【観戦記】九産大九州9-2沖学園(選手権大会2回戦)




3回裏九産大九州一死一、二塁 古本の右翼線二塁打で先制

【九産大九州9-2沖学園】
 昨夏の南福岡大会決勝と同じ顔触れとなった一戦は、九産大九州が集中打で雪辱を果たした。
 九産大九州は3回一死後、9番恒吉が右翼線へのヒットで出塁すると、続く田中もセンター右への安打を放ち一死一、二塁とし、2番古本が右翼線二塁打を放って恒吉が先制のホームを踏んだ。なおも一死二、三塁から3番井上の左翼線二塁打で2者が生還。金子死球、横田中飛で二死一、二塁から、白石の中前打で井上が還って4-0。さらに二死一、三塁から白石が二盗を決めて二、三塁、7番嶺の時に沖学園・水崎のボークで走者がそれぞれ進塁し5点目。嶺死球の後、堤が左前打を放って白石を迎え入れ、この回6点を奪った。

 4~6回は三者凡退で終えるなど、その後は追加点のチャンスを掴めなかったが8回、2番手の蓮尾から5番横田が四球で出塁すると、白石左飛のあと、途中出場の植田も四球を選んで一死一、二塁。ここで登板した沖学園の3番手・川崎から堤が右前打を放って一死満塁とすると、恒吉は三振に倒れたが1番田中が左中間に走者一掃の二塁打を放ち、コールド勝ちを決めた。

 沖学園は九産大九州・恒吉のサイドハンドからの緩い変化球にタイミングが合わず、4回まで無安打。5回二死から7番牧田が左前に初ヒットを放ったが、続く原田は三邪飛。6回は一死から1番森下がレフト左への安打で出たが、後続が凡退した。ようやく7回、4番高塚がライトへのポテンヒットで出ると、戸内のニゴロで一死二塁。続く6番平岡の左中間を襲った当たりにセンターがダイビングキャッチを試みるが及ばず、これを見て二走の高塚が三塁を狙ったがタッチアウト(記録はセンターゴロ)で二死一塁となったが、続く牧田が左越え本塁打を放って2点を返した。しかし序盤の失点が大きく、形勢を挽回するには至らなかった。

▼2回戦(10日・小郡)
沖 学 園 000 000 20=2
九産大九州 006 000 03=9
(8回コールド)


   九産大九州・恒吉

 九産大九州の先発は右サイドハンドの恒吉。185センチの大型右腕だが、投球フォームには良い意味で力感がない。春季大会まではオーバーハンドで直球は120キロ台、制球力ある変化球を主体にした投球スタイルだったが、サイドハンドにしたことで変化球の制球力に磨きがかかった。投球の軸は右打者の外角低めに逃げていくスライダーで、コース・高さともギリギリのところに落としてくる。また、内角は直球やツーシームで突き、8人の右打者を並べる沖学園は外のスライダーには体が突っ込んで凡飛、内角の直球やツーシームには詰まらされるなど、なかなか思い通りのスイングができなかった。

   沖学園・水崎

 一方の沖学園の先発は「最速145キロ」「プロ注目」との呼び声高い本格派右腕の蓮尾ではなく、1年生の水崎。体の線はまだ細いが、1年生らしからぬスピードボールを投げ込んでくる。これに縦に落ちてくるようなスライダーがテンポよく決まり初回、2回と無難な立ち上がり。そしてこの試合を決定づけた3回裏を迎える。
 一死後、恒吉がスライダーを合わせてライト右に運び、田中もスライダーに逆らわずにセンター右へ。ここで古本が見送ればボールではという低めの直球を右翼線にはじき返して先制。捕手の戸内は外角に構えていたが、逆球となってしまった。井上もスライダーを左翼線に2点タイムリー。ここまでの4連打はカウント0-2もしくは0-1からのもの。球を揃えすぎた印象で、もう少しボール球を使ってもよかったかもしれない。

 その後も金子に死球を与え、横田を中飛に抑えたものの、白石にもセカンド左を破られ4点目を失うと、白石が二盗したにも関わらず、直後に一塁へけん制の動作をしたことでボークをとられてしまう。さらに死球、タイムリー…。どこかでエース蓮尾に交代するかと思っていたがベンチに動きはなく、途中タイムをとって間を取ることもなく、あっという間に6点を失ってしまった。水崎は4~6回は、いずれも三者凡退と立ち直っただけに悔やまれる3回裏の投球となった。

   沖学園・蓮尾

 その後、7回二死となったところで蓮尾が登板。3回のピンチに登板しなかったことであるいは故障かと思っていたが、見た感じでは投球には支障ない様子だった。立派な体格から勢いのある直球を投げ込んでいたが、一方で上体だけで投げている感じもした。制球も定まらず、高めに浮く。打者5人に投げて3四球。7回に2人、8回に3人に投げたところで早々と降板、やはり本来の調子ではなかったのだろう。

7回表沖学園二死一塁、牧田が左越え本塁打を放ち生還

 恒吉の変化球の前に全くいいところがなかった沖学園は、7回に一矢を報いた。一死一塁から6番平岡がセンター左に大きな一打。センターが背走しながら飛びついたがちょうどボールの位置が死角となって、捕球したか否か一瞬分からなかった。それは二走の高塚も同じだったようで、二・三塁間でスタートしてよいのかどうか判断がつかない様子。捕球できていないことを確認して走り出したものの、ボールはすでに中継にわたっており三塁でタッチアウト。得点機が潰えたと思えたが、直後に牧田が左越え本塁打を放った。両翼98mの小郡市野球場の芝生席上段に突き刺さる大きな一発だった。 

 昨夏優勝校としてのぞんだ沖学園だったが、初戦で姿を消した。ただ、水崎の投球は秋以降、同校の躍進を予感させるに十分な内容だった。今年は折尾愛真・稲川、筑陽学園・藤田など1年生が先発するチームが多いが、水崎はその中でも球威・変化球の切れ・制球力とも高い水準にあると感じる。


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