3回、石川が左前にチーム初安打を放つと、西舘の送りバントが内野安打となって無死一、二塁。福島の送りバントは三塁封殺されたが、弥富の左前打で西舘が還って1点を返した。6回二死三塁、7回二死二、三塁では得点できなかったが、土壇場の9回二死から進藤がセカンド左への内野安打、野田も中前打で続くと、石川が右越え二塁打を放って同点に追いつく粘りを見せた。しかし続くサヨナラ機に西舘が遊飛に倒れて一気に勝負を決めることができず、延長10回に勝ち越しを許して力尽きた。

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【所感】
 実力校同士のハイレベルな一戦となったが、作新学院のソツのない攻撃が筑陽学園・西舘の粘りの投球を上回った。
 作新学院は事前の対策をしっかりしてきた印象で、初回から西舘の直球、スライダーを思い切りよく振ってきた。10安打のうち長打は1本のみ。大振りせずに鋭く振り抜いて出塁すると、足をからめた積極的な攻撃を見せた。3回はヒットで出た福田が二盗を決め、内野ゴロ(失策)と犠牲フライで生還。同点に追いつかれた直後の10回もヒットで出た福田が二盗、三盗を決めて内野に前進守備を強要し、中島がその前進守備のセカンド左をしぶとく破って決勝点を奪った。この試合、作新学院は6つの盗塁を敢行。そのうち2つは刺されたが、存分に走り回ってチャンスを広げ犠飛やタイムリーにつなげた。

筑陽学園・西舘(福岡大会決勝時)

 西舘も決して調子が悪いわけではなかった。足で揺さぶられて3点は失ったが、最小失点で踏ん張り試合を作った。特に初回1点を失った後の一死一、三塁、6回1点を失ったあとの無死二、三塁をいずれも無失点で切り抜けたのは、さすがの投球だった。厳しいコースに直球、スライダーを投げ分けて9三振を奪い、与えた四死球も2つだけ。7~9回は三者凡退に仕留めて流れを引き寄せた。

 6回表を終わって1-3。西舘が粘りの投球を続ける中で、筑陽学園にもチャンスが巡ってきた。6回先頭の福島が四球、打席は3回にタイムリーを放った弥富だったが、ここで盗塁を仕掛けて失敗。筑陽学園は福岡大会で5回戦以降、盗塁は一つだけ。どちらかというと犠打で走者を進めて、じっくり攻める傾向にあっただけに意外な作戦に映った。作新学院の足攻への意識がそうさせたのか…。その後に中村の三塁打が出ただけに、余計にそう感じた。
 7回も江原中前打のあと、進藤は右中間への大きな当たりだったが、左に詰めていたライトの守備範囲内。的確なポジショニングも綿密な研究の跡をうかがわせた。その後、二死二、三塁まで詰め寄ったが、西舘が遊直。9回も二死からの三連打で追いたあと一気に決めたかったが、ここでも西舘が遊飛に倒れた。西舘は福岡大会4回戦で本塁打を放ってはいるが、本来打撃はそこまで得意でない選手。5番以下でチャンスを作ることになった結果、ここぞという場面で西舘に打順がまわる巡り合わせとなってしまった。できれば中軸までにチャンスを作って勝負強い江原、進藤、野田につなげたかったが、1~4番が15打数2安打に抑えられてしまった。
 3回にも好機はあった。無死一、二塁から福島の送りバントは猛然とダッシュしてきたファーストにさばかれ三塁封殺、チャンスを広げられなかった。その後直後に弥富の左前打が飛び出し西舘が生還、さらにレフトからの本塁送球が高く逸れる間に一走が三塁を狙ったが、ピッチャーの林がいい場所でバックアップしており、ダイレクトキャッチしてそのまま三塁送球してタッチアウト。いずれも紙一重のプレーだったが、1点を争うギリギリの試合の中では、こうしたプレーの積み重ねが勝敗を左右した。

 9回二死からの三連打は見事の一言。センバツ8強の実力を全国に示してくれた。ただ、試合は序盤から作新学院が主導権を握り続け、筑陽学園に勝機が訪れたのは同点となった直後の二死三塁、この一瞬だけだった。福岡大会の九産大九州戦のように一気にここで勝負をつけたかったが、それをさせないのが全国区のチームということだろう。
 好投手を擁するチーム、強打のチームは福岡でも見かけるが、この日の作新学院のような走攻守にスキのないチームというのはあまり見ない。狙い球を絞った思い切りのよいスイング、常に次の塁を狙う走塁、打者に応じたポジショニングやプレッシャーをかけるバントシフトなど、走攻守すべてにおいて相手に一瞬たりとも気を抜かせないプレースタイルは、福岡のチームにも大いなる参考になると感じた。


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