【観戦記】筑陽学園4-3九産大九州(選手権大会5回戦)




9回裏筑陽学園一死満塁、中村の左前打で西舘がサヨナラのホームイン

【筑陽学園4-3九産大九州】
 筑陽学園が土壇場で3点差をひっくり返し劇的な勝利を飾った。
 3点を追う筑陽学園は9回一死後、6番進藤が四球で出ると、続く野田が右中間を破る二塁打を放ち、進藤が生還してまず1点。8番石川の投ゴロが内野安打となり一死一、三塁とし、9番西舘の三ゴロで二塁送球をセカンドが落球、これを見て野田が本塁を突き1点差。なおも一死一、二塁から福島が右前にはじき返し、ライトが打球処理をもたつく間に(記録は二塁打)石川が同点のホームを踏んだ。最後は弥富四球で一死満塁から、3番中村が左前にサヨナラ打を放って勝負を決めた。
 九産大九州は初回、筑陽学園先発の菅井を攻め、先頭の田中が死球で出ると、古本が送って一死二塁。堤は遊ゴロに倒れたが、4番金子が中前打に放って先制した(金子は本塁送球間に二進)。さらに続く横田も一・二塁間を破って金子が生還、この回2点を奪った。2回以降は中山、西舘の継投の前に得点できなかったが9回二死後、8番植田が三遊間を破り盗塁を決めると、野田も左前打で二死一、三塁。田中死球で満塁とし、2番古本が押し出しの四球を選んで植田が生還。3-0となって勝負あったかと思われたが、リードを守れなかった。

 九産大九州の先発・野田は、左サイドハンドから直球、スライダーで丁寧にコースを突いて好投。8回まで再三得点圏に走者を背負いながら粘り強く投げてきたが、最終回はやや球が甘くなったところを筑陽学園打線につかまって涙をのんだ。

▼5回戦(22日・光陵GS)
九産大九州 200 000 001=3
筑陽学園  000 000 004=4


九産大九州・野田

 今春センバツ8強の筑陽学園が9回一死まで追い詰められたが、運も味方に引き寄せて大逆転を演じた。
 九産大九州の先発は右サイドハンドのエース恒吉ではなく、2年生の野田。直球のスピードは110キロ台後半というところだが、この直球とスライダーを左サイドハンドから低めに集めて打たせてとる投球を見せた。8回までに6安打、うち4安打が二塁打で、5度にわたって得点圏に走者を置いての投球となったが、決定打を許さなかった。中盤以降は直球がコースいっぱいに決まるようになり、スライダーも内外角に自在に投げ分けリズムも出てきた。
 筑陽学園は初回に菅井が2点を失うと、2回からは中山を送り込み、5回からは西舘を投入。何とか流れを変えようする。西舘も気迫を前面に押し出した投球で5回から6回にかけて4者連続三振を奪うなど貫録の投球。味方の反撃を待った。
 筑陽学園は7回、進藤の左翼線二塁打をきっかけに一死三塁とするが石川、西舘がいずれも内野ゴロ。8回も二死から中村が右中間への二塁打を放つが、4番福岡が低めのスライダーに三振。野田がピンチをしのぐたびに三塁側スタンドが沸き、流れを九産大九州に引き寄せていった。すると9回二死から連打と死球で満塁とし、古本が粘って押し出しの四球を選ぶ。高めに直球が外れた瞬間、西舘は崩れ落ち、セカンドの江原もガックリと肩を落とすなど、この3点目で勝負あったかと思われた。

筑陽学園・西舘

 9回裏、先頭の江原が三振で、あと2人まで漕ぎつけた野田だったが、続く進藤にストレートの四球。それまでコースギリギリに決まっていたスライダーが、わずかに外れた。続く野田が右中間を破って1点を返す。それでも1-3で一死二塁。まだまだ九産大九州の優位は変わらなかった。石川の当たりは投手やや右への高いバウンドとなり、野田がこれをよく伸びて抑えた時、ファーストが打球につられてセカンド方向に動いており、慌てて野田が一塁へ駆け込むが石川の足が一瞬速かった。これで一死一、三塁。徐々に球場の雰囲気も変わり始める。
 続く西舘は三塁へのゴロ、少しファンブルしたサード藤井は二塁へ送球するが、併殺を焦ったか、セカンドが落球。これを見て野田が本塁を突き、間一髪セーフとなり1点差。なおも一、二塁で福島がライト前に痛打を放つ。当たりがよすぎた分、二走の石川は三塁で自重しようとしたが、ライトが打球処理をもたつくのを見て一気に本塁へ還って、ついに同点。これで勝負が決まった感があった。気落ちした野田は弥富に力なく四球を与え、中村にサヨナラ打を浴びた。
 九産大九州としては石川、西舘と打ち取った2つの内野ゴロでアウトを一つも取れなかったのが響いた。最後は野田の制球も甘くなってしまったが、その甘い球を逃さなかった筑陽学園の各打者も見事だった。

1回表九産大九州二死二塁、金子が先制の中前打を放つ

 筑陽学園の先発は左腕菅井。直球は走っていたがボール先行の投球になってしまい、ストライクを取りに来た球を狙われた。2番手の中山は130キロ前後の直球にスライダーを交えての投球。2~4回と毎回のように走者を出しながらも追加点を与えずに踏ん張った。5回から登板した西舘は140キロ超の直球、縦に鋭く落ちるスライダーを軸にした多彩な変化球で7回まで許したのは四球の走者一人のみ。登板直後から飛ばし過ぎたか、9回は連打に2つの四死球を与えて痛恨の1点を失ったが、さすがの投球だった。
 初回に見事な先制攻撃を見せた九産大九州は2回二死二塁、4回一死二塁と、西舘が登板する前の好機に追加点が欲しかった。9回も1点を追加してなお二死満塁、カウント3-1ともう1点を得るチャンスだったが、堤が高めのきわどい球に手を出して一邪飛と突き放せなかった。それでも優勝候補を相手にした堂々とした戦いぶりで大健闘。昨夏南福岡大会の準優勝メンバーから大きくメンバーは変わりノーシードで迎えた今夏だったが、見事な戦いを演じて観客を魅了した。


Pocket
LINEで送る

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*